銀行融資は中小企業の資金調達における生命線である以上、中小企業が銀行から嫌われるのは避けたいものです。というわけで、中小企業の株式投資が銀行に嫌われる理由を押さえておきましょう。
銀行融資は中小企業の生命線。
中小企業にとって、銀行融資は「資金調達」の生命線と言ってよいでしょう。ではもし、銀行から嫌われてしまったら… それは、生命線を断たれることを意味します。
なので、中小企業は銀行から嫌われないように気をつける必要があるわけです。具体的な例として、「株式投資」が挙げられます。
つまり、会社のおカネで株や投資信託を買っていると、銀行から嫌われることがあるのです。その理由は、次のとおりになります↓
- 本業ではない
- 損をしたら困る
- 社長のおカネではない
このあと、くわしく確認していきましょう。
中小企業の株式投資が銀行に嫌われる理由
本業ではない
銀行は、中小企業が「会社のおカネ」を株式投資に使うことを好ましくおもっていません。その理由の1つが、株式投資は「本業」ではないからです(投資業の会社を除いて)。
したがって、「会社のおカネは本業に使うべし」というのが銀行の考え方になります。そのおカネが、銀行が貸したものであればなおのことです。
銀行は、事業の将来のためにおカネを貸すのであって、当たるも八卦当たらぬも八卦の投資のためにおカネを貸すのではありません。
投資で損をしたので返済できません… となれば、銀行は預金者に申し開きができなくなってしまいます。融資の原資は、預金者からあずかったおカネなのです。
ちなみに、事業継続の必要性から、取引先の株式を購入するのは本業に関連した投資として、銀行から嫌われるものではありません。ただし、その旨をきちんと説明するようにしましょう。
損をしたら困る
株式投資は、当たるも八卦当たらぬも八卦だと言いました。そういう意味では、「当たればいいじゃないか」と考える社長もいるでしょう。たしかに、当たれば会社のおカネも増えますし。
ですが、損をしたらどうするのか? 銀行の考え方は、常に「保守的」であり「堅実」だと言えます。やはり、融資の原資が、預金者からあずかった大事なおカネであり、損は困るのです。
また、本業でがんばって利益をあげても、株式投資で損失を増やしていたのでは、なんのための会社かわからなくなってしまいます。
そんな会社に融資をすれば、また株式投資におカネを使って、損失を増やし、おカネを失くしてしまうかもしれない… だったら融資はできないぞ、と銀行が考えるのは当然です。
当たればいい、という考え方が銀行には通用しないことを覚えておきましょう。
社長のおカネではない
そもそも、株式投資に使われたおカネは誰のおカネですか? 会社のおカネです。にもかかわらず、「社長ひとりの一存」で、そのおカネが株式投資に使われているとしたらどうでしょう。
公私混同だ、と言えますよね。銀行もそう考えます。もはや横領と変わらない、という声さえ聞くところです。穏やかではありませんが、たしかにそういった一面もあるでしょう。
会社のおカネは、あくまで会社のもの。社長のおカネではありません。会社のサイフと社長のサイフとは区別されてしかるべき。銀行が、よく見ている部分でもあります。
したがって、社内に「投資の専門部署」でもあれば別ですが、「社長ひとりの一存」で決められるような株式投資については、銀行から嫌われるものと考えておきましょう。
「借りたおカネで投資」と見られないための注意点
ここまで、中小企業の株式投資が銀行に嫌われる理由についてお話をしてきました。とはいえ、中小企業が絶対に株式投資をしてはいけないわけではありません。
端的に言えば、銀行から借りたおカネではなく「自己資金」であれば、それほど目くじらを立てるものでもない、という見方もあります。
逆に、銀行から借りたおカネで株式投資となると問題です。というわけで、「借りたおカネで投資」と見られないための注意点についても確認をしておきましょう。
赤字のとき
業績が悪く、赤字になる・赤字が続くと、貸借対照表の「純資産」の金額がマイナスになることがあります。いわゆる「債務超過」の状態です。
債務超過とは、自己資金が無い(マイナス)、つまり、負債によって成り立っていることを意味します。にもかかわらず、株式投資をしていれば「借りたおカネで投資」となるので問題です。
いっぽうで、自己資金(純資産)がじゅうぶんにあれば、借りたおカネではなく、自己資金の範囲内で投資をしているのだからいいじゃないか、とも言えます。
ですから、株式投資は「赤字のとき」ほど問題にされやすいことを理解しておきましょう。
借りた直後
では、自己資金がじゅうぶんにあれば、株式投資をしてもまったく問題がないか? といえば、実はそうでもありません。問題になるのは、銀行から借入をした直後に投資をした場合です。
おカネに色はないわけですが、それでも、借入をした直後に株式投資をしていたとなると「借りたおカネで投資」と見られることはあるでしょう。
いやいや違うんだ、と銀行に弁明をすることは可能です。が、「借りたおカネで投資」かどうかを決めるのは銀行であり、会社ではありません。
銀行が「借りたおカネで投資」だと考えれば、いくら弁明をしようと、どうしようもないことはあります。なので、株式投資をする「タイミング」に注意が必要です。
銀行からの提案
銀行から見て、中小企業の株式投資は基本的に好ましいものではありません。という話は前述しました。ところが実際には、銀行のほうから「投資商品」を提案してくることもあります。
銀行も「利息収入」だけでは商売が厳しいので、投資商品を売って「手数料収入」を稼ごうと考えているのです。
では、銀行が言うのだから株式投資をしてもOKか、と言うと… これが、そうでもありません。
投資商品を提案してきたのがA銀行だとすれば、A銀行は状況を承知しています。ところが、B銀行には、その状況がわかりません。よって、「この会社は株式投資なんかして…」と見られてしまう可能性があります。
それならB銀行にも説明をすればいい、とおもわれるかもですが。B銀行は「A銀行の提案ばかり受けてズルい! それならウチからも投資商品を買ってほしい」となるでしょう。
B銀行からも買えば、こんどはC銀行が… キリがありません。よって、銀行からの提案で株式投資をするのはおすすめができず、注意したほうがよいものと考えます。
まとめ
銀行融資は中小企業の資金調達における生命線である以上、中小企業が銀行から嫌われるのは避けたいものです。中小企業の株式投資が銀行に嫌われる理由を押さえておきましょう。
株式投資を絶対にしてはいけないわけではありませんが、少なくとも「借りたおカネで投資」と見られないように注意が必要です。
- 本業ではない
- 損をしたら困る
- 社長のおカネではない