個人事業主が税理士に報酬を支払うメリット

個人事業主が税理士に報酬を支払うメリット

会社が税理士に報酬を支払っている割合に比べれば、個人事業主が税理士に報酬を支払っている割合はだいぶ下がります。それでも、個人事業主が税理士に報酬を支払うメリットとは…? についてのお話です。

目次

たとえポジショントークだとしても。

個人事業主のなかには、税理士に報酬を支払っている(仕事を依頼している)という人がいます。が、必ずしもそうだ、というわけでもありません。

会社が税理士に報酬を支払っている割合に比べれば、個人事業主が税理士に報酬を支払っている割合はだいぶ下がります。その理由はいくつかありますが、ひとつは「メリットがわからない」ということでしょう。

そこで、本記事では「個人事業主が税理士に報酬を支払うメリット」についてお話をしてみます。などと言うと、「それは、ポジショントークではないのか?」と思われるかもしれません(わたしは税理士なので)。

たしかに、「まったくない」とは言い切れず。ただそれを割り引いても、メリットがあることに間違いはないだろうと考えるものがこちらになります↓

個人事業主が税理士に報酬を支払うメリット
  • 正しい経理を理解・実践しやすい
  • 節税を良いタイミングで実行しやすい
  • 銀行からの融資を受けやすい

それではこのあと、順番に見ていきましょう。

個人事業主が税理士に報酬を支払うメリット

正しい経理を理解・実践しやすい

個人事業主が「税理士」についてイメージするものとして、まず挙げられるのは「確定申告」でしょう。個人事業主は1年に1度、税務署に税金の申告をしなければいけません。

その確定申告に不安がある、じぶんにはできない… というときなどには、「税理士に頼もうかなぁ」と考えることもあるはずです。とはいえ、個人事業主の確定申告(所得税の申告)は「なんとかなる」ものでもあります。

会計ソフト(クラウド会計を含む)があれば、とくに。確定申告をすること自体は、「じぶんひとりでもできる」という個人事業主は少なくありません。ですが、「申告できる」ことと、「正しい申告内容であるか」は別モノです。

仕事柄、ご自身で申告をされたという個人事業主の申告書を拝見する機会があります。この点で、「1つのミスもない、1つの問題もない」という申告書には出会ったことがありません。

もちろん、1つのミスもなく、1つの問題もない申告書をつくれる個人事業主もいるでしょう。けれども、割合としてはかなり少ないのではないか? というハナシをしています。

結果として、ある日突然、税務署から間違いを指摘をされたり。ふとしたことから、じぶんの間違いに気がついて青ざめたり… といったことも起きうるわけです。

そう考えると、正しい経理を理解・実践するために、税理士に報酬を支払うことにはメリットがあります。ちなみに、ここでいう「正しい経理」とは、仕訳や勘定科目が正しいかどうか、といったことだけではありません。

たとえば、会計ソフトはどれがよいか、手入力をできるだけ避けるためにどうするか(いかに外部データを連携するか)、経理処理の流れ(いつ・なにを・どのように処理するか)、経理の結果をどのように確認するか(各種帳票の見方)、その結果をどう仕事(判断)に活かすか、といったところまでを含みます。

だとすれば、「申告できる(だけ)」と「正しい経理を理解・実践できる」こととは、まったくの別モノだということがわかるはずです。

どちらでよいか・どちらがよいかは、個人事業主それぞれが決めることではありますが。正しい経理を理解・実践したいのであれば、税理士に報酬を支払って身につけるのは、有効な選択肢になるでしょう。

ただし、税理士に仕事を依頼するときには、「じぶんが税理士になにを望んでいるのか」をきちんと伝えることが大切です。正しい経理の理解・実践を「身につけたい」のに、「申告書をつくってくれるだけ」に報酬を支払うのでは、ミスマッチになってしまいます。

税理士もいろいろです。会計や税金のことだけにかかわらず、そのほかの分野においても仕事を依頼できる税理士もいます。じぶんが税理士になにを望むのかを明確にしてから、仕事の依頼をするようにしましょう。

節税を良いタイミングで実行しやすい

多くの個人事業主が考えることに、「税金を少なくしたい」があるでしょう。いわゆる「節税」です。そんな関心に答えるべく、節税に関する情報はちまたにあふれています。

本もたくさん売られていますし、ネットにはたくさんの記事がある。YouTubeを探せば、動画もたくさんあります。それらを参考に節税をしている、という個人事業主は少なくないはずです。

ここで、ひとつ気をつけるべきこととして「タイミング」があります。節税を実行するタイミングです。個人事業主にとっての税金である「所得税」の節税は、実行するタイミングによって効果にだいぶ差が出るものがあります。

たとえば、貸倒引当金の計上、繰延資産の償却、経営セーフティ共済への加入、ふるさと納税、消費税の計算方法の選択、法人化などなど。これらを実行するタイミングによっては、節税できる金額には差が出ます。

では、良いタイミングを個人事業主がじぶんで判断できるかといえば、「それほどカンタンではない」というのが現実でしょう。節税の「方法」は知っていても、「タイミング」まではわかりにくいものなのです。

そう考えると、節税を良いタイミングで実行するために、税理士に報酬を支払うことにはメリットがあります。さらに言えば、「そもそも節税と言えるのか?」を確認できるのもメリットです。

ちまたでいわれる節税のなかには、そもそも節税とは言えないようなものも存在します。極端な例を挙げれば、「プライベートの支払いも仕事の支払いとして経費にする方法」みたいな。

言うまでもなく、それは「節税」ではなくて「脱税」です。そこまで極端ではなくとも、いわゆる「グレーゾーン」もあります。そのグレーゾーンについて、じぶんに都合のよい解釈をしすぎないために、税理士に聞いてみるのもよいのではないでしょうか。

また、経費になったとしても、節税できる金額はどんなに多くても支払った金額の半分ていどです。支払った金額以上に、税金が減るわけではありません。つまり、そもそも支払いをしないほうが、手元に残るおカネは多くなります。

だとすれば、経費を増やすような節税は、手元のおカネを減らす行為であって、そもそも節税とは言えないのではないか? ということにもなるわけで。それなら、正しい節税とはなんなのか? を理解・実践するために、税理士に報酬を支払うのもひとつの方法です。

銀行からの融資を受けやすい

もし、銀行から融資を受けようと考えているのであれば。じぶんで確定申告をしている場合には、覚えておくべきことがあります。それは、「銀行は、税理士署名がない申告書を信じない」ということです。

確定申告書には、税理士の署名欄があります。ここに署名があるかどうかを、銀行は必ず見ているのです。そのうえで、署名がなければ「この申告書には、間違いがあるかもしれない」と考えます。

実際、個人事業主がひとりでつくる申告書は、間違っている確率が高いものですから、銀行がそのように考えるのはもっともなハナシです。なので、たとえ正しい申告書であったとしても、間違いを疑われる可能性があることは覚えておいたほうがよいでしょう。

だからといって、ぜったいに融資が受けられないわけではありませんが。それでも、税理士署名があったほうが、融資が受けやすくなる傾向があることは間違いないものと考えます。融資を受けられるかどうかだけではなく、受けられる金額にも影響するところです。

また、同じ売上高、同じ利益額だとしても、決算書のつくりかたしだいで、銀行からの見方や評価が変わるケースもあります。つまり、銀行から融資を受けやすくするためには、決算書のつくりかたも大切だということです。

そのあたりについても、税理士に報酬を支払うことで対応するのもよいでしょう。

ちなみに、税理士署名のない申告書について、銀行は別の見方もしています。それは、「税理士に依頼ができない(報酬を支払えない)ほどの商売なのか」という見方です。

正しい経理をする、正しい申告をするにあたって、税理士に確認をしてもらうのは当然。税理士に支払う報酬は、商売をする以上は「必要コスト」のひとつ。そのコストを支払うことができないほどの商売であれば、融資をするのは難しい… という見方になります。

この見方が、「決定的」なものだとまでは言いませんが。融資を受けようとするののであれば、銀行にはそのような見方もあることは理解をしておいたほうがよいでしょう。

これらをふまえて、銀行からの融資が受けやすくなるのは、税理士に報酬を支払うメリットのひとつだと言えます。

まとめ

会社が税理士に報酬を支払っている割合に比べれば、個人事業主が税理士に報酬を支払っている割合はだいぶ下がります。それでも、個人事業主が税理士に報酬を支払うメリットとは…? について、お話をしてきました。

これらのメリットに魅力を感じるようであれば、税理士に報酬を支払う(仕事を依頼する)ことも検討してみるのはいかがでしょうか。

個人事業主が税理士に報酬を支払うメリット
  • 正しい経理を理解・実践しやすい
  • 節税を良いタイミングで実行しやすい
  • 銀行からの融資を受けやすい
個人事業主が税理士に報酬を支払うメリット

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