中小企業の銀行融資について。一見すると合理的な対応が、実は、融資を受けにくくしている… ということがあります。社長自身はそれに気がついていないために、注意が必要です。
じぶん自身、気がついていないのが問題。
中小企業における銀行対応には、気をつけるべきことがいろいろありますが。なかでも気をつけたいのは、「一見すると合理的な対応」です。
つまり、合理的な対応に見えるのだけれど、実は、銀行融資を受けにくくしていることがあります。対応している会社自身、社長自身はそれに気がついていないのが問題です。
では、具体的にどのようなケースがあるのか? 次のとおりです↓
- ネット専用銀行を利用する
- 売上入金はメガバンク
- 借入金を減らす
- 金利が低い銀行で借りる
- 担当者が気にくわないから完済する
これらに当てはまるものがないか、セルフチェエクしてみましょう。このあと順番に、くわしく解説していきます。
合理的な対応が銀行融資を受けにくくしている事例
ネット専用銀行を利用する
ネットバンクを利用する会社が増えている、というアンケート結果があります。ネット専用銀行(リアル店舗を持たない銀行)を「メインバンク」にする会社も増えているようです。
その理由の1つとして、「手数料の安さ」が挙げられます。ネット専用銀行は、そのビジネスモデルゆえに、手数料が無料であったり、従来の銀行の手数料に比べて低料金であったり。
振込取引が多い会社であれば、従来の銀行からネット専用銀行に切り替えることで、大きな額の手数料を減らすことができる、ということもあるでしょう。極めて合理的な行動です。
が、銀行融資を考えるのであれば、気をつけなければいけません。従来の銀行にとって、手数料収入は貴重な収入源だからです。いまはまだ低金利でもありますから、なおさらだと言えます。
ですから、あまり手数料収入がなくなるようだと、銀行は融資に対して消極的になることを覚えておきましょう。手数料収入が、銀行が融資をする動機になっていることもあるわけです。
手数料を節約したい気持ちはわかりますが、従来の銀行からの融資を考えるのであれば、非合理なようでも「あえて手数料を支払う」ことが、選択肢の1つになります。
売上入金はメガバンク
売上先からの入金を、メガバンクにしている会社があります。そのほうが、売上先からの信用が上がると考えている社長がいるようです。たしかに、それもゼロではないでしょう。
ですが、代わりに銀行融資のチャンスを失っていることは、覚えておかなければいけません。銀行は、自行の口座に預金があるほど融資がしやすくなります。担保のようなものだからです。
では、メガバンクが中小企業に融資をしてくれるか? といえば。地方銀行や信用金庫・信用組合に比べれば可能性は下がります。とくに、プロパー融資の可能性は小さなものです。メガバンクは、そもそも大企業向けの銀行ですからしかたありません。
いっぽうで、地方銀行や信用金庫・信用組合であれば、預金を「交渉材料」にして、融資を引き出しやすくなります。プロパー融資しかりです。
ちなみに、売上入金による効果は、口座の残高が増えるだけではありません。銀行からすれば、売上の「ようす(相手先・金額)」がわかるようになる分、融資審査がしやすくなります。
売上入金をどの銀行にするのがよいか、あらためて検討してみましょう。
借入金を減らす
借入金を減らせば良い決算書になる、という考え方があります。たしかに、「教科書的」にはそのとおりでしょう。ですが、「銀行融資的」にはそうでもありません。
とくに、預金を減らしてまで借入金を減らすという対応は、その後の銀行融資を受けにくくしてしまいます。なぜなら、預金が少ないほど、銀行は回収不能を心配するからです。
そういう意味では、少々借入が多くても、預金が多いほうが銀行融資は受けやすくなります。無借金で預金 100万円の会社よりも、借金 1,000万円でも預金 1,100万円の会社のほうが、銀行からは好まれるということです。
事実、その借金が銀行借入であれば、1,000万円の借入ができるだけの「信用」があるということでもありますから、あながちおかしなハナシでもないでしょう。
だとすれば、借入を減らすとは、預金を減らすとともに、自社の信用を減らす行為でもあるわけです。
さらに言えば、銀行借入を減らすと、銀行は利息収入も減ることになります。よって、繰り上げ返済は、銀行にとって好ましい対応ではないことも、あわせて覚えておきましょう。
金利が低い銀行で借りる
銀行借入をするときには、複数の銀行で「相見積もり」をして、そのときどきで一番金利が低い銀行から借りるようにしている。という社長がいます。一見すると、合理的です。
が、これにより、銀行ごとの融資残高の変動が大きくなると、「メインバンク不在」という大きな問題が起きることになります。
基本的には、自社の取引銀行のうち最も融資残高が多い銀行が「メインバンク」です。しかし、一番低い金利を求めた結果、融資残高の変動が大きくなると、メインバンクがたびたび入れ替わることになります。
となると、銀行側は落ち着きませんから、たとえ融資残高が一番になっても、自行がメインバンクだとは考えないようになるものです。
というわけで、低金利を求めるのもほどほどにしておくのがよいでしょう。メインバンクがなくなってしまうと、業績悪化時には積極的に支援してくれる銀行がなくなってしまいます。
金利は、将来の融資に対する保険であり、銀行との関係を維持するための必要コストだという考え方も大切です。
担当者が気にくわないから完済する
銀行担当者もいろいろです。社長とは気が合わないこともあれば、担当者の資質・能力に問題があるというケースもあるでしょう。いずれにせよ、担当者が気にくわない。
なのでもう、その銀行の融資は完済してしまおう。というのも、1つの考え方ではありますが、あまり得策とも言えません。ご存知のとおり、担当者には定期的な異動があります。
異動があれば、担当者は変わるのですから、次は良い担当者かもしれません。ところが、いちど完済してしまえば、その銀行との関係性は切れてしまいます。
銀行との関係を築くのもカンタンではないのですから、ちょっとのことで関係を切るのはやめたほうがよいでしょう。いまは再編(提携・統合・合併)によって、銀行の数も減っていますからなおさらです。
いまの担当者が気にくわないのであれば、距離を置いてお付き合いをするということで充分でしょう。約束どおりに返済を続けておけばよく、完済までする必要はありません。
まとめ
中小企業の銀行融資について。一見すると合理的な対応が、実は、融資を受けにくくしている… ということがあります。社長自身はそれに気がついていないために、注意しなければいけません。
本記事で挙げた事例に当てはまるものがないか、セルフチェエクしておきましょう。
- ネット専用銀行を利用する
- 売上入金はメガバンク
- 借入金を減らす
- 金利が低い銀行で借りる
- 担当者が気にくわないから完済する