ひとことで「赤字」と言っても、いろいろです。結果、銀行から借入できない赤字もあれば、借入できる赤字もあります。その違いについて、確認をしておきましょう。
借入できない赤字・借入できる赤字の違いとは?
決算書が赤字だと、銀行から借入ができない。という、ハナシがあります。たしかに、銀行は赤字の会社が嫌いです。が、赤字だからといって、必ずしも借入できないわけでもありません。
言い換えると、「借入できない赤字もあれば、借入できる赤字もある」ということです。では、借入できない赤字とは? 借入できる赤字とは? その違いについて確認をしておきましょう。
具体的には次のとおりです↓
- 3期連続赤字
- 債務超過
- 改善計画がない
- 一時的な損失
- 積極的な損出し
- 黒字化の見込みがある
これらの違いが、赤字になってしまったときに借入できるかどうかの目安になるはずです。それではこのあと、順番に見ていきましょう。
借入できない赤字とは?
3期連続赤字
前期は黒字で今期は赤字、という会社と。前期も赤字で今期も赤字、という会社と。どちらが借入できそうにないかと言えば、後者の会社であろうことは察しがつくでしょう。
では、3期連続赤字だったら?銀行から借入できる可能性は大幅に下がります。銀行からは、「この会社はもう黒字に転換できないのではないか」と見られてしまうからです。
2期連続赤字もよくはありませんが、3期連続は致命的だと考えておきましょう。そう考えると、「赤字のときには赤字を出し切る」のも有効な方法だとわかります。
今期はどうがんばっても赤字だというのなら、「収入は来期に先送りする、費用は今期に前倒しする」という方法です。もちろん、会計のルールを逸脱しない範囲(粉飾決算にならない範囲)で。
すると、来期を黒字にできる可能性が高まりますから、連続赤字を避けやすくなるでしょう。
ちなみに、今期が赤字になるとわかっているのであれば、決算書ができあがる前に「最大限の借入」をしておくことです。赤字の決算書ができあがってからでは、借入はしにくくなってしまいます。
債務超過
赤字とは別に、銀行が嫌うのが「債務超過」です。債務超過とは、「資産<負債」の状態をいいます。すでに負債が多いのですから、銀行がおカネを貸したがらないのは当然です。
赤字が「損益計算書」の指標であるのに対して、債務超過は「貸借対照表」の指標になります。損益計算書は見ているけれど、貸借対照表はあまり見ていない…という社長は気をつけましょう。債務超過であることに気がついていないケースがあります。
赤字に加えて債務超過となると、借入できる可能性は大幅に下がるものです。逆に、赤字だとしても、債務超過でない場合。赤字だとしても、負債に対して資産がじゅうぶんに多いという場合には、借入できる可能性があります。
債務超過を避けるいちばんの方法は、ふだんから利益を出しておくこと。納税を嫌うあまり利益を出し惜しむと、債務超過に陥りやすくなります。いつか来るかもしれない赤字に備えて、出せる利益は惜しまず出しましょう。
なお、債務超過かどうかは、決算書の「表面的」な数字ではなく、「実質的」な数字で判断します。決算書上はいくら資産があったとしても、不良資産が混じっているのであれば、銀行は不良資産を除いた数字に修正をして、債務超過かどうかを見ているということです。
このあたり、くわしくはこちらの記事もどうぞ↓
改善計画がない
決算書の赤字を見て、銀行が考えること。それは、「この会社は、このあともずっと赤字なのではないか?」です。この疑問を払拭できないと、借入はいっそう難しくなります。
したがって、赤字でも借入できる確率を上げるためには、「このあと黒字に転換できる」と銀行に伝えることが必要です。とはいえ、なんの根拠もなければ、銀行も納得できません。
そこで、用意をしたいのが「経営改善計画書」になります。文字どおり、経営改善に向けた計画書です。現状分析にはじまり、問題と解決策を挙げ、黒字転換までの数値計画・行動計画をまとめます。
このような計画書もなしに、「赤字で困っているから貸して」という会社は少なくありません。銀行からは、「黒字転換の可能性が低く、危ない会社だ」と見られてしまいます。
赤字でも借入をしたいのであれば、借入できる確率を上げるためにも、経営改善計画書をつくるようにしましょう。借入ができるだけではなく、黒字転換できる確率も上がるはずです。
借入できる赤字とは?
一時的な損失
赤字は大きく分けて2つ、一時的な損失による赤字と、一時的な損失によらない赤字とがあります。一時的な損失とは、たとえば、含み損がある土地や株式などを売却したとか、不採算事業・店舗の撤退にあたり費用がかかったとか。
これらの損失は、基本的には今回限りであって、来期以降も発生する損失ではありません。よって、一時的な損失は除外して評価するのが銀行の見方です。
税引前利益が 700万円赤字の会社があったとします。その赤字が 1,000万円の一時的な損失によるものであったとしたらどうでしょう。1,000万円を除外して、300万円の利益だと見ます。
よって、一時的な損失がある場合には、それを銀行に対して、きちんとアピールすることが大切です。ひとつは、決算書上の「表記のしかた」があります↓
表記をしただけでは、銀行にうまく伝わっていないケースもありますので、決算書を渡す際に、あわせて説明を加えるようにしましょう。
積極的な損出し
赤字のなかには、積極的に損を出したことによる赤字もあります。
たとえば、さきほども挙げた、含み損がある土地や株式などの売却。これらは、売却をすることで損失は出ますが、売却金額分のおカネは増えます。これを資金繰り改善と見れば、積極的な損出しと言えるでしょう。
また、不採算事業・店舗の撤退についても、これ以上は赤字を広げないように、経営資源を他の事業・店舗に活かせるようにと考えれば、やはり積極的な損出しだと言えます。
逆に、こういった損出しをせずにいれば、決算書のなかにはずっと「不安要素(将来の赤字)」が存在し続けることになるわけです。銀行としては、融資がしにくくなる要因になります。
いっぽうで、社長は「赤字を増やせば、借入しにくくなる」との考えから、損出しを避けているケースはあるものです。積極的な損出しには、借入しやすくなる効果があることを覚えておきましょう。
ただし、なんの説明もなく、いきなり多額の損失が発生すると銀行も驚きます。できれば、事前に説明をして理解をえつつ、決算書を渡す際にもあらためて報告をするのがよいでしょう。
黒字化の見込みがある
さきほど、「改善計画がない」場合の赤字は、借入がしにくくなることをお話ししました。
つまり、黒字化の見込みが立たない場合には、借入がしにくくなる。逆に、改善計画によって、黒字化の見込みが立っている場合には、借入がしやすくなるということです。
この点で、さらに借入がしやくすくなる方法があります。それは、日ごろから計画の策定・管理をしていることです。
そもそも銀行は、会社から提示された計画書に対して、「ほんとうに計画どおりにいくのか?」という疑問をもっています。計画はいかようにもつくれてしまうのですから、銀行の疑問ももっともです。
ここで、日ごろから計画の策定・管理をしていることが役立ちます。具体的には、日ごろの計画と実績から、「計画の達成状況」を銀行に伝えるのです。
この達成状況が相応に高ければ(目安として最低でも80%以上)、「こんどの改善計画も、達成の可能性は高い」と銀行は考えることができるでしょう。
達成状況を銀行に伝えたいのであれば、ふだんから定期的に、計画と実績の報告をしておくことです。おすすめは四半期にいちど、試算表といっしょに、計画対比の資料を銀行に提示しましょう。
まとめ
ひとことで「赤字」と言っても、いろいろです。結果、銀行から借入できない赤字もあれば、借入できる赤字もあります。その違いについて、確認をしておきましょう。
- 3期連続赤字
- 債務超過
- 改善計画がない
- 一時的な損失
- 積極的な損出し
- 黒字化の見込みがある