経営者保証不要の創業融資「スタートアップ創出促進保証制度」のポイント

経営者保証不要の創業融資「スタートアップ創出促進保証制度」のポイント

2023年3月15日から、経営者保証不要の創業融資「スタートアップ創出促進保証制度」がはじまります。ということで、本制度を利用するにあたってのポイントをまとめました。

目次

あたらしい制度が始まるよ。

きょうは、2023年3月14日。あすからは、「スタートアップ創出促進保証制度」がはじまります。本制度をひとことで言うのであれば、「経営者保証不要の創業融資」です。

そのあたり、詳しくは後述するとして。まずは、制度概要を確認しておきましょう↓

スタートアップ創出促進保証制度の概要
  • 対象者 … 創業後5年未満の法人ほか
  • 保証限度額 … 3,500万円
  • 保証期間 … 10年以内
  • 据置期間 … 1年以内(一定条件を満たせば3年以内)
  • 金利 … 金融機関所定
  • 保証料率 … 創業関連保証料率に 0.2%上乗せ
  • 担保・保証人 … 不要
  • 利用要件 … 創業計画書の提出、創業資金総額の10分の1以上の自己資金など

これを見てわかるとおり、本制度は「信用保証協会の保証付き融資」です。その点もふまえて、このあと、本制度を利用するにあたってのポイントを確認してきましょう。

具体的には、次のとおりです↓

スタートアップ創出促進保証制度のポイント
  • 経営者保証不要はトレンド
  • 創業融資の選択肢を増やせる
  • 自己資金の準備は欠かせない
  • 協調融資は難しいかもしれない

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

スタートアップ創出促進保証制度のポイント

経営者保証不要はトレンド

2023年4月以降、銀行には「経営者保証の説明義務」が課せられます。経営者保証を付けるにあたって、銀行は社長に「説明をしなければいけない」わけです。

これは、金融庁が経営者保証無しの融資を促すものであり、いま現在でもすでに、少しずつではありますが、経営者保証無しの融資の割合は増加しています。

加えて、スタートアップ創出促進保証制度です。本制度は、前述したとおり「経営者保証不要の融資」であり、もはや「経営者保証不要」はトレンドだと言ってよいでしょう。

だとすれば、乗らない手はありません。とくに創業はリスクが大きなものです。経営者保証付きの融資となれば、創業に失敗した場合、会社の借金を社長個人が背負うことになります。

いっぽうで、経営者保証無しの融資であれば、社長個人にまで借金が及ぶことはありません。

ですから、トレンドを理解して、創業時にはできるだけ「経営者保証無しの融資」を受けるのがよいでしょう。ここで経営者保証有りを選ぶと、以降の融資についても影響を受ける可能性があります。

つまり、「いまの融資が経営者保証有りなのだから、こんどの融資も経営者保証有りで」と、銀行が考えるかもしれないということです。

創業融資の選択肢を増やせる

中小企業の創業融資といえば、公的金融機関である「日本政策金融公庫」の新創業融資制度があります。この制度は従来から、「原則、保証人不要」というメリットがありました。

ただし、社長の任意で「経営者保証を付けることもできる(利率が 0.1%下がる)」ことから、選択の自由があります。結果として、経営者保証を付けない場合には、融資審査が厳しくなるのも事実です。

つまり、経営者保証を付けたほうが融資を受けやすいし、付けない場合に比べて、より多い額の融資を受けられる可能性が高まる。ということは、覚えておいたほうがよいでしょう。

これに対して、スタートアップ創出促進保証制度は「経営者保証無し」が大前提、との違いがあります。同じ経営者保証不要でも、どちらを選ぶか? という選択肢が増えるわけです。

それはそれとして、日本政策金融公庫の新創業融資制度にも融資限度額があります。具体的には、「3,000万円(うち運転資金 1,500万円)」です。

だとすれば、日本政策金融公庫の新創業融資制度に加えて、スタートアップ創出促進保証制度も利用することで、創業時の融資額を増やせる可能性があります。この点でも、選択肢が増えたと言ってよいでしょう。

自己資金の準備は欠かせない

冒頭、スタートアップ創出促進保証制度の概要を掲載しました。そのうち利用要件として、「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」は、1つのポイントになります。

これを見て、「自己資金の9倍まで借りられるのか」と考えるのは尚早です。実際にそこまで借りられるのは、レアケースだとおもわれます。

なぜなら、日本政策金融公庫の新創業融資制度もまた同じ要件ですが、自己資金の9倍まで借りられるのはかなりのレアケースだからです。一般的には、自己資金の2〜4倍くらいになります。

したがって、スタートアップ創出促進保証制度においても、同じように考えておくのがよいでしょう。融資を受けられる可能性を高くしたい、より多くの額を借りたいのであれば、やはり自己資金をできるだけ多く用意することです。

この点、自己資金はないけど、なんとか融資を受けたい! という人が散見されます。正直、準備不足と言わざるをえません。自己資金が貯まるまで創業の時期を見直すか、ビジネスモデルを見直す(創業資金が少なくて済むように)ことをおすすめします。

協調融資は難しいかもしれない

スタートアップ創出促進保証制度の「据置期間」について。基本は1年以内ですが、一定の要件を満たすことで「3年以内」とされています。

一定の要件とは、スタートアップ創出促進保証制度の融資と同時に、民間金融機関から「プロパー融資」を受けるか、あるいはすで「プロパー融資」を受けているか。いわゆる「協調融資」です。

プロパー融資とは、信用保証協会の保証が無い融資を言います。これに対して、スタートアップ創出促進保証制度は、信用保証協会の保証が付いた融資です。

信用保証協会の保証が付いていれば、会社が返済できなくなったとしても、銀行は信用保証協会から返済をしてもらうことができます。なので、銀行のリスクが無い(あるいは小さい)。

いっぽうで、プロパー融資は信用保証協会の保証が無いのですから、会社が返済できなくなったら、銀行が 100%損をこうむることになります。

それでもなお、民間金融機関がプロパー融資をするのだとしたら、「それだけ融資先を評価・信用しているから」ということになるでしょう。だったら、信用保証協会も信用して、据置期間を3年まで延ばしてもOK、といった考え方です。

とはいえ、この場合のプロパー融資は「経営者保証無し」が前提になります。創業時のリスクが高い会社に、民間金融機関がリスクを負ってまで経営者保証無しで融資をするものかどうか…

プロパー融資は受けられたとしても、経営者保証有りの場合、それを見た信用保証協会は「だったらウチだって経営者保証無しはやりにくい」ということにもなるのではないかと推測します。

よって実際には、協調融資は難しいかもしれません。

まとめ

2023年3月15日から、経営者保証不要の創業融資「スタートアップ創出促進保証制度」がはじまります。ということで、本制度を利用するにあたってのポイントをまとめました。

創業時には積極的に利用したい制度ではありますが、前述したとおり注意点もありますので、そのあたりに気をつけつつ、うまく利用していきましょう。

創業を成功させるコツの1つは、「できる限りの資金調達をしておく」ことにあります。資金があれば、創業〜軌道にのるまでの苦しい時期を乗り越えられる可能性が高まるものです。

    スタートアップ創出促進保証制度のポイント
    • 経営者保証不要はトレンド
    • 創業融資の選択肢を増やせる
    • 自己資金の準備は欠かせない
    • 協調融資は難しいかもしれない
経営者保証不要の創業融資「スタートアップ創出促進保証制度」のポイント

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