金融庁の意向もあって、今後は、銀行による融資先数の絞り込みが加速する可能性があります。これに対して、社長がすべきことをまとめてみました。放っておくと、融資が受けにくくなるので注意です。
だって、金融庁がそう言うのだから。
銀行融資における最近の話題として(きょうは2023年3月23日)、社長であれば押さえておきたいことの1つが「融資先数の絞り込み」です。
つまり、銀行が融資先の数を減らしていくことが考えられ、結果として、会社は融資が受けにくくなるかもしれません。少し補足をすると…
以前に比べて、1つの会社が融資を受けている銀行の数が増えている、という統計があります。
この点で、金融庁が懸念しはじめたのが、銀行員1人あたりの「負担増加(それを原因とした退職)」と、それにともなう銀行による融資先支援の「質の低下」です。
ここで言う「質の低下」とは、決算書の「表面的な数字」に頼った融資審査であり、融資先の事業の内容や課題、取り組みなどにまでは目が行き届かない状態だと言えます。
結果として、融資先の将来性を見据えた支援ができなくなることから、融資先の成長が滞り、ひいては銀行自身の成長も滞る… そこで金融庁は、銀行に対して「融資先数の絞り込み」という考え方を提示するにいたりました。
金融庁が言っている以上、銀行は何かしらの対応をせざるをえないものです。いますぐはムリだとしても、中長期的には融資先の数を絞り込んでいくことが考えられます。だとすれば、会社側は絞り込まれるものとして準備しておく必要があるでしょう。
でも、いったい、どのような準備をしたらよいのか? おもなところでは次のとおりです↓
- 定期的に試算表を提示・説明する
- 経営計画書の作成・運用を共にする
- 預金残高・預金取引を増やす
くわしくはこのあと、順番に確認していきましょう。
融資先数を絞り込む銀行に対して社長がすべきこと
定期的に試算表を提示・説明する
銀行がほしい情報を、積極的に提供することが大切です。すると、銀行としては手間が省けますから、関係性を維持しやすくなります。
いっぽうで、銀行がほしい情報を、会社が提供できないと。情報を得るために、銀行は「手間」をかけねばなりません。すると、後回しになったり、関係性が切れやすくなってしまいます。
では、銀行がほしい情報とは何なのか? まずは、「試算表」です。試算表とは「最新の業績」であり、銀行担当者であれば、継続的に把握しておきたいと考えています。
おすすめは、3ヶ月にいちど、試算表の提示・説明をすることです。このとき、社長のほうから銀行に出向くのもよいでしょう。忙しい担当者としては助かる、ということもあるはずです。
銀行に来てもらうのであれば、ただ試算表の提示・説明をするだけではなく、社内(工場・倉庫・店舗などがあれば、それらも)を見学してもらったり、商品・サービスを体験してもらったりすると、銀行にとってはより有意義な情報になります。
銀行担当者は、融資先の「商売(だれに・なにを・どのように売るか)」がわからなければ、稟議書をうまく書くことができず、結果、稟議が通らない(融資ができない)… と、なりがちです。
社長は、銀行担当者が稟議書を書くのに必要な情報を、いかにして提供できるかを考えましょう。多くの社長ができていないところだけに、差をつけることができます。
定期的な試算表の提示・説明は、その「きっかけ」となるものです。ある意味では「試算表の提示・説明」を口実にして、銀行との定期的な接点をつくり、その接点において「銀行が有意義だと感じられる情報」を提供し続けることが大切になります。
それができれば、銀行のほうから積極的に接点を持とうとしてくれるはずであり、関係性を切られるようなこともなくなるはずです。
経営計画書の作成・運用を共にする
端的に言えば、「経営計画書をつくりましょう」ということなのですが、経営計画書自体が本質ではありません。本質は、「銀行との課題共有」にあります。
どんな会社にも、なにかしらの「課題」はあるものです。その課題を解決することで、事業を成長させることができます。すると、資金ニーズも発生するので、銀行は融資をすることで銀行もまた成長できる余地があるわけです。
そこで、金融庁は銀行に対して「本業支援」を求めています。ただ融資をするだけではなく、融資先の本業を支援しましょう、ということです。
具体的には、ビジネスマッチングのほか、財務改善などの各種コンサルが考えられます。ただ、そういった本業支援をするにも、融資先の課題がわからなければ銀行も取り組むことができません。
というわけで、やはり、会社の側から積極的に情報を提供することが大切になります。とはいえ、どのように提供すればよいかわからない… のであれば、経営計画書から始めるのがおすすめです。
経営計画書をつくるにあたっては、「現状把握・分析→課題の特定→経営戦略の策定」という過程があります。したがって、銀行と「経営計画書の作成」を共にすることで、銀行は融資先の課題を把握することが可能です。
といっても、銀行も忙しいのですから、最初から最後までいっしょに作りましょう、とはいきません。カタチとしては、まず会社のほうで作成してみて、それを銀行に提示・説明しつつ、銀行にアドバイスを求める、というのがよいでしょう。
そのうえで、会社は「計画の運用(進捗管理)」を続けるわけですが、その状況も、定期的・継続的に(タイミングは試算表の提示・説明といっしょで)、銀行に伝えるようにします。
すると、銀行もまた、当初の課題に対する取り組み状況や、解決状況を把握できるのがメリットです。状況に応じて、前述した本業支援をしやすくもなります。
逆に、経営計画書もなく、本業支援に必要な情報が伝わらなければ、銀行は本業支援ができません。となると、銀行の成長も望めませんから、銀行が離れていく原因にもなるでしょう。
預金残高・預金取引を増やす
言うまでもないですが、銀行も「利益」を出さなくてはなりません。ですから、利益を出せる会社とお付き合いをしたいと考えています。では、銀行が利益を出せる会社とは?
1つは、融資です。たくさん融資ができれば、利息収入をえられるので利益が出ます。しかし、融資できる額も限られていますし、いまはまだ低金利ですから、利息収入は限られるものです。
なので、「手数料収入がほしい」と銀行は考えています。手数料収入にもいろいろありますが、まずは、預金取引から発生する振込手数料です。
売上入金や、給与やその他経費の振込取引があれば、その銀行は振込手数料をえることができます。だから、銀行は「預金取引は、できるだけ自行の口座でしてほしい」のです。
そこで、社長は「お付き合いを続けたい銀行」の口座に、預金取引を集中させることを検討しましょう。預金取引が集まれば、その銀行が支援をする動機にもなります。手数料収入も多いのだから手間をかけてもいい、と考えられるようになります。
また、預金取引が増えると、おのずと預金残高も多くなるものです。預金残高が多いと、その銀行にとっては担保のようなものですから、融資をしやすくなります。
融資取引が増えれば、銀行との関係性を維持しやすくもなりますので、預金取引を増やすことが、銀行との関係性を深めるきっかけになるわけです。
この点で、融資を受けてもいない銀行・融資を受けるつもりもない銀行に、多くの預金をあずけている会社が散見されます。それを見た「融資をしている銀行」が、離れていく原因にもなるものですから、くれぐれも気をつけましょう。
まとめ
金融庁の意向もあって、今後は、銀行による融資先数の絞り込みが加速する可能性があります。これに対して、社長がすべきことをまとめてみました。
これらを放っておくと、融資が受けにくくなるので要注意です。少しずつでもかわまないので、できることから、確実に進めていきましょう。銀行融資の受けやすさにつながります。
- 定期的に試算表を提示・説明する
- 経営計画書の作成・運用を共にする
- 預金残高・預金取引を増やす