銀行融資を受けやすくするポイントして、社長の後継者がいる会社がとるべき銀行対応について、お話をしていきます。
後継者がいればいい、わけではない。
銀行が、融資先の「数字」以外にも気にしていることのひとつに、「後継者」が挙げられます。とくに、社長が高齢(60歳くらい)になってくると、銀行は後継者を気にするものです。
まずは、「後継者(候補)がいるのか、いないのか」。いないということになると、それはそれで「マイナス要因」になることは理解しておきましょう。長期の融資などは、受けにくくなってきます。
では、後継者がいればよいのか、といえば。もちろん、そんなこともなく。後継者がいればいたで、「どのような後継者なのか、会社を持続・成長させられる後継者なのか」を銀行は気にします。
したがって、会社はそのあたりの「情報」を、銀行にうまく開示できると、よりスムーズに融資が受けられるようになるでしょう。
というわけで、社長の後継者がいる会社がとるべき銀行対応について、お話をしていきます。おもなところで5つ、こちらです↓
- 給与の金額を明示する
- 現社長との関係性を伝える
- 後継者の強みをアピールする
- 社員・取引先からの評判を伝える
- 後継者が銀行と話をする場をつくる
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
社長の後継者がいる会社がとるべき銀行対応5選
1.給与の金額を明示する
給与の金額は、その人の「能力」を示すひとつの指標になります。つまり、後継者の給与が高ければ、後継者の能力は高い。逆に、給与が低ければ、能力は低い、ということです。
銀行にも、そのような見方があります。ですから、後継者の給与に関する情報は、銀行に対して開示するようにしましょう。
後継者がすでに役員であれば、決算書の付随書類である「勘定科目内訳明細書」のなかに、役員報酬の内訳を記載する書類があります。とはいえ、意外と銀行が見ていないケースはあるものです。
役員報酬の総額は見ているのだけれど、なぜか内訳までは見ていない… というケース。なので、折を見て(決算報告のときにでも)、役員報酬の内訳についてふれてみるとよいでしょう。
現社長が、自身や後継者を含めて、その他の役員に対する報酬(給与)をどのように考えているか、どのような基準で決めているかを、銀行に伝えるのも有意義です(現社長による「お手盛り」ではないことを示す)。
なお、後継者がまだ役員ではない場合。勘定科目内訳明細書だけでは、後継者の給与額はわかりません。別途資料を用意するなどして(親族に対する役員報酬・給与一覧など)、銀行に説明をするのがおすすめです。
2.現社長との関係性を伝える
ここで言う「関係性」とは、平たく言うと、現社長と後継者の「仲が悪くないかどうか」です。後継者候補である、現社長の子どもがいるけれど、事あるごとに衝突している会社もあります。
また、子ども「たち」がいがみあっている… というケースもあるでしょう。銀行は、そのような状況も心配をしていますから、現社長と後継者との関係性を伝えることも大切です。
なお、現社長が後継者のことを、過度に遠慮して話すのには気をつけましょう。「まだまだ未熟で…」などと言い過ぎるようだと、銀行としては会社の先行きが不安になってしまいます。
また、前述した後継者の給与(役員報酬)の金額も、現社長との関係性をあらわすことはあるものです。仲が悪いがゆえに、能力に対して給与の金額が低いケースがあります。
さらには、後継者を厳しく評価するあまり、後継者の給与額が低いまま… にもかかわらず、現社長の給与は依然として高額を維持している。すると、銀行からは「ほんとうに承継する気があるのかな?」と疑われることもありえます。
3.後継者の強みをアピールする
2代目社長(後継者)は、先代社長に比べると「リーダーシップ」や「カリスマ」に欠ける。というのは、よく見聞きをするハナシでしょう。それが事実かどうかは、ケースバイケースです。
仮に事実だとしても、後継者には後継者の「強み」があります。たとえば、いまどきの経営センスに秀でていたり、ITリテラシーが高かったり。後継者が現社長とは、異なる強みを持っていることは少なくありません。
ところが、せっかくの強みが、銀行には伝わっていないことも多く。これはこれで、もったいないハナシだと言えます。
そこで、後継者の「略歴・職歴」を書面にまとめたうえで、後継者のこれまでの経験や、身につけてきた能力、具体的な成果などを銀行に伝えるようにしてみましょう。
また、それらが会社の事業に対して、どのような「良い影響」を及ぼすかも重要です。後継者のあたらしい視点や能力によって、既存事業の底上げや新規事業への展開など、「将来の見通し」につながるのであれば、銀行からのプラス評価にもつながります。
4.社員・取引先からの評判を伝える
後継者の能力は非常に高い。けれども、古参の役員とうまくいっていない。取引先とうまく関係が築けていない… というケースがあります。
銀行はそれを知っているので、「この後継者はだいじょうぶだろうか?」という目で見ているものです。なので、社員や取引先からの評判についても、銀行に伝えるのがよいでしょう。
もし、後継者が社内でうまくいっていないようであれば、注意が必要です。銀行員は、ふだん融資先に出入りする際、社員のようすを観察しています。
たとえば、きちんとあいさつができるかどうか。活気はあるかどうか、など。加えて、社員が社長に対して、どのような「態度」で接しているか、話しているかも見ています。
同じように、社員の後継者に対する態度もまた、銀行から見られていると考えておくのがよいでしょう。距離感が近すぎる態度や、反発を感じるような態度が見られると心配です。
なお、取引先との関係については、後継者がどれくらい取引先に出向いているか、後継者としての接点を持っているか。などを、銀行に伝えられるとよいでしょう。
加えて、同業者の集まりや、地域の集まりに参加しているのであれば、そういったこともあわせて伝えるのがおすすめです。銀行は、後継者の社交性やコミュニケーション力にも注目しています。
5.後継者が銀行と話をする場をつくる
後継者がいるにもかかわらず、銀行とはいっさい話をしていない、という会社もあります。つまり、銀行対応するのは現社長のみ、という会社です。
これだと、現社長がいくら後継者のことを銀行に伝えたところで、銀行に「事業承継の本気度」までは伝わりません。ですから、ぜひ、後継者本人が銀行と話をする場をつくりましょう。
取引銀行との面談に、後継者を同席させるのはもちろん。会社の状況や、これからの方向性などについて、後継者が積極的に発言できるのがベストです。
現社長に遠慮して、後継者がなにも言えないようだと、銀行としては「承継できるのかなぁ?」と不安になります。遠慮はしてないとしても、能力的に「だいじょうぶかなぁ?」と思われてしまうでしょう。
そういう意味では、現社長のほうが遠慮をして、あえて後継者に話をしてもらうという配慮も必要です。
銀行が、後継者のクチから言葉を聞きたくて質問をしているのに、後継者を遮るようにして答えだしてしまう現社長もいます。これは、銀行対応としてはよくありませんので。現社長と後継者、どちらが回答を求められているのかには、じゅうぶんに気をつけましょう。
まとめ
銀行融資を受けやすくするポイントして、社長の後継者がいる会社がとるべき銀行対応について、お話をしてきました。後継者がいる会社は、積極的に取り組んでいきましょう。
逆に、なにもせずにいると、銀行を不安にさせることになり、会社に対する評価もムダに低くなってしまいます。
- 給与の金額を明示する
- 現社長との関係性を伝える
- 後継者の強みをアピールする
- 社員・取引先からの評判を伝える
- 後継者が銀行と話をする場をつくる