当初の資金使途とは違うことにおカネを使ってしまうのが、資金使途違反。これによるデメリットをまとめます。安易な資金使途違反の代償はあまりにも大きい… ようく覚えておきましょう。
会社は大きな代償を払わされる
銀行から融資を受けている社長であれば、いちどは聞いたことがあるであろう「資金使途違反」
そもそも「資金使途」とは、借りたおカネの使いみちであり、具体的には「設備資金(設備を買うためのおカネ)」や「運転資金(仕入代金や経費を支払うためのおカネ)」などがあります。
この点で、「当初の資金使途」とは違うことにおカネを使ってしまう行為が「資金使途違反」です。
たとえば、設備資金として借りたおカネを、運転資金に使ってしまう。ひどい場合には、社長個人に貸し付けたり、株や投資信託などを買ってしまったり…
銀行は、「会社が事業に使う設備を買う」というから貸したのであって、社長に貸したわけではなく、株式投資に使うおカネを貸したわけではありません。
当初の約束(資金使途)を破られた銀行は、「激怒」します。文字どおりの「激怒」であり、会社は「大きな代償」を払わされることを覚えておきましょう。
資金使途違反の大きな代償、いうなれば、恐ろしいデメリットは次のとおりです↓
- 一括返済を求められる
- その銀行から借入不可になる
- 保証付き融資も借入不可になる
くわしくは、このあと順番にお話をしていきます。安易に資金使途違反をすることがないように、恐ろしいデメリットの数々について理解しておきましょう。
資金使途違反の恐ろしいデメリット
一括返済を求められる
資金使途違反の恐ろしいデメリット、1つめは「一括返済を求められる」です。
たとえば、設備資金として 1,000万円を借りていた会社が、そのうち 300万円を別のことに使っていたことがバレたとします。すると、銀行は 1,000万円全額の一括返済を求める、ということです。
1,000万円のおカネは、すでに使ってしまっているのですから、一括返済がいかに恐ろしいことであるかは言うまでもないでしょう。場合によっては、倒産です。
さすがにそこまで追い込むのはマズいと、最終的には分割返済ということはありえますが、それでも資金繰りに与える影響は少なくないはずです。会社の経営・財務を痛めることになるでしょう。
しかし、資金使途違反がそんなにカンタンにバレるものかね? と、考える社長がいます。バレやしないとタカをくくっているのであれば、あらためることをおすすめします。
悪事はバレるものです。これはけして、道徳的なハナシではありません。銀行は、貸したおカネの動きを「追跡」しています。ゆえに、資金使途違反はバレるものだ、という理屈のハナシです。
ただし、バレるタイミングは、そのときどきで異なります。おカネを借りるタイミングで見抜かれることもあれば、長いと数年たってから見抜かれることもあります。
もしかしたら、身の回りに「借りたおカネを別のことに使ったけど、バレなかった」という社長がいるかもしれません。が、それは「いまは」バレていないだけだと言えます。
くれぐれも、安易に資金使途違反をしないように気をつけましょう。たったいちどの資金使途違反が、だいじな会社をつぶすことになるかもしれないからです。
その銀行から借入不可になる
資金使途違反がバレても、一括返済を免れることはある。分割返済で済むこともある、と前述しました。これを聞いて、「それならなんとかなるだろう」とおもわれたかもしれません。
ところが、銀行が「それだけ」で許すことはなく、さらに恐ろしいデメリットが待っています。「その銀行から借入不可になる」というデメリットです。
たとえば、A銀行から借入をした 1,000万円について、資金使途違反がバレた場合。その 1,000万円を返済するのはもちろんですが、加えて、その後はA銀行から融資が受けられなくなります。
なぜなら、A銀行からの信用を完全に失ったからです。いちど資金使途違反をするような会社は、また資金使途違反をするかもしれない。そんな会社に、銀行はおカネを貸すわけにはいきません。
銀行が貸し出すおカネの「原資」は、預金者からあずかった「だいじな預金」なのです。その預金が、資金使途違反に使われていたのでは、銀行は預金者に申し開きができません。
だから、資金使途違反をした融資先には遠慮をしない。徹底的に罪をつぐなわせる、というのが銀行の姿勢になります。そこに、情状酌量の余地はないものと考えておきましょう。
この点で、「おカネに色はないのだから、資金使途違反ではないことを主張できるのではないか」と考える社長がいます。たしかに、主張ができそうなケースもあるでしょう。
ですが、資金使途違反かどうかを「決めるのは銀行」です。銀行が「黒」だと言えば黒。グレーのものであっても、銀行が黒だと言えば黒なのです。これを忘れてはいけません。
「話せばわかってもらえる」などというのは都合のよい解釈であって、実際には、銀行に聞き入れてもらえることはないものと考えておきましょう。
保証付き融資も借入不可になる
さて、資金使途違反がバレると、「その銀行から借入不可になる」と前述しました。A銀行で資金使途違反がバレると、A銀行からは借りられなくなる、という話です。
だったら、B銀行やC銀行からは借りられるのか? 実は、借りられなくなるケースがあります。それは、A銀行からの借入が「信用保証協会の保証付き融資」だった場合です。
A銀行に加えて、信用保証協会もまた資金使途違反の事実を認識します。すると、その履歴が信用保証協会のなかに残るため、以降の保証付き融資が受けにくくなるのは間違いありません。
違反のていどによっては、以降は借入不可ということもありえます。少なくとも、資金使途違反の対象になった融資を完済するまでは、次の保証付き融資を受けることはできません。
信用保証協会で借入不可になるということは、B銀行やC銀行経由であっても、保証付き融資は借りられなくなるということです。
中小企業にとって、保証付き融資は「重要な資金調達手段」ですから、それを失えば死活問題にもなるでしょう。だったら、プロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)を受ければいい?
それは、違います。保証付き融資で資金使途違反をするような会社に、銀行がプロパー融資をするわけがありません。プロパー融資は銀行にとって、保証付き融資よりもリスクが高い融資だからです。
でも、A銀行の保証付き融資について資金使途違反をしたことが、B銀行やC銀行にバレるものなのか? プロパー融資を受けるのであれば、バレないのではないか? とおもわれたかもしれません。
ですが、B銀行やC銀行がプロパー融資の検討をするときには、保証付き融資もあわせて検討するものです。このとき、銀行が信用保証協会に「打診」をする段階で、資金使途違反の履歴を知ることは考えられます。
たったいちどの資金使途違反が、すべての銀行からの融資を受けられなくすることもある。資金使途違反の、恐ろしすぎるデメリットです。ゆめゆめ忘れないようにしましょう。
まとめ
当初の資金使途とは違うことにおカネを使ってしまうのが、資金使途違反です。これによるデメリットをまとめました。
安易な資金使途違反の代償はあまりにも大きい… ようく覚えておきましょう。また、資金使途違反をしてもバレやしない、とタカをくくるのもいけません。悪事はバレるものです。
- 一括返済を求められる
- その銀行から借入不可になる
- 保証付き融資も借入不可になる