銀行にリスケジュールをお願いするのであれば、その後の返済額は「ひとまずゼロ」をお願いすべきです。とはいえ、銀行に納得してもらうのには「理由」の説明が必要になります。その理由とは…? を押さえてきましょう。
理由がなければ納得できない。
会社における銀行融資について。当初の約束どおりに返済をするのが、どうしても厳しい… というときに検討せざるをえないのが「リスケジュール」です。
リスケジュールとは、銀行との当初の約束を変更すること。具体的には、「毎月の返済額の減額」になります。この点で、「いくら減額してもらうのか?」との疑問があるでしょう。
結論として、いちどめのリスケジュールでは「ひとまずゼロ」をお願いすべきです。
リスケジュールは、「6ヶ月〜1年」の期間を対象におこなわれます。そのあいだは、返済をゼロにしてもらうようにお願いをしましょう、ということです。
とはいえ、銀行としては「少しでも返済をしてほしい」のですから、お願いをするにしても「理由」が必要になります。では、会社が銀行に説明をすべき理由とは? 次のとおりです↓
- 計画は計画に過ぎないから
- さらに減額するのは難しいから
- 預金が増えなければ改善できないから
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
リスケジュール後の返済額はひとまずゼロで説明すべき理由
計画は計画に過ぎないから
会社がリスケジュールをお願いするときには、銀行に「経営改善計画書」を提示することがたいせつです。なかには、計画書なしにリスケジュールが実行されるケースもありますが。
そのときはよくても、「のちのち」になって問題が起きます。それはさておき、会社は「経営改善計画書」の提示をもって、「いずれは元どおりの返済ができる」との説明をすることになります。
もう少し具体的にいうと、「向こう5年のあいだに元どおりの返済ができるようになる」ことを示した計画です。ちなみに、計画のなかには「現状分析、行動計画、数値計画」などが含まれます。
このうち数値計画については、当然、利益が出るようでなければいけません。言うまでもなく、利益が返済原資になるからです。なので、数値計画には「相応の利益」が記載されるわけですが。
その利益を見た銀行からは、「利益が出ているのだから、できるだけ返済をしてほしい」と言われることになります。銀行は「貸したおカネを回収する」のが仕事ですから、もっともなハナシです。
とはいえ、返済をすればするほど、会社の資金繰りは厳しくなります。もともと厳しいからリスケジュールをお願いしているのに、リスケジュールをしてもなお返済をしていたのでは、再起の可能性を低めるばかりです。
では、どうするか? ひとつは、手堅い計画にしあげることです。計画の前半、とくに1年めは手堅く、厳しめの計画を検討しましょう。実際に、経営改善の実現はカンタンではありません。行動を起こしても、成果が出るまでには時間がかかります。
手堅い計画とは、言い換えると「売上は少なめ・経費は多め」の計画です。手堅すぎるのも問題ですが、少なくとも「業績急回復で利益急増」みたいな計画は避けましょう。利益が出るほど銀行からは返済を迫られます。場合によっては、計画の実現可能性(楽観的すぎる)を疑われることにもなりかねません。
それから、もうひとつ。手堅い計画を提示したうえで、「計画は計画に過ぎない」との説明をしましょう。会社は、計画の実現に努めるものの、実際が計画を下回ることはあるものです。そのときに毎月の返済額が負担になって改善が遅れる、あるいは資金ショートするのでは、銀行だって困ります。
だからまずは、業績の改善を優先して、ひとまずの返済額はゼロにしてほしい。との説明で、銀行の理解を求めるようにしましょう。
さらに減額するのは難しいから
たとえば、リスケジュール前の毎月の返済額が 100万円の会社があったとして。いちどめのリスケジュールをお願いしたところ、銀行からは「30万円は返済してほしい」と言われたとします。
返済がゼロではないにしても、会社としては「それでも助かる」ということで、銀行の言うとおりにしてしまうケースはあるものです。が、やっぱり、返済額はゼロでお願いしましょう。
なぜなら、30万円の返済が厳しくなったときに、「さらに減額をしてほしい」というお願いは難しいからです。「さらに減額」とは、業績悪化をあらわしているため、銀行としては応じづらく、リスケジュールの継続もしづらくなります。
そうなったときには、会社が困るのはもちろん、銀行だって困るはずです。そう考えると、「中途半端なリスケジュール」はしないに限ります。どうせリスケジュールをするのであれば、返済額はゼロにする。中途半端にはしない。
これが結果として、業績改善の原動力ともなり、会社が再起する可能性を高めることにもつながります。
銀行としては、「最終的」に元どおり返済をしてもらえればよいはずなのですから、目先の返済にはガマンをしてもらう。そのために、経営改善計画書が必要になります。計画書も無しに、「いずれ返済します!」と言っても、銀行は信用しないのはあたりまえです。
だから、リスケジュールをお願いするときには必ず、経営改善計画書を提示するようにしましょう。
なお、いちど銀行に提示した計画書を、銀行が忘れることはありません。計画の進捗状況を、ずっと確認し続けます。そのうえで、もしも計画と現実との乖離が大きいと、リスケジュールの打ち切りもありうるところです。
目安として、計画達成率は「8割以上」になります。そういう意味でも、手堅い計画が重要になることがわかるでしょう。楽観的にすぎる計画の場合、達成率が低くなりがちだからです。
また、計画の達成率を「定期的に測定」できるように、毎月の試算表作成は必須だと言えます。試算表を作成していない会社は、つくった計画を放置している(進捗管理していない)のと同じです。
そういった会社を、銀行が支援しづらくなるのは言うまでもありません。
預金が増えなければ改善できないから
会社が業績改善を実現するためには、「おカネ」が必要です。そのおカネの支出を抑えるために、リスケジュールの入口の段階では、コストカットをするのが常套手段にはなります。ところが、すべてのコストをカットできるわけではなく、カットしてばかりでは進まない改善もあるでしょう。
また、売上が増えていく過程で必要になるおカネ(増加運転資金)もあります。とはいえ、リスケジュールをしているあいだは、原則、あらたに融資を受けることはできません。では、どうするか?
ここでもやはり、リスケジュールのあいだは返済額をゼロにすることです。
そうすれば、返済額分の融資を受けているのと同じ効果があります。返済額をゼロにすることで、会社は手元の預金を増やす。その預金を活かして、業績改善の実現可能性を高める、業績改善の実行速度を上げることができる。銀行には、そのように説明をしてみましょう。
というわけで、いちどめのリスケジュール(はじめの6ヶ月〜1年)の段階では、返済額をゼロにして、できるだけ預金を増やすことを優先します。実際に預金が増えたら、その状況をふまえて、次以降のリスケジュールからは、徐々に返済額を増やしていく流れです。
なお、計画書上は、計画した「税引後利益 + 減価償却費」に対して、8割ていどの返済額を見込んでおくのがよいでしょう。
たとえば、計画2年めの税引後利益が 400万円、減価償却費が 100万円だとしたら。「(400万円 + 100万円)× 80%」で、年間 400万円くらいの返済を計画する、ということです。言い換えると、100万円は手元に残る(預金が増える)、ということになります。
まとめ
銀行にリスケジュールをお願いするのであれば、その後の返済額は「ひとまずゼロ」をお願いすべきです。とはいえ、銀行に納得してもらうのには「理由」の説明が必要になります。
その理由とは…? を押さえてきましょう。返済額をゼロにできれば、会社が再起できる可能性は高まります。逆に、返済額が多くなるほど、再起の可能性は低くなるという理解がたいせつです。
- 計画は計画に過ぎないから
- さらに減額するのは難しいから
- 預金が増えなければ改善できないから