銀行による融資先の現預金の見方についてお話をしていきます。これを社長がわからずにいると、知らないうちに融資が受けにくくなっているかもしれません。
知らないうちに融資が受けにくくなっている。
融資を受けている会社にとって、銀行による「数字」の見方は重要です。たとえば、融資先の「現預金」を銀行はどう見ているか?
これを社長がわからずにいると、知らないうちに、融資が受けにくくなっている… ということもありえます。ですから、社長は「銀行による数字の見方」を押さえておくことが大切です。
そこで、本記事では「銀行による融資先の現預金の見方とは?」についてお話をしていきます。具体的には次のとおりです↓
- 現金多すぎ
- 月商比率
- 預金平残
- 銀行ごと残高
- うち定期預金
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
銀行による融資先の現預金の見方とは?
現金多すぎ
現預金は、「現金」と「預金」とに分かれます。このうちの「現金」について、銀行は「多すぎないか?」という見方をしていることを覚えておきましょう。
多すぎるかどうかの「明確な基準」はありませんが、少なくとも 100万円単位の現金は「多すぎではないか?」と見られるものです。言うまでもなく、「いまどきは、それほどのおカネは銀行に預けているはずだ」と考えられるからです。
そのうえで、銀行が「多すぎる」と判断すれば、多すぎる分の金額は「粉飾(資産・利益の水増し)」として、決算書を修正して評価されることになります。つまり、融資が受けにくくなるということです。
また、一事が万事、「ほかにも粉飾があるのではないか?」と疑われ、ますます融資が受けにくくもなります。
もし、実際に 100万円単位の現金があるのであれば、合理的な理由を銀行に説明することが大切です。たとえば、「売上代金を現金で受け取った直後だから」とか、「現金仕入のために現金を引き出した直後」だとか。
業種にもよりますが、それでもいまは世の中全般に「現金取引」が少なくなっていますから、「なぜ現金でなければいけないのか…?」と、なお疑われる可能性を否定できません。
そのような銀行の見方に限らず、現金取引自体にもデメリットがあるものですから(現金管理の煩雑さ、盗難・横領リスクなど)、できるだけ減らすようにしたほうがよいでしょう。
月商比率
銀行は、「現預金月商倍率」という指標に注目しています。現預金月商倍率とは、算式で言うと「現預金残高 ÷(年間売上高 ÷ 12ヶ月)」です。
算式中の「年間売上高 ÷ 12ヶ月」が平均月商にあたります。したがって、現預金月商倍率とは、現預金が平均月商の何ヶ月分あるのか? という指標です。
銀行は、「最低でも1ヶ月分以上、できれば2ヶ月分以上」という見方をしていることを覚えておきましょう。もし、現預金月商倍率が1ヶ月未満になるようだと、「かなり資金繰りが厳しい会社では?」と見られることになります。
すると銀行はリスクを感じるため、会社は融資が受けにくくなるのが問題です。そうならないように、社長は常に現預金月商倍率を「先読み」しておくことが大切になります。
具体的には、資金繰り予定表を作成して、向こう1年ていどの現預金残高の推移を確認しておきましょう。そのうえで、現預金月商倍率が1ヶ月分未満になりそうであれば、その前に、融資を受けることで、現預金月商倍率を維持しておくとよいでしょう。
どうせいずれ借りることになるのであれば、あらかじめ借りやすいときに借りておく、という考え方です。逆に、現預金の先読みができない社長は、いずれ資金繰りが厳しくなってから、融資が受けられずに苦労することになります。
しなくてもよい苦労をしなくて済むように、先読みして、先に動くようにしましょう。
預金平残
たとえば、10月1日〜10月31日までの31日間の「預金平残」は、31日間毎日の預金残高を合計して、31で割り算をして計算します。つまり、預金平残とは、平均的な預金残高をあらわす指標です。
銀行からしてみれば、預金平残が大きい融資先ほど「安心」を感じることになります。銀行にとって、預金は担保のようなものだからです。結果として、預金平残が大きいほど、融資が受けやすくなります。
預金残高が大きいほど融資が受けやすいことを知っている社長はいますが、預金平残のことは知らずにいると、「一時的な預金残高の大きさ」だけで判断してしまうことになりかねません。
銀行は、預金残高も見ていますが、預金平残まで見ていることを覚えておきましょう。
また、その預金口座内に「売上入金」があると、その銀行からはいっそう融資が受けやすくなります。売上入金があるということは、それだけ預金平残が大きくなりすく、安定しやすいということだからです。
したがって、融資を受けたい銀行があれば、その銀行の預金口座について、預金平残を大きくすること。そのためには、売上入金をできるだけ集中させることを検討してみましょう。
銀行ごと残高
銀行は、預金残高について、「銀行ごと」の残高にも注目しています。たとえば、ぜんぶで 3,000万円の預金があるとして、その預金は「どの銀行にいくらずつ預けているのか?」ということです。
銀行が預金に注目する理由は、前述しました。融資をしている銀行にとって、融資先の預金は担保のようなものだからです。よって、自行の預金が多ければ多いほどいい。
とはいえ、どこかの銀行に多く預ければ、ほかの銀行に預けられる預金は少なくなります。社長は「どうしたものか?」と悩んでしまうことでしょう。そこで目安になるのが、「借入シェア」です。
借入シェアとは、借入金全体に占める各銀行の借入金残高の割合を言います。借入金がぜんぶで 5,000万円あって、そのうちA銀行の借入金が 2,000万円であれば、A銀行の借入シェアは 40%です(2,000万円 ÷ 5,000万円)。
その借入シェアの分だけ、A銀行に預金が預けられていれば、A銀行としては「まぁ、公平かな」と考えることができます。つまり、預金がぜんぶで 3,000万円あるとすると、A銀行に 1,200万円を預けている状態です(3,000万円 × 40%)。
いっぽうで、A銀行に 500万円しか預けていなければ、A銀行は「不公平だ」と考えることでしょう。結果として、A銀行からの融資は受けにくくなります。
ですから社長は、限りある預金を「どの銀行に預けるか?」をようく考えることが大切です。借りたい銀行・借りるべき銀行に預金を預けるべきであり、借りていない銀行・借りられない銀行に預金を預けるようではもったいない… ということになってしまいます。
ちなみに、借りられない銀行の典型例は都市銀行です。融資自体は受けられるかもしれませんが、保証付き融資ばかりでプロパー融資は難しいものがあります。中小企業にもプロパー融資をしてくれる可能性が高い、地方銀行や信用金庫・信用組合がおすすめです。
うち定期預金
もし、預金がぜんぶで 3,000万円あるとして、そのうち定期預金がどれだけあるのか? も、銀行の関心事です。他行の定期預金についてはとくに、です。
たとえば、A銀行から 1,000万円の融資を受けるにあたって、A銀行に預けた 1,000万円の定期預金が「担保」になっていることがあります。
これをB銀行が見れば、「預金のうち 1,000万円は、A銀行によって押さえられている」のであり、B銀行の返済原資と見ることはできません。
また、担保にはなっていなくても、B銀行は同じような見方をします。なぜなら、定期預金は「普通預金ほどカンタンには引き出せない」からです。
もし、会社の資金繰りが悪くなって定期預金を引き出そうとすれば、A銀行は容易に認めはしないでしょう。定期預金を引き出されてしまったら、A銀行は回収しそびれる可能性があるからです。
なので、A銀行は「いま定期預金を解約すると、今後の融資に影響します」などと言って、なんとか定期預金を引き出せないようはたらきかけることがあります。社長としても、そう言われてしまうと、定期預金を引き出しづらくなるものです。
というように、預金残高のうち定期預金については、銀行が特別な見方をしていることを覚えておきましょう。定期預金をすることで、その銀行から融資が受けやすくなることはたしかですが、引き出しにくくなることを忘れてはいけません。
定期預金をするかどうかは、くれぐれも慎重に検討しましょう。社長個人の定期預金についても考え方は同じです。銀行は、社長個人の資産も会社の資産といっしょに見ています。
まとめ
銀行による融資先の現預金の見方についてお話をしていきます。これを社長がわからずにいると、知らないうちに融資が受けにくくなっているかもしれません。
社長は、銀行による数字の見方を押さえておきましょう。
- 現金多すぎ
- 月商比率
- 預金平残
- 銀行ごと残高
- うち定期預金