融資が受けられればOKだと考えているのであれば危険です。保証付き融資ばかりになる可能性があり、保証付き融資ばかりの状況には問題があります。その問題とは…?
融資が受けられればOK、ではない。
社長が、「銀行から融資が受けられればOK」と考えるのは危険だと言えます。なぜなら、その融資が「保証付き融資」ばかりであれば問題があるからです。
ここで言う「保証付き融資」とは、信用保証協会の保証が付いた融資を指します。会社がもし返済できなくなった場合には、信用保証協会が代わりに返済をするため、銀行にとっては安心・安全な融資です。
ゆえに銀行は、「まずは保証付き融資、できれば保証付き融資」と考えています。社長が「融資が受けられればOK」の姿勢だと、銀行が保証付き融資ばかりを提案してくる…というのは当然です。
とはいえ、融資が受けられるのであれば別にいいじゃないか? と、おもわれるかもしれません。ところが、保証付き融資ばかりに問題があるのは前述したとおりです。
その問題とは、具体的には次のとおりになります↓
- 受けられる融資総額が減る
- プロパー融資を受けていない
- 日本政策金融公庫の融資を受けていない
これらの問題点について、くわしくはこのあとお話をしていきます。
保証付き融資ばかりの会社が抱える問題点
受けられる融資総額が減る
保証付き融資には、制度上の限度額があります。一般保証であれば、最大 8,000万円です。それも「最大」でしかなく、会社の規模・状況によって限度額はさらに下がります。
ひとつの目安として、年間売上高の3〜5割くらいが限度だと考えておきましょう。ですから、8,000万円満額の保証付き融資を受けるには、年間売上高が最低でも1億6,000万円くらいは必要だということになります。
ちなみに、保証付き融資は「民間金融機関」からの融資に適用されるものであり、前述した限度額は、自社が取引しているすべての民間金融機関の融資総額に対するものです。
つまり、自社が3つの民間金融機関と取引をしているとして、保証付き融資の限度額が 5,000万円であれば、3つの金融機関から受けられる融資は合計で 5,000万円まで、ということになります。
したがって、保証付き融資ばかりに頼っていると、いずれ受けられる融資総額は頭打ちとなり、資金調達ができなくなるのは問題です。
事業規模が大きくなればとくに、資金も必要になるでしょうから、保証付き融資だけでは足りない… ということにもなりかねません。
それから、もうひとつ。保証付き融資ばかりだと、銀行から「ほんとうの意味での支援」を受けにくくなってしまいます。
保証付き融資は銀行にとって、安心・安全な融資だと前述しました。言い換えると、銀行にとって保証付き融資は「リスクが無い(あるいは少ない)融資」です。
融資先の状況が悪くなって返済してもらえずとも、信用保証協会が返済してくれますから、融資先に対して「親身な対応」を取らずに済ますことが多くなります。
会社としては、状況が悪いときこそ支援を望むものですから、問題がある状況だと言えるでしょう。
プロパー融資を受けていない
保証付き融資ばかりの会社は、「保証付き融資以外の融資」を受けていないのが問題です。保証付き融資以外の融資とは? まずは、プロパー融資です。
プロパー融資とは、信用保証協会の保証がない融資。会社が返済できないときには、銀行が 100%損をこうむる融資です。よって、銀行がプロパー融資をするのは、返済可能性が高い会社に限られます。
会社にとって、プロパー融資は難易度が高い融資ではありますが、保証付き融資のように制度上の限度額はありません。銀行が「貸したい」と考えれば、理論上はいくらでも借りられます。
では、銀行が「貸したい」と考えるのはどんな会社に対してか? 言うまでもなく、業績が良い会社・資金繰りが良い会社です。逆に、業績が悪い会社・資金繰りが悪い会社は、なかなかプロパー融資を受けることができません。
ですから、社長は「業績が良いとき・資金繰りが良いとき」こそ、銀行からプロパー融資を受けられるように交渉しましょう。どうせ融資を受けるのであれば、状況が良いときに「あらかじめ融資を受けておく」のが、上手な銀行対応のセオリーです。
このとき気をつけたいのは、プロパー融資ばかりにならないこと。会社にとっては、すべてプロパー融資にしたいところですが、それでは銀行に「うまみ」がありません。
そこで、「少しは保証付き融資も受けながら、その代わりにプロパー融資もお願いする」という交渉のしかたになります。
言い換えると、プロパー融資をしてくれない銀行からは、保証付き融資を受けないということです。それでも受けてしまうと、保証付き融資の限度額をムダに消費することになってしまいます。
繰り返しになりますが、プロパー融資を受けられるのは「業績が良い会社・資金繰りが良い会社」です。業績が悪い・資金繰りが悪い状況で、プロパー融資の交渉をすることはできません。
日本政策金融公庫の融資を受けていない
保証付き融資ばかりの会社は、「保証付き融資以外の融資」を受けていないのが問題だと言いました。もうひとつ、受けていない融資があります。それは、日本政策金融公庫からの融資です。
日本政策金融公庫とは、政府が 100%出資する公的金融機関になります。民間金融機関の補完を役割として、民間金融機関が融資をしたがらない場面にも積極的なのが特徴です。
では、民間金融機関が融資をしたがらない場面とは、業績が悪いとき・資金繰りが悪いときです。そんなときでも、日本政策金融公庫は民間金融機関に比べると、柔軟に融資を検討してくれます。
ですから、いざというときに備えて、日本政策金融公庫からも融資を受けておき、関係づくりをしておくようにしましょう。いざとなってからでは、時間がかかって間に合わない… ということもありえます。
日本政策金融公庫から融資を受けられれば、民間金融機関からだけ融資を受けているよりも、融資総額を増やすことが可能です。
なお、日本政策金融公庫から融資を受けるときには、民間金融機関からの融資とのバランスに気をつけましょう。前述したとおり、日本政策金融公庫の役割は「民間金融機関の補完」ですから、民間金融機関の融資額を超えることを嫌います。
たとえば、民間金融機関からの融資が 1,000万円に対して、日本政策金融公庫からの融資が 1,000万円を超えてしまったらどうでしょう。日本政策金融公庫が、メインバンクのような状況になってしまいます。これでは、民間金融機関の「補完」とは言えません。
ですから、日本政策金融公庫からの融資額を増やしたいのであれば、まずは民間金融機関からの融資額を増やす必要があります。この順番に、気をつけるようにしましょう。
まとめ
融資が受けられればOKだと考えているのであれば危険です。保証付き融資ばかりになる可能性があり、保証付き融資ばかりの状況には問題があります。
その問題とは…? についてお話をしてきました。銀行融資は受けられるかどうかだけではなく、その「受け方」も重要であることを理解しておきましょう。
- 受けられる融資総額が減る
- プロパー融資を受けていない
- 日本政策金融公庫の融資を受けていない