試算表は「費用をならす」のが良い理由と仕訳の方法

試算表は「費用をならす」のが良い理由と仕訳の方法

毎月、試算表をつくりましょう。ただし、試算表をつくりさえすればよい、というわけではありません。試算表は「費用をならす」のがポイントです。その理由や仕訳の方法について、お話をしていきます。

目次

試算表をつくりさえすればよい、わけではない。

毎月、試算表をつくっているでしょうか。つくっていないのであれば、四の五の言わずにつくりましょう。

試算表は、自社の業績を「タイムリーかつ客観的に」把握する唯一無二のツールだからです。だとすれば、社長が試算表を見ずに経営判断をするのが、いかに「危険な行為」であるかがわかるでしょう。

また、会社が融資を受けるにあたって、銀行から試算表の提示を求められることもあります。このとき、試算表をつくっていないがために、融資が受けにくくなる・受けられなくなるのであれば問題です。

ただし、試算表をつくりさえすればよい、というわけでもなく。試算表の「費用をならす」のがポイントです、というのが本記事のテーマになります。

とはいえ、「費用をならす」とはいったいどういうことなのか? 「費用をならす」のだとしたら、具体的にどのようにすればよいのか(仕訳や経理処理の方法)? について、このあとお話をしていきます。具体的にはこちらです↓

試算表は「費用をならす」のが良い理由と仕訳の方法
  • 売上原価をならす
  • 賞与をならす
  • 減価償却をならす
  • その他の費用をならす

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

試算表は「費用をならす」のが良い理由と仕訳の方法

売上原価をならす

「毎月末に在庫をかかえている、かつ、在庫の変動が小さくない」という商売をしている会社は、「売上原価をならす」ことを検討してみましょう。言い換えると、「毎月、棚卸をしましょう」ということになります。

逆に、そのような商売をしている会社が、毎月の棚卸をしないでいると、毎月の利益が「歪む」ことになるので気をつけなければいけません。

たとえば、ある月に「大量の仕入」をしたものの、月末にはまだ売れずに在庫になっている場合、棚卸の処理をしなければ、「大量の仕入」はすべて、その月の費用(売上原価)になってしまいます。売上はないのですから大赤字です。

そうなると、社長は経営判断を間違える可能性がありますし、銀行からの融資が受けにくくなる可能性もあります。ところが、在庫分の金額を「費用から除く」ようにすれば、売上原価は修正されて、赤字になることもありません。

では、そのために必要な仕訳を確認してみましょう。具体例として、3月決算の会社が4月末に在庫 75万円、直前の3月末の在庫は 50万円の場合は次のとおりです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
期首商品棚卸高(※)500,000商品500,000
商品750,000期末商品棚卸高750,000

5月末以降の月末は、「期首商品棚卸高(※)」は「期末商品棚卸高」となります。金額は、前月末の在庫金額です。

上記の仕訳によって、試算表の売上原価の金額は、「売上に対応する仕入だけ」が費用になります。簿記がわからないと、少々難しいところではありますが。よくわからなければ、顧問税理士にもたずねてみましょう。

要は、毎月、上記のような仕訳をしているのかどうか? です。

賞与をならす

社員に賞与を支払っている会社の多くは、支払った月に支払った金額を費用として経理処理しているものです。それはそれで正しい処理ではありますが、支払った月の費用が大きくなるのが問題です。

場合によっては、賞与を支払った月は大赤字… ということもありえます。すると、社長は毎月の利益を把握しづらくなりますし、銀行もまた、毎月の利益を把握しづらくなってしまうでしょう。

そこで、「賞与をならす」というのが、1つの解決策になります。具体例として、年間で 300万円(夏と冬に 150万円ずつ)の賞与を支給する会社の場合は次のとおりです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
賞与250,000賞与引当金250,000

毎月末に上記の仕訳をすることで、年間 300万円の賞与を毎月均等に計上することができます。そのうえで、実際に賞与を支払ったときの仕訳は次のとおりです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
賞与引当金1,500,000預金1,500,000

というわけで、毎期の始めには「年間の賞与支給額」を見積もり、12ヶ月で等分して、毎月「賞与をならす」ように仕訳をするとよいでしょう。

なお、見積額と実際の支払額とがズレた場合には、決算のときに以下の仕訳で修正します。年間 300万円支給するつもりが、実際は 290万円の支給だったというケースがこちらです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
賞与引当金100,000賞与100,000

ちなみに、年間 300万円支給するつもりが、実際は 310万円の支給だったというケースなら次のとおりです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
賞与100,000賞与引当金100,000

減価償却をならす

減価償却費を、決算のときにまとめて1年分計上している会社があります。

結論として、減価償却費は 12ヶ月で等分して毎月計上する、つまり「減価償却費をならす」ようにしましょう。そうしないと、毎月の利益は「過大」になってしまうからです。

すると、社長は毎月の利益を見誤ることになりますし、銀行もまた見誤ることになります。決算のときに、多額の減価償却費が計上されて大赤字になるようなことがあれば、銀行からは「アテにならない試算表をつくる会社」だと見られてしまうのも問題です。

では、「減価償却費をならす」ために必要な仕訳を確認してみましょう。具体例として、年間の減価償却費が 300万円の場合は次のとおりです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
減価償却費250,000減価償却累計額(※)250,000

直接法で減価償却をしている場合には、決算のときに「減価償却累計額(※)」を該当する固定資産の勘定科目(建物、器具備品など)に振り替えることになります。

というわけで、毎期の始めには「年間の減価償却費」を見積もり、12ヶ月で等分して、毎月「減価償却費をならす」ように仕訳をするとよいでしょう。

年間の減価償却費については、わからなければ顧問税理士にたずねれば教えてもらえます。また、減価償却費の経理処理を税理士に任せているときには、「12ヶ月で等分して毎月計上する」ようにお願いすることも検討しましょう。

その他の費用をならす

たとえば、年会費の支払いがある場合、その金額が大きなものであれば、支払った月だけがやけに利益が少なくなってしまう… ということもあるでしょう。

年会費のほかにも、年払いの保険料もあれば、中元・歳暮の時期には交際費の支払いが増える、という会社もあるはずです。そういった場合にはやはり、社長や銀行が毎月の利益を把握しづらくなってしまいます。

では、どうするか? もうおわかりのとおり、そういった費用をあらかじめ見積もり 12ヶ月で等分することです。具体例として、ある年会費を 60万円支払う場合、毎月の仕訳は次のとおりになります↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
諸会費50,000その他費用引当金(※)50,000

毎月末に上記の仕訳をすることで、年間 60万円の年会費を毎月均等に計上することができます。そのうえで、実際に年会費を支払ったときの仕訳は次のとおりです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
その他費用引当金(※)600,000諸会費600,000

「その他費用引当金(※)」は、任意の勘定科目でかまいません。決算のときには金額がゼロになる、暫定的な勘定科目なので(後述)。なお、支払いの時期によっては「その他費用引当金」の残高がマイナスになります。そのときには、「前払費用」の勘定科目に振り替えるのも1つの方法です。

なお、見積額と実際の支払額とがズレた場合には、決算のときに以下の仕訳で修正します。年間 60万円支払うつもりが、実際は 50万円の支払いだったというケースがこちらです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
その他費用引当金100,000諸会費100,000

いっぽうで、年間 60万円支払うつもりが、実際は 70万円の支払いだったというケースなら次のとおりです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
諸会費100,000その他費用引当金100,000

まとめ

毎月、試算表をつくりましょう。ただし、試算表をつくりさえすればよい、というわけではありません。試算表は「費用をならす」のがポイントです。その理由や仕訳の方法について、お話をしてきました。

社長が自社の業績を「正しく把握」するためにも、銀行からの融資を受けやすくするためにも、試算表では「費用をならす」ことを検討してみましょう。

試算表は「費用をならす」のが良い理由と仕訳の方法
  • 売上原価をならす
  • 賞与をならす
  • 減価償却をならす
  • その他の費用をならす
試算表は「費用をならす」のが良い理由と仕訳の方法

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