新型コロナをへて広がった、リモートワークやワーケーション。仕事をする場所の選択肢は広がりましたが、「どこでも集中しよう!」という考えにはムリがある。という、お話です。
リモートワークもワーケーションも、否定するつもりはない。
新型コロナをへて、「リモートワーク」や「ワーケーション」という考え方が広がりました。実際にそうしている、という人もいるでしょう。
そんなリモートワークとワーケーションの共通点は、「場所を選ばず」に仕事ができることです。自宅の書斎であれ、リビングであれ、近所のカフェであれ、コワーキングスペースであれ、はたまた、リゾートホテルであれ。
この点で、どんな場所であったとしても「どこでも集中しよう! 集中できるようにしよう!」といった考え方もまた広がっているように感じます。
とはいえ、「過信」には気をつけなければいけません。そもそも、ヒトが「どこでも集中する」のは難儀なことだからです。だとすれば、「どこでも集中しよう」という方向性には誤りがあるとも言えるでしょう。
もちろん、リモートワークやワーケーションを否定するつもりはありません。わたし自身、ときおり実践しているものでもあります。
なので、否定ではなく、「注意喚起」です。リモートワークやワーケーションの環境であっても、「いつもどおり集中できる」という過信には気をつけましょう、という注意喚起です。
これを聞いて、「いやいや、オレは・ワタシは集中できている!」と、おもわれるかもしれません。というわけで、「どこでも集中することは難しい理由」についてお話をしてみます。具体的には、こちらです↓
- 気分に助けられているにすぎない
- 移動コストによるダメージがある
- 仕事を選ばなければならなくなる
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
どこでも集中することは難しい理由
気分に助けられているにすぎない
たとえば、「カフェだと仕事がはかどる」といったハナシがあります。本当にそうなのでしょうか? 「はかどる」の基準とはなんでしょう? その基準で計測したことはありますか?
などと言えば、「なんてヤツだっ!」とおもわれるかもしれませんが。おそらく、多くの人にとって「はかどる」の基準は「気分」だと推測します。
つまり、カフェという環境で「気分がアガる(ドーパミンやアドレナリンの分泌)」ことにより、「はかどっているように錯覚している」のではないか、ということです。
わたし自身は、どこで仕事をするにしても「時間」と「作業内容(作業量)」とを計測・記録しています。なので、どの場所での仕事がいちばんはかどるのかを、客観的に把握しているつもりです。
ちなみに、わたしの場合には「圧倒的に自宅の仕事部屋」がはかどります。どの場所がはかどるかは人それぞれでしょうから、まずはいちど計測・記録をしてみるとよいでしょう。「気分」や「主観」に頼りすぎないことです。
ではなぜ、カフェだと「ほんとうははかどらない」のか? たとえば、「雑音」が挙げられます。人の話し声や物音など。だから、イヤホンや耳栓をしている、音楽を聞いている、という人もいるでしょう。
ところが、イヤホンや耳栓の利用が増えると「耳の病気」のリスクが増えますし、聴く音楽によっては集中力のさまたげになることが研究でわかっています。
じゃあ、カフェでは仕事をするな、と言うのか。コワーキングスペースやホテルなどで仕事をするのもダメだ、と言うのか。そうではありません、ということは前述したとおりです。
はかどっているように思えても、実は「気分に助けられているにすぎない」こともありますので、その場合にはできるだけ、じぶんが「ほんとうにはかどる場所」で仕事をすることも考えましょう、ということです。
そのうえで、リモートワークやワーケーションをするのであれば、「実ははかどらない」ことも織り込んでおくことが大切になります。具体策としては、「いつもよりも時間には余裕をとっておく」ことです。
とある統計によれば、リモートワークやワーケーションによって、「仕事の効率が下がった・生産性が下がった」と感じる人が増えていることもわかっています。
そんなこともあって、わたしが自宅の仕事部屋以外で仕事をするときには、いつもよりも「長めの時間」、いつもよりも「少なめの作業量」を想定するようにしています。
移動コストによるダメージがある
リモートワークやワーケーションをするのに、「移動」をともなうのだとすれば、そこには多かれ少なかれ「移動コスト」が生じることになります。
移動コストとは、たとえば「疲労」です。移動しないことに比べれば、移動することによって確実にエネルギーを消耗します。これが、仕事のパフォーマンスに影響することもあるはずです。
ここでもまた、移動先の場所・環境に「気分がアガる」ことで、まるで疲労していないかのように感じるかもしれませんが。実は、カラダはちゃんと疲労していたりもします。
また、体力的な疲労だけではなく、緊張からくる精神的な疲労というものもあるでしょう。慣れない場所・慣れない環境に行けば、多かれ少なかれ緊張をともない、脳には余計な負荷をかけるものです。やはり、仕事のパフォーマンスに影響する可能性があります。
それなら、家にとじこもり、ずっと動かなければよいのか? といえば、当然、そんなハナシをしているのではありません。
同じ「移動」であっても、同じ「エネルギー」を使うのであっても、違う移動のしかたがあるし、違うエネルギーの使いかたがありますよね、という話をしています。
たとえば、ジョギングやウォーキングなどはどうでしょう。仕事のあいまに 20〜30分、走ったり、歩いたりすることで、集中力が回復したり、創造力や意欲が高まることがわかっています。場所が近所であったとしてもです。
だとすれば、余計な移動(電車やバスに乗ったり、人混みのなかを歩いたり)による疲労は避けられますし、余計な緊張もせずにすみます。
だったら、カフェやらコワーキングスペースやら、ホテルやらに「わざわざ」場所を変える必要もないだろう、という考え方もあるわけです。
それに、移動コストには「おカネ」も含まれます。遠くに行けば行くほどおカネもかかるし、良い環境を求めるほどおカネはかかるものです。でも、そのおカネの効果は「一時的」です。
その代わりに、ふだんじぶんがいちばん仕事をする場所におカネをかければ、その場所でのパフォーマンスを上げられるかもしれません。たとえば、仕事部屋にスタンディングデスクを買うとか。その効果は、長く持続するはずです。
というわけで、移動コスト(疲労、緊張、おカネ)によるダメージも見逃さないようにしましょう。移動コストは、集中力にダメージを与えるものです。
仕事を選ばなければならなくなる
わたしの仕事内容としては、こうして「執筆」をすることもあれば、「税理士業」をしたり、「動画投稿」をしたりもしています。
わたしに限らず、みなそれぞれに、いろいろな仕事をされていることでしょう。では、いろいろある仕事のすべてを、リモートワークやワーケーションで対応できるか? というと、難しいものもあるのではないでしょうか。
わたしに関して言えば、カフェで「税理士業」をするわけにはいかず(情報漏えい…)、カフェで 「動画撮影」をはじめるわけにもいきません。
というわけで、リモートワークやワーケーションとなると、できる仕事が限られるのであれば、それはそれで「自由度が下がる」のはデメリットだと言えるでしょう。
ヒトは、同じことをし続けると集中力が下がります。これは、「脳」が同じことに飽きてしまうからです。なので、あるていどの時間で、仕事の内容を切り替えるのは「集中力を維持するテクニック」の1つとされています。
そのテクニックが、リモートワークやワーケーションだと使いづらい、ということはあるでしょう。いっぽうで、自宅の仕事部屋なら(わたしの場合)、いくらでも仕事の内容を切り替えることができます。
つまり、場所を移動することは、できる仕事の範囲を狭めることでもあり、結果として、集中力維持の妨げになることもある。ということについても、考えておくとよいのではないでしょうか。
まとめ
新型コロナをへて広がった、リモートワークやワーケーション。仕事をする場所の選択肢は広がりましたが、「どこでも集中しよう!」という考えにはムリもある。という、お話でした。
じぶんが「いちばん集中できる場所」はどこなのか? その場所をわざわざ離れて仕事をすることでムダが生じているのではないか?
ムダが生じているのだとすれば、「いちばん集中できる場所」に居続けるためにはどうしたらよいのか?」も、必要な考え方の1つになるのではないでしょうか。
安易に、リモートワークやワーケーションに流れることへの問題提起です。
- 気分に助けられているにすぎない
- 移動コストによるダメージがある
- 仕事を選ばなければならなくなる