銀行から融資を受けると、利息を払わなければいけません。その金利が高いから、手元のおカネで返済してしまおうと考える社長がいます。が、そんな社長が見逃しているかもしれないことについてのお話です。
おカネを借りるのもタダではない。
銀行から融資を受けている会社の社長であれば、もしかすると考えたことがあるかもしれません ↓
「金利が高いから返済してしまおうか」
たしかに、おカネを借りるのもタダではありませんから。手元におカネがあるのなら、返済してしまったほうがいいのではないか、との考えはもっともです。そうすれば、利息を払わずにすみます。
が、そこには、社長が「見逃していること」があるかもしれない。実は、返済をすることで問題が起きるかもしれない。というわけで、「金利が高いから返済しよう」と考えている社長が見逃していることについて、お話をしていきます。
具体的にはこちらです ↓
- 金利はそれほど高くない
- 銀行との関係性が悪くなる
- ほかの融資条件が悪くなる
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
「金利が高いから返済しよう」と考えている社長が見逃していること
金利はそれほど高くない
いまは低金利の時代です。中小企業における融資でも、金利が1%台はあたりまえ。1%を切っている会社もあるでしょう。いっぽうで、利用する金融機関や融資制度によっては、2%台というケースもあります。
すると、「このご時世に2%だなんて… だったら返済してしまおうか」と考える社長はいるものです。ここでいちど、「金利はほんとうに高いのか?」をあらためて検証してみましょう。
たとえば、1,000万円を金利2%で借りていたとします。借入当初の利息は、おおむね年間 20万円です(1,000万円 × 2%)。ひと月あたりだと 1.7万円くらい。と言うと、「おもっていたほどでもないか」と、考え直す社長もいるはずです。
「金利」で見ると高く感じても、「金額」に置き換えてみるとそれほど高くはない、とおもえることはあります。毎月 1.7万円のコストで、手元におカネを 1,000万円よけいに置ける安心感を買えるのですから。
さらに、利息には節税効果があります。法人税の税率がおおむね 30%だとすれば、支払う利息に対して、その 30%分の税金が少なくなるということです。
さきほどの例で言うと、「利息 20万円 × 税率 30%」ですから、6万円の法人税が少なくなります。だとすれば、実質的な利息の負担は、14万円(20万円 − 6万円)です。言い換えると、実質的な金利は 1.4%(14万円 ÷ 1,000万円)ということになります。
見た目は「金利2%」でも、実質的には「金利 1.4%」だとすると、「金利はそれほど高くはない」と考えることもできるのではないでしょうか。
視点を変えて、業績に与える影響も確認をしてみます。年間売上高が1億円、税引前利益が 1,000万円の会社があったとして。この会社の税引前利益率は、10%です(1,000万円 ÷1億円)。
では、この会社が、1,000万円を金利2%で借りたらどうなるか? 支払う利息は 20万円ですから、税引前利益が 20万円少なくなって、980万円になります。このときの税引前利益率は 9.8%です(980万円 ÷ 1,000万円)。
1,000万円を金利2%で借りる前後で、税引前利益率の差は「わずか 0.2%」だと考えることもできるでしょう。するとやっぱり、「金利はそれほど高くない」とおもえるかもしれません。
というわけで、ただただ金利そのものを見るのではなく、金額に置き換えたり、実際に業績に与える影響を試算するなどしてみましょう。金利2%が、必ずしも高いとは言えないものです。
銀行との関係性が悪くなる
銀行が融資をする際、金利を決めるときには、「返済期間」が考慮されています。1,000万円を金利1%、返済期間5年で貸すのであれば、「5年分の利息が見込めるから金利1%」だということです。
では、その 1,000万円を早く返済されたとしたらどうでしょう? もし、1年で返済されれば、残り4年分の利息を、銀行は受け取れないことになります。銀行的には、大誤算です。銀行にも営業目標がありますから、アテにしていた利息がなくなれば困ってしまうでしょう。
なので、返済期間を無視して早く返済しているようだと、銀行としては「貸しにくい会社」になりかねません。
また、言うまでもなく、利息は銀行にとっての「売上」です。したがって、利息が多い会社ほど、銀行にとっては、「良いお客さま」になります。この点で、金利が高いから返済してしまう会社はどうでしょう?
返済すれば、当然、利息が減ります。銀行にとっては売上が減るのですから、利息が減れば減るほど、その会社は「良いお客さま」ではなくなってしまう。すると、いざというとき(会社のピンチ)にも支援をしてもらいにくくなったり、日ごろ来訪してもらえる頻度が少なくなったり…
つまり、銀行との関係性が悪くなるのは、会社にとってデメリットです。
だとすれば、会社が支払う利息は、銀行との「中長期的な関係性」を維持するための必要コストだとわかります。もう2度と融資を受けないならよいにしても、今後も融資を受けるのであれば、利息は支払っておいたほうがいいだろう、ということです。
そう考えると、ふだんから「金利を下げて」と言い過ぎるのも問題だとわかるでしょう。繰り返しになりますが、銀行にとっての売上が減るからです。極端を言えば、銀行との関係性をよくするためにはむしろ、金利は多少高いくらいがちょうどいい。
とくに、いまは世の中全体が低金利であったり、さらには銀行間の競争によって、融資金利が低すぎる状況にあるとも言えます。にもかかわらず、金利交渉をやりすぎるような会社に対しては、銀行が融資をする動機を失いかねません。
もちろん、金利が高すぎるのも問題ですが。多少高いくらいがちょうどいい、という考え方は持っておくとよいでしょう。
ほかの融資条件が悪くなる
「金利」は、融資条件のなかのひとつです。ほかにも、融資条件はいろいろあります。融資金額、返済期間、返済方法、担保や保証の有無など。それら融資条件の兼ね合いで、金利が決まります。
では、たとえばプロパー融資について。プロパー融資とは、信用保証協会の保証がない融資です。銀行にとってはリスクが高い融資であり、保証付き融資に比べて金利が高くなることもあります。
そこで、「プロパー融資の金利は高いから」と、手元のおカネで返済してしまうのはどうでしょう?
これは、おすすめできることではありません。なぜなら、プロパー融資は、銀行にとってリスクが高い融資であり、会社が借りたくても借りにくい融資だからです。
それでもせっかく借りることができたプロパー融資を、わざわざ返済してしまうなんてもったいない。と、考えたほうがよいでしょう。
返済をした挙げ句、その後に融資が必要になって、信用保証協会の保証付き融資でしか借りられないのでは目も当てられません。保証付き融資には、「制度上の限度額」があります。プロパー融資よりも借りやすい融資ではあるものの、借りられる額に限度があるのです。
借りやすい保証付き融資は、本来、いざというときのためにとっておきたいもの。ですから、プロパー融資を返済したことで、その後に保証付き融資に置き換わるようだと、「保証」に関する融資条件が悪化したということになってしまいます。
いっぽうで、プロパー融資を返済しなければ、保証付き融資をとっておくことができます。金利が高いからとプロパー融資を返済する、という考え方には注意が必要です。
似たようなところでは、「経営者保証(連帯保証)が無い融資」があります。これは、会社が返済できなくなったとしても、社長個人にまでは返済義務がおよばない融資です。
銀行にとっては、回収できないリスクが高まりますから、金利が高くなることも少なくありません。これを見て、せっかくの経営者保証が無い融資を、返済してしまおうとする社長がいます。
けれども、経営者保証が無い融資であれば、会社が返済できないときでも、社長個人(その家族を含めて)を守ることができるのですから、高い金利を払う価値もあるでしょう。
それでも返済をして、その後に経営者保証付きの融資を受けるようだと、やっぱり、「保証」に関する融資条件が悪化したということになってしまいます。金利以外の融資条件を良くするためには、金利が高いことも許容する必要があるものと考えておきましょう。
まとめ
銀行から融資を受けると、利息を払わなければいけません。その金利が高いから、手元のおカネで返済してしまおうと考える社長がいます。そんな社長が見逃しているかもしれないことについて話をしてきました。
たしかに、ただただ利息を払うのであれば、返済してしまいたい気持ちはわかります。が、利息はただただ払っているものではありません。銀行に利息を払うことで得られるメリットがあることも、理解しておきましょう。
- 金利はそれほど高くない
- 銀行との関係性が悪くなる
- ほかの融資条件が悪くなる