ちまたには、「銀行融資を受けるなら、店格が高い支店を狙え!」みたいなハナシもあるようですが。実はそうでもない、とはいえ、店格を無視もできない。そんなお話をしていきます。
銀行の支店は順位付けされている。
銀行から融資を受ける会社の社長が、知っておくとよいことのひとつに「店格(てんかく)」があります。店格とは、端的に言うと、各銀行における「支店の順位」です。
自社が融資を受けている・受けようとしている支店の店格が高いか低いか、これによって「融資の受けやすさ」に影響が出ることがあります。ゆえに、店格について理解を深めておくとよいでしょう。
本記事ではこのあと、次のようなお話をしていきます↓
- 店格が高いと融資が受けやすい、とは?
- 店格が高いと融資が受けにくい、とは?
- 取引支店の店格の高さを知りたい
ちまたには、「銀行融資を受けるなら、店格が高い支店を狙え!」みたいなハナシもあるようですが。実はそうでもない、とはいえ、店格を無視もできない。そんなお話をしていきます。
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
店格が高いと融資が受けやすい、とは?
冒頭、こんなハナシをしました。銀行融資を受けるなら、店格が高い支店を狙え。つまり、店格が高い支店に融資を依頼するほうが、融資は受けやすいということです。
その理由は、「店格」と「支店長の決裁上限額」との関係性にあります。ひとことで言えば、「店格が高い支店ほど、支店長の決裁上限額も高くなる」という関係性です。
そもそも、各支店の支店長が決済できる上限額は決まっています。支店長が、上限なしに融資をできるわけではありません。融資先1社あたり「〇〇万円まで」という上限額が決められています。
この上限額を超える金額の融資をするためには、「本部」の決裁が必要です。もしかすると、銀行担当者から「本部の決裁が必要になります」などと言われたことがあるのではないでしょうか。
では、本部の決裁になるとどうなるのか? 単純に、審査が厳しくなります。わかりやすく言えば、支店は「融資を増やすのが仕事」ですが、本部は「リスクを減らすのが仕事」です。
ここで言う「リスク」とは、貸したおカネを返済してもらえないリスクであり、実際に返済してもらえなければ、銀行の損失が増えてしまう… 本部は損失を減らして、銀行全体の業績を上げようとしているわけです。
そう考えると、会社がよりたくさんの融資を受けたいのであれば、店格が高い支店のほうが融資が受けやすいはずだ! ということになりますよね。店格が高い支店のほうが、支店長だけで決裁できる上限金額が高いからです。
これはこれで一理あります。が、すべての会社にとって、店格が高い支店のほうがよいのか? といえば。必ずしもそうではありません。という話を、このあと確認していきましょう。
店格が高いと融資が受けにくい、とは?
すべての会社にとって、店格が高い支店のほうがよいわけではありません。なぜなら、店格が高い支店の融資先は、優良な会社・大きな会社が多いという傾向があるからです。
そういった会社のなかにあって、自社の業績が悪い、規模が小さいのだとしたらどうでしょう? 自社が銀行から相手にされにくくなる… というデメリットが考えられます。
店格が大きな支店ほど、大きな融資額が営業目標に掲げられているものです。業績が悪い会社や、規模が小さい会社への融資額は限られますから、相手にされにくくなるのも当然でしょう。
逆に、店格が低い支店はどうなのか? そもそも融資先が少なかったり、規模が小さな融資先が多い、といった傾向があります。だとすれば、店格が高い支店のなかよりも、自社が目立てるチャンスは増えるはずです。
実際に、店格が低い支店のほうが、自社のことをよく気にかけてくれる、よく足を運んでくれるということがあります。したがって、自社の業績や規模によっては、店格が低い支店のほうが融資が受けやすいこともあるわけです。
また、規模が小さい会社であれば、必要とする融資金額も小さくなります。店格が低い支店でも、支店長の決裁上限額におさまるということもあるでしょう。
なお、本部決裁の対象として気にかけるべきは、「プロパー融資」です。信用保証協会による保証がないため、銀行にとってはリスクが高い融資になります。ゆえに、審査は慎重です。
いっぽう、信用保証協会の保証付き融資は、融資額の8割(あるいは全額)が信用保証協会によって保証されています(会社が返済できない場合、信用保証協会が肩代わり)。よって、銀行にとってはリスクが小さく、支店長決裁が問題になるケースは少なくなります。
取引支店の店格の高さを知りたい
ここまでの話をふまえて、会社はどうすればよいか? それは、自社が取引している支店の店格を知ることです。店格の高さがどれくらいか、支店長決裁の金額はどれくらいかを知ることです。
銀行の各支店は、「営業エリア」が決まっています。その営業エリア内にある会社しか、融資を受けることはできません。だとしたら、会社が好き勝手に「あの支店がいい、この支店がいい」というハナシはできないわけです。
そこでまずは、自社が取引をしている支店、それぞれの店格を知ることにしましょう。そのうえで、自社の状況・規模に合った店格の支店を選んで、お付き合いをするのがおすすめです。
もっとも、銀行外部から店格の高さを明確に知ることはできません。ただし、推測をすることはできます。店格が高い支店には、次のような傾向があることを覚えておくとよいでしょう↓
- 都心部や地域の中心部に近い
- 営業エリア内に会社が多い、大きな会社が多い
- 支店の店舗面積が広い、行員の数が多い
- 支店の営業歴が長い
こういった特徴が見られる支店ほど、店格が高いものと推測できます。また、店格とは別に、支店長の決裁上限額を、銀行担当者に直接たずねるのもひとつの方法です。融資の依頼をする前に、「この融資金額だと、本部決裁になりますか?」と聞いてみましょう。
加えて、会社がすべきこと。それは、自社の業績をよくすることです。
業績がよくなれば、店格が高い支店のなかにあっても目立つようになりますし、融資を受けるにしても、支店長決裁で済む範囲が広くなります。また、店格が低い支店であっても、自社の業績がよければ、本部決裁をとおせる可能性が高くなるでしょう。
店格や支店長の決裁上限額を知って、その範囲に融資額を抑えようとするばかりではなく、より大きな融資額を目指して、店格が高い支店とのお付き合いや、本部決裁へのチャレンジを増やしていきましょう。
まとめ
ちまたには、「銀行融資を受けるなら、店格が高い支店を狙え!」みたいなハナシもあるようですが。実はそうでもない、とはいえ、店格を無視もできない。そんなお話をしてきました。
各支店には営業エリアがありますから、会社が好き勝手に支店を選ぶことはできません。だからこそ、取引している支店の店格を押さえておくことに意味はあるでしょう。自社にとって、融資を受けやすい店格、受けにくい店格という考え方もあるからです。