税理士がお客さまの銀行融資に関わることについては、昔から賛否ありますが。この点で、お客さまの銀行融資について税理士の関わり方が悪い3つのパターンを解説です。
賛否というより、関わり方の問題だとおもう。
かれこれ5年くらいのあいだ、銀行融資専門税理士という立ち位置で、お客さまの銀行融資に関わっています。この点、税理士が銀行融資に関わることについては、昔から賛否両論ありまして。
つまり、「税理士が銀行融資に関わるのは良いことだ、お客さまのためになるんだ」という意見もあれば、「税理士が銀行融資に関わる必要はない、お客さまのためにはならない」という意見もある。そういうことです。
ただ、わたし自身は「賛否」というよりは、あくまで「関わり方」の問題だろうと考えています。言い換えると、「良い関わり方もあれば、良くない関わり方もある」と、そんな感じでしょうか。
というわけで、本記事では、良くないほうの関わり方に注目をしてみます。具体的には、大きく3つに分かれるものとして次のとおりです↓
- ブン投げる
- まったくの無関与
- 関与しすぎ
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
お客さまの銀行融資について税理士の関わり方が悪い3つのパターン
ブン投げる
お客さまから銀行融資の相談(=融資を受けたい)という相談を受けたときに、そのまんま、どこかの銀行にハナシをブン投げる税理士がいます。
要は、その税理士が懇意にしている銀行に、ただただお客さまを紹介する。「あとはよろしく〜」という感じで、紹介だけをする。このような状況を「ブン投げる」と定義することにします。
では、ブン投げるとどうなるか? お客さまの状況によっては、銀行は「ありがた迷惑」となることがあります。そのお客さまの「業績(=決算書の内容)」が悪すぎるようなケースです。
いくら懇意にしている税理士だったとしても、銀行が融資審査を甘くすることはできません。にもかかわらず、業績が悪すぎる会社を紹介されるのでは、銀行も困惑をするばかりです。
実際に、銀行員の方からも「そういう紹介(ブン投げ)は困ってしまう」というハナシを聞いたことがあります。また、同じようなケースが続くと、その税理士に対する銀行の見方も変わるそうです。銀行に対する理解がない税理士として、お付き合いを避けようとする… みたいな。
なので、税理士がお客さまを銀行に紹介するのであれば、融資が受けられそうな状況かどうかを確認すること、また、融資が受けやすくなるように情報整理をする、銀行に対して補足説明をするなどの関わり方がだいじだと考えます。
そういったことができずに、ブン投げるだけなのであれば、税理士としての関わり方が悪いといえるのではないか、というのが私見です。
まったくの無関与
税理士の銀行融資に対する「姿勢」として、まったくの無関与というパターンもあります。銀行融資支援は、そもそも顧問契約の業務範囲外として、会社自身で対応すべきという姿勢です。
もちろん、それはそれで「1つの姿勢」ですから、非難されるべきものではないでしょう。なので、もし社長が、その姿勢に不満なのであれば、「別の税理士を探しましょう」ということになります。
つまり、税理士に銀行融資支援を求めるのであれば、銀行融資支援をしてくれる税理士に、仕事を依頼する、ということです。
では、税理士に銀行融資支援を求めない(銀行融資対応は自社でやる)のであれば、万事OKかといえば、必ずしもそうとは言い切れません。
たとえば、決算書や試算表。同じ会社であっても、経理処理や表示のしかたによっては、利益その他の金額が変わることがあります。結果として、融資の受けやすさに影響することはあるものです。
税理士が銀行融資にまったくの無関与である場合、社長が知らないところで、融資が受けにくくなっているケースがゼロではありません。
したがって、税理士が直接的な銀行融資支援をしないのはよいにしても、銀行融資のことを考えた経理処理や表示のしかたをしてくれる税理士なのかどうかは、確認をしておいたほうがよいでしょう。
いやいや、税理士なのだから、そんなことはわかっているだろう。そう、おもわれるかもしれませんが。わたし自身、税理士になりたてのころはわかっていませんでした。
そういう税理士がわたしだけであればよいのですが、そうとも言い切れないので、社長には気をつけていただきたいとおもっています。
関与しすぎ
いましがた、「まったくの無関与」というパターンをお話しました。逆に、税理士が「関与しすぎ」のパターンもあります。関与しすぎて、お客さまの銀行融資に悪影響が及んでいる…
たとえば、銀行との面談に、税理士が同席をするケース。同席をすること自体は問題ありませんが、社長よりも税理士が「前面」に出て、話をしているのはどうでしょう?
銀行からすれば、「社長の話を聞きたい」のであり、「この会社は誰の会社なのか(社長の会社であり、税理士の会社ではないはず)」と困惑することになります。
なので、税理士が同席をするときには、社長との「役割分担」を決めておきましょう。会社の「方向性や取り組み」などに関することは社長が、「細かい数字の内容や、税務・会計面で専門的な説明」などについては税理士が、といった具合です。
役割分担ができていれば、税理士の同席が、銀行に対して「安心・信頼」を与える効果があるでしょう。
また、銀行融資・銀行対応に必要な行動を、税理士が代理しすぎるのも、長期的に見ればよくありません。たとえば、資金繰り表の作成を、税理士がし続けるケースです。
社長が、資金繰り表の作成ができないので税理士が代理している場合、社長はいつまでたっても資金繰り表が作成できないことになります。銀行に対する説明に苦慮することもあるでしょう。
もちろん、はじめのうちは社長ができないことを税理士が代理するのはよいにしても、少しずつ時間をかけてでも、社長自身も理解する・できるようになるのがベストです。
そう考えると、税理士が関与しすぎるのも問題があるといえます。代理については「おわり」を決めて、そこまでの「スケジュール」を社長と税理士とで共有できるとよいのではないでしょうか。
まとめ
税理士がお客さまの銀行融資に関わることについては、昔から賛否ありますが。この点で、お客さまの銀行融資について税理士の関わり方が悪い3つのパターンを解説してみました。
社長が税理士に銀行融資支援を求めるとき、あるいは、税理士がお客さまの銀行融資支援を検討するときに、本記事の内容が参考になるようでしたら幸いです。
- ブン投げる
- まったくの無関与
- 関与しすぎ