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試算表で銀行融資を受けられないのは提示のしかたが悪いから

試算表で銀行融資を受けられないのは提示のしかたが悪いから

試算表で融資を受けることはできない、とのハナシがありますが。

必ずしも、そうではありません。試算表で銀行融資を受けられないのは、提示のしかたが悪いから。というお話をしていきます。

目次

試算表では融資を受けられない、というハナシ。

銀行融資を受けるには、「決算書がだいじ」だと言われます。つまり、決算書の内容が良ければ(業績が良ければ)、融資が受けやすくなるということです。

これに対して、「試算表の内容が良いからといって、融資が受けやすくなることはない。試算表で融資を受けることはできない」とのハナシがあります。

「銀行は試算表を信用していないから」というのが、その理由です。

もう少し具体的に言うと、銀行は「試算表の精度は低い(決算書に比べると)」と考えているし、「試算表にはウソ(粉飾)があるかもしれない」と考えています。

黒字の試算表を提示したところで、精度が低いのではないか、ウソがあるのではないか? と見られてしまう… たしかに、これでは銀行融資を受けられないのもムリはありません。

が、試算表で銀行融資が受けられないのは、試算表の「提示のしかた」が悪いからです。提示のしかたを変えることで、試算表を銀行融資に活かすことはできます。

では、どのような「提示のしかた」をすればよいのか? それは、次のとおりです↓

銀行融資を受けやすくする試算表の提示のしかた
  • 前期・前々期との比較で提示する
  • 定期的に提示する
  • 月次決算仕訳を提示する

それではこのあと、順番に見ていきましょう。

銀行融資を受けやすくする試算表の提示のしかた

前期・前々期との比較で提示する

銀行に試算表を提示するときに、「単年分」だけを提示していませんか? たとえば、2022年1月の試算表であれば、2022年1月分の試算表だけを提示している。

これだと、銀行からは「精度の低さ」と「ウソ」とを疑われたままになってしまいます。そこで、前期分・前々期分の試算表もあわせて提示しましょう。

さきほどの例であれば、2022年1月の試算表に加えて、2021年1月と2020年1月の試算表もあわせて提示します。これで、銀行が取得したデータは「3年分」です。

すると、銀行は3年分の数字を比較することで、「精度」や「ウソ」の検証をしやすくなります。

たとえば、3年前は減価償却費が 50万円あったのに、今年はゼロだとしたら。今年は、「減価償却費は毎月計上していないのかな(精度が低い)」と考えることでしょう。

逆に、3年とも同じように減価償却費があれば、試算表の精度が高いことを認識できます。

また、3年分のデータがあると、ウソについてはおおむね明らかになるものです。粉飾をしていると、「売掛金回転期間」や「在庫回転期間」といった指標は徐々に歪みを生じます。

3年もたてば、その歪みは大きくなるので、ウソも見抜きやすくなるというわけです。であるのなら、前期・前々期の試算表もあわせて提示をすれば、ウソがないことのアピールにもなります。

なお、できれば3年分の試算表が比較できるカタチで、銀行に提示するとよいでしょう。言うまでもなく、1年分ずつバラバラに提示するよりも比較がしやすいからです。

会計ソフトによっては、ボタンひとつで印刷できます。もし、できないときは、会計ソフトからCSVデータを出力して、Excelで編集しましょう。それほどタイヘンな作業ではありません。

3年分を並べて比較することで、会社自身にも「気づき」があります。うっかりしていて、精度が低くなっていた… ということに気づくこともあるでしょう。

あってはならないことですが、粉飾による歪みの大きさに気づき、粉飾を解消するきっかけになることもあるはずです。試算表は、3年分比較するのを「ルール」にしてみましょう。

定期的に提示する

試算表は、融資を受けるときにしか提示しない。という、会社は少なくありません。ですが、やはり、銀行からは「精度の低さ」と「ウソ」とを疑われることになります。

たまに提示される試算表だけでは、「精度」と「ウソ」とを検証することができないからです。

そこで。さきほど3年分の試算表を提示したのと同じ考えで、銀行にはさらにデータを提示しましょう。具体的には、試算表は「定期的」に提示することです。

融資を受けるか否かにかかわらず、定期的に試算表を提示していれば、銀行のなかにはそれだけ多くのデータがたまります。データがあれば、「精度」も「ウソ」も検証しやすくなるでしょう。

毎月提示するのが理想ではありますが、それだと「負担感」がありますので。ひとまず、「四半期にいちど」の頻度で提示するのがおすすめです。

ここで、もうひとつポイントがあります。試算表を提示するときには、「月次推移」のカタチもあわせて提示しましょう。

たとえば、3月決算の会社が、2022年1月分の試算表を提示するのであれば。1月単月の試算表に加えて、4月から1月まで各月の数字が横並びになった「月次推移」も提示する、ということです。

「月次推移」もまた、会計ソフトからボタンひとつで印刷できます。もし、できないとしても、CSVデータを出力して、Excelで作成するようにしましょう。

月次推移があると、試算表を「さかのぼって修正」しているか否かがあきらかになります(過去に提示した試算表と突き合わせてみれば)。また、「粉飾」をしていたかどうかの検証をしやすくもなるものです。

ゆえに、銀行が月次推移を見て、「修正や粉飾がない」とわかれば、試算表の信頼度はおのずと高くなります。これなら、試算表の黒字を評価しての融資もしやすくなるでしょう。

また、月次推移があると、会社自身も「傾向」をつかみやすくなる、というメリットがあります。売上や各経費の変動、預金残高の変動など。傾向から「予兆」をつかんで、問題の「予防」もできます。

ぜひ、試算表は月次推移も作成・提示しましょう。

月次決算仕訳を提示する

冒頭から繰り返しているとおり、銀行は試算表の「精度」を疑っています。精度の最たる具体例は、「決算仕訳」です。

1年に1度の決算では、「決算仕訳」という経理処理をします。おもなところでは、棚卸、減価償却費の計上、貸倒引当金や賞与引当金の計上、法人税や消費税の未払計上などなど。

こういった経理処理を、毎月の試算表でもしているか? といえば。していない会社が少なくありません。だから、銀行は試算表の「精度」を疑っているのです。

1年に1度の決算が「本決算(年次決算)」と呼ばれるように、毎月の試算表をつくることは「月次決算」とも呼ばれます。どちらも同じ「決算」です。

ところが、「試算表」という名称がよくないからかどうなのか。「どうせ試算表だし」と、タカをくくっている会社はあるように感じます。

そのような試算表では、銀行融資を受けられないのは当然です。というわけで、試算表であっても「月次決算」として、「本決算」と同じ精度で、同じ経理処理をするようにしましょう。

さきほどふれたとおり、棚卸をしたり、減価償却費や引当金の計上をしたり、ということです。そのうえで、それら「月次決算」の経理処理について、会計ソフトから「仕訳」を印刷します。

これを「月次決算仕訳」として、試算表に添付して銀行に提示することで、「本決算と同じ精度で試算表をつくっている」ことが、わかりやすくなるはずです。

このあたりの対応が社内では難しければ、顧問税理士に確認をしてみるとよいでしょう。

なお、月次決算仕訳に該当する経理処理について、「たいした金額ではない」から、わざわざ経理処理する必要はないかというと。けして、そういうわけでもありません。

金額が大きかろうと小さかろうと、「精度が高い経理処理ができる会社」とのアピールにはなるからです。手間を惜しんだ結果、銀行融資が受けにくくならないように気をつけましょう。

まとめ

試算表で融資を受けることはできない、とのハナシがありますが。

必ずしも、そうではありません。試算表で銀行融資を受けられないのは、「提示のしかた」が悪いからだということを理解しておきましょう。そのうえで、提示のしかたを変えてみることです↓

銀行融資を受けやすくする試算表の提示のしかた
  • 前期・前々期との比較で提示する
  • 定期的に提示する
  • 月次決算仕訳を提示する
試算表で銀行融資を受けられないのは提示のしかたが悪いから

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