潜在的な利益から見て、いまの中小企業の利益は過少だと言えます。その理由についてのお話です。しなくてもよい資金繰りの苦労をしないためにも、3つの理由を押さえておきましょう。
潜在的な税引前利益率は10%を超える。
中小企業の利益が過少だ、などと言うと。気を悪くされる中小企業の社長がいらっしゃることでしょう。
とはいえ、「中小企業はがんばりが足りない!」みたいなハナシをしたいわけではありません。ここで言う「利益が過少」とは、「潜在的な利益はもっと大きいはずだ」ということです。
言い換えると、「出せるはずの利益を出していないのではないか?」ということであり、これはこれで、やはり気を悪くされるかもしれませんが。
赤字の中小企業が7割以上、などと言われます。税引前利益率は3%あれば優良、などとも言われます。いっぽうで、潜在的な税引前利益率は 10%超あるだろう、というのが私見です。
出せるはずの利益を出していなければ、受けられるはずの銀行融資が受けられなくなることがあります。結果として、社長がしなくてもよい「資金繰りの苦労」をしているのだとすれば、とてももったいない話です。
ではなぜ、中小企業の利益が過少だと言えるのか? その理由は3つあります↓
- 値決めの問題
- コストの問題
- 節税意識の問題
これら3つの問題を解決できれば、利益を引き上げることが可能です。このあと順番に確認していきましょう。
中小企業の利益が過少だと言える3つの理由
値決めの問題
中小企業の利益が過少だと言える理由の1つめは、「値決めの問題」です。端的に言えば、「自社が販売する商品価格が低すぎる」ということになります。
何に対して低すぎるのか? 商品の価値に対してです。つまり、商品の価値が高いのにもかかわらず、「あえて」低すぎる価格を設定してる状況だと言えます。
これを聞いて、「いやいや、そんなはずはない」とおもわれる社長もいることでしょう。ですが、じぶんでも気づいていないケースも少なくないため、気をつけなければいけません。
ではなぜ、じぶんで気づかないのか? それは、自社の商品の価値よりも、「他社の価格」や「消費者の心理」のほうへ、社長の目が行き過ぎているからです。
もちろん、他社の価格や消費者の心理を「すべて無視」しましょう、というハナシではありません。それらはそれで、「参考」にすべきことではあります。
とはいえ、資本力を武器に価格競争をしかけることができる大企業の「価格」は、資本力が乏しい中小企業にとって太刀打ちできるものではありません。
また、そんな大企業の価格に引っ張られて値決めをしている中小企業は多くありますから、競合他社の価格を参考にするときにも注意が必要です。
いっぽうで、消費者はいつだって「安ければ安いほうがいい」と考えていますから、消費者の声を聞きすぎれば、自社の商品価格を上げることはできなくなってしまいます。
実際に、消費税率が上がっても、原材料コストが上がっても、値上げをできない・していない中小企業はけして少なくありません。繰り返しになりますが、「他社の価格」や「消費者の心理」に目が行き過ぎているからです。
なので、まずは「自社商品の価値」に目を向けるところから始めましょう。他社商品に似ているようであっても、機能面や流通面、アフターフォロー面などで優れていることはあるものです。
値上げをすると「客離れが怖い」というハナシがあります。たしかに、多少の客離れはあるでしょう。ですが、値上げにより増加する利益で、客離れにより減少する利益を補うことができます。
場合によっては、増加する利益のほうが大きくなるため、「値上げ」は自社の過少利益を解消する手段の1つです。
また、客離れとは客数の減少であり、客数が減少すれば客対応の手間と時間も減少します。その分を、「商品の価値向上への取り組み(商品開発・改善、接客の拡充、IT利用による効率化など)」に充てることができれば、さらに値上げをして利益を増やすことができて好循環です。
コストの問題
中小企業の利益が過少だと言える理由の2つめは、「コストの問題」です。例を挙げると、仕入費用や外注費、家賃など。これらのコストが「過大」となっているケースがよくあります。
長年の仕入先や外注先に対して、実はいちども価格交渉をしたことがないとか。同じように、事務所の家賃について、長く借り続けているにもかかわらず、やはりいちども価格交渉をしたことがないとか。
人が良い社長ほど、「交渉は気が引ける…」という気持ちもわかります。が、相手も商売ですから価格交渉されたからといって、驚くほど気分を害してしまうようなことはないはずです。
それに、ITの進歩や経営努力によって、相手も以前に比べると相当なコストダウンができていることもあります。こちらの価格交渉に耐えうるだけのチカラがあるケースも少なくないのです。
また、価格交渉をメンドーに感じている社長もいます。しかし、家賃が毎月5万円でも下がれば、いくら分の売上に相当するのかを考えてみましょう。利益率が悪い会社ほど、コストダウンによる恩恵は大きく感じるはずです。
具体的には、仕入費用や外注費であれば、相見積もりを用意して交渉をしてみる。家賃であれば、近隣相場を調べてみて(ネットで調べられます)、それを根拠に交渉してみるとよいでしょう。
これまで価格交渉をしたことがなかった相手ほど、価格引き下げの余地が残されているものです。おもいのほかあっさりと交渉が成立して驚かれる社長、もっと早くから交渉していればよかったと後悔する社長を何人も見てきました。
なお、社長の役員報酬が多いことで、利益が過少になっているケースもあります。会社の資金繰りが悪くて、会社が社長個人から借入をしているようなケースです。
これは、過去、社長の役員報酬が多すぎたことが原因の1つだと言えます。社長は所得税や社会保険料を払ってまで役員報酬を受け取った(会社から社長個人におカネを移した)のに、また会社におカネを戻すのではもったいないハナシです。
会社の業績が良いときに、社長が役員報酬を増やすのは悪くありませんが、業績が悪いときのことも考えれば役員報酬を増やしすぎていることもあります。
役員報酬は、将来の資金繰りまで見ながら考えるようにしてみましょう。
節税意識の問題
中小企業の利益が過少だと言える理由の3つめは、「節税意識の問題」です。社長が、目先の税金を嫌いすぎて、過度な節税をしているケースになります。
たとえば、決算直前になって、利益が 500万円で、税金(税率 30%)を 150万円払わなければいけないことがわかった… という場合。150万円の税金を嫌いすぎる社長は、「税金を払うくらいなら経費を増やす」ことを考えます。
もしも、経費を 300万円増やせば、利益は 200になりますから、税金(税率 30%)は 60万円です。もともとの 150万円に比べると 90万円も少なくなりました。
とはいえ、ほんとうは 500万円の利益を出せることを考えると、自社の評価を下げるもったいない行為だともいえます。とくに銀行は、融資先を利益で評価しますから、利益を減らす節税は銀行融資を受けにくくすることを社長は理解しておきましょう↓
また、さきほどの例で 300万円の経費を増やすことが、将来の利益増加に繋がるものであればよいですが、「その場限り」ということもあるでしょう。
たとえば、飲み食いの費用や、不必要・必要以上の資産購入など。社員に対する臨時賞与も、その効果は「限定的(時間がたてば、もらったことを忘れる)」であることにも注意が必要です。
いっぽうで、300万円のおカネをそういった使い方ではなく、事業転換や新規事業に充てることができれば、将来の利益を大きく増やせる可能性があります。
節税も大事なことではありますが、節税のしかたによっては、自社の利益が過少になることを忘れてはいけません。
まとめ
潜在的な利益から見て、いまの中小企業の利益は過少だと言えます。その理由についてのお話です。しなくてもよい資金繰りの苦労をしないためにも、3つの理由を押さえておきましょう。
- 値決めの問題
- コストの問題
- 節税意識の問題