銀行融資を受けるなら、申し込むタイミングが大切です。遅ければ、融資が受けにくくなってしまう… というわけで、銀行融資を申し込むギリギリのタイミングについてお話ししていきます。
わかっていても、できていないことはある。
会社が銀行から融資を受けるときには、「タイミング」が大切になります。融資を受けやすいタイミングがあり、逆に、融資を受けにくいタイミングがあるからです。
この点で、融資を受けにくいタイミングは避けたいものでしょう。つまり、融資を申し込むのが遅すぎるようなことは避けたい。というわけで、本記事では「銀行融資を申し込むギリギリのタイミング」についてお話をしていきます。
おもなタイミングは3つ、キーワードは「〇〇前」です。具体的には、次のとおりになります↓
- 赤字になる前
- 債務超過になる前
- おカネがなくなる前
これらを見て、「まぁ、そうだろうね」とおもわれるかもしれませんが。実際には、わかっていてもできていないことはあるものです。このあと、あらためて確認していきましょう。
銀行融資を申し込むギリギリのタイミングは〇〇前
赤字になる前
赤字、つまり、利益がマイナスになると銀行融資は受けにくくなります。なぜなら、銀行は「利益=返済原資」と見ているからです。
ということは、多くの社長が知っているので「決算書は黒字」が大事であることも知っています。ここで1つ、意外と見落としがちなポイントがあります。それは、次の決算が「赤字になる前」に融資を申し込むことです。
たとえば、前期の決算は黒字でした。ところが今期は、このままいくと赤字になりそうだ… と、わかったのであれば、今期の決算がおわる前に融資の申込みをしましょう。
決算がおわって、赤字が「確定」したあとになると、極端に融資が受けにくくなります。これとあわせて考えておきたいのが、「試算表が赤字になる前」に融資の申込みをすることです。
今期が赤字になりそうだというときにも、突然、赤字になるわけではありません。試算表を毎月つくるとすれば、どこかの月から赤字が発生しはじめることでしょう。
たとえば、3月決算の会社が、まず4月は黒字、5月・6月も黒字。ところが、7月からは赤字に… といった具合です。この場合、7月の試算表ができてから融資の申し込みをするのはうまくありません。
決算書の赤字と同じく、試算表の赤字もまた、銀行からは良くないものと見られるからです。
実際、期の途中で融資を申し込むと、銀行から試算表の提示を求められることが少なくありません。ですから、その試算表が赤字になる前のタイミングで申込みができるようにしましょう。
とはいえ、将来、赤字になるかどうかを予測するなんてできない… と、おもわれるかもしれません。たしかに、そのとおりです。未来を完全に予測することなどできません。
だったら、できることは1つ。黒字のうちに、融資を申し込むこと。黒字のうちに、あらかじめ借りておくことです。いざ赤字になってから、あわてることがないようにしましょう。
債務超過になる前
赤字になると融資が受けにくくなる、という話をしました。これを聞いて、「いやいや、赤字でも融資は受けられるし」と、おもわれたかもしれません。事実、赤字でも融資は受けられます。
いままでは黒字で、今回はちょっと赤字になってしまった… というようなケースであれば、過去の実績もあるわけですから、赤字でも融資が受けられることはあるものです。
が、赤字が続くとなると、ようすは変ってきます。問題は、赤字が続いて「債務超過」に陥るケースです。債務超過とは、「資産 < 負債」の状態をいいます。
見るからにマズい状態だとわかるでしょう。銀行もそのように見ています。いまある資産で、負債を返済できない状態なのだから、これ以上の融資をすることはできない、という見方です。
ちなみに、債務超過とは「純資産(資産ー負債)がマイナス」と言い換えることもできます。純資産とは「資本金+利益剰余金」であり、利益剰余金とは「毎年の税引後利益の累計」です。
ゆえに、赤字(税引後利益がマイナス)が続くと、利益剰余金はマイナスとなり、さらに赤字が続くと、「資本金 < 利益剰余金のマイナス」となり、純資産がマイナスになります。つまり、債務超過です。
こうなると、極端に融資が受けにくくなりますから、債務超過に陥る前のタイミングで、融資の申込みをすることが重要になります。
決算書のうち、損益計算書の「利益」は見ていても、貸借対照表の「利益剰余金」を見ている社長は、あまり多くはないようです。決算書ができたときには、必ず「利益剰余金の額」を確認するようにしましょう。
そのうえで、「あとどれだけの赤字が出たら、債務超過になってしまうのか」の具体的な金額を把握しておくことです。債務超過が近いようであれば、いまが融資を申し込むギリギリのタイミングだといえます。
おカネがなくなる前
利益=返済原資、と前述しました。とはいえ、いくら利益が出ていても「おカネ」がなければ、実際には返済ができません。
利益が出ていて、おカネがないだなんて、おかしな話にも聞こえることでしょう。でも、社長であれば、いちどくらいはそんなおかしな状況を経験もしているのではないでしょうか。
なぜ、そんなことが起きるのか? 利益とおカネは別モノだからです。言い換えると、利益の増減と、おカネの増減は必ずしも一致するものではないから、ということになります。
たとえば、1億円の商品を売り上げて納品をしたとしても、その代金を回収できずにいれば、利益は増えますが(売上1億円が計上されるので)、おカネは増えません(増えるのは売掛金)。
というのは、極端な例ではありますが。一事が万事、利益とおカネのズレはいろいろなところで生じています。結果として、「利益が出ているから安心」とも言い切れないわけです。
ここで、問題になるのがおカネです。たとえ利益が出ていたとしても、おカネが無い・少なければ、銀行は返済に不安を感じます。すると、融資をしづらくなるものです。
では、融資をしづらくなるのは、どれくらいのおカネになったときなのか? 1つの目安は、「預金残高 < 平均月商の1ヶ月分」です(平均月商 = 年間売上高 ÷ 12ヶ月)。
なお、これは「最低ライン」であって、平均月商の2ヶ月分未満の預金残高になると、銀行は「おカネがちょっと少ないなぁ…」という見方をしはじめます。
ですから、融資の申し込みをするのであれば、預金残高が平均月商1ヶ月分のタイミングがギリギリであり、できれば、平均月商2ヶ月分未満になる前に申し込むようにしましょう。
まとめ
銀行融資を受けるなら、申し込むタイミングが大切です。遅ければ、融資が受けにくくなってしまう… というわけで、銀行融資を申し込むギリギリのタイミングについてお話ししてきました。
おもなタイミングは3つ、キーワードは「〇〇前」です。ぜひ、押さえておきましょう。
- 赤字になる前
- 債務超過になる前
- おカネがなくなる前