銀行借入を活用しましょう、というハナシがありますが。実は依存していた… というケースはあるものです。というわけで、銀行借入の依存度が高い会社の特徴についてまとめてみます。
活用していたつもりが依存している。
会社にとって、銀行借入は「有効な資金調達手段」のひとつです。とくに、中小企業は自己資金が限られてもいますから、銀行借入は欠かすことができな資金調達手段である、とも言えるでしょう。
そういう意味でも、借入自体は悪いことではありません。が、銀行借入に「依存」するのは問題です。言い換えると、「借りることがゴールになっている」ような状況は依存にあたります。
その依存状態を、もう少し具体的に、特徴としてとらえたものが次のとおりです↓
- ギリギリになってから借りる
- 無理矢理にでも借りようとする
- 純資産が減っていく
これらの特徴について、このあと詳しく確認していきましょう。あてはまるものがあれば、要注意です。
銀行借入を「活用」しているつもりが、実は、銀行借入に「依存」していたということがないように、気をつけなければいけません。
銀行借入の依存度が高い会社の特徴
ギリギリになってから借りる
手元のおカネがギリギリになってから、ようやく銀行から借りようとする会社があります。こういった会社の社長の「心理」は次のとおりです↓
ギリギリのところでなんとか借入することができた。そこで、ホッとひと安心。喉元過ぎれば熱さを忘れる、ということで「ギリギリの危うさ」を忘れてしまう…
そしてまた、同じことを繰り返します。これが、借入に依存した状態です。
次もギリギリで、うまく借りられればよいのですが、いつもうまくいくとは限りません。いつもギリギリの会社を、銀行は警戒するものです。借りられなければ、最悪、会社はつぶれてしまいます。
では、どうするか? 銀行借入に依存するのではなく、銀行借入を活用できる社長は「ギリギリになる前」に借りようとします。もっと言えば、余裕のあるときにこそ、積極的に借りています。
そのほうが、うまく借りられることを知っているからです。うまく借りられるとは? 会社にとって、良い融資条件で借りられたり、余計な手間をかけずに借りられたり。
逆に、ギリギリになってから借りようとすれば、うまく借りることができません。融資条件は、銀行に提示されたものをのまざるをえませんし、銀行から求められる資料も多くなるものです。
融資条件が悪くなれば、同じ額を借りるにしても財務を傷めます。銀行から求められる資料が多くなれば、その分、社長は余計な時間と労力がかかりますから、経営がおざなりにもなるでしょう。
というのは、ギリギリになってから借りることの問題点です。
いっぽうで、ギリギリになる前に、うまく借りることができれば、社長が経営に集中できる時間は長くなります。結果として、経営改善が進み、借りたおカネも使わずにすむ。あるいは、前向きなおカネの使いかた(設備投資、新規事業)ができる、というものです。
無理矢理にでも借りようとする
銀行借入の依存度が高い会社は、ギリギリになってから借りる、と前述しました。ギリギリとは、銀行から見れば「危ない状態」です。なので、借入がしづらい状態だと言えます。
社長もそれはわかっているので、どうするか? 1つの方法が「粉飾決算」です。事実とは異なる決算書をつくって、ありもしない利益をあることにしてしまう。これにより、無理矢理にでも借りようとする社長がいます。
そこまでして借りるおカネが、よいものであるわけはなく。銀行借入に依存している、と言ってよいでしょう。ちなみに、粉飾はいずれバレますし、バレれば、その銀行からは出禁を喰らいます。
そうなれば、会社は借入をすることができなくなるのですから大問題です。資金調達手段が限られる中小企業にとって、「銀行借入ができない=おわり」と言っても過言ではありません。
また、無理矢理にでも借りるといえば、「資金使途違反」もあります。つまり、「ウソの資金使途(借りたおカネの使いみち)」で、銀行から借入をすることです。
たとえば、本当は設備投資などしないのに、設備投資をするためのおカネ(設備資金)として借入をしようとするとか。運転資金の借入ができない・足りないからといって、そのような借りかたをしてはいけません。
銀行にバレてしまえば(まずバレますが)、一括返済を求められるうえに、その後は出禁です。それを承知で、そこまでして借りようとするのであれば、まさに依存状態だと言えます。
社長は、そのような借りかたをしないように、気をつけなければいけません。
純資産が減っていく
銀行借入をした瞬間は、「資産=負債」となります。たとえば、1,000万円の借入をすれば、1,000万円の資産(預金)が増えて、1,000万円の負債(借入)も増えるからです。
ちなみに、「資産 ー 負債 = 純資産」であり、借入をした瞬間の純資産に変化はありません。いま言ったとおり、「資産=負債」だからです。なので、借入は危険なものではありません。
とはいえ、借入が危険なものに変わることもあります。それは、「借りたおカネをムダ使いしたとき」です。たとえば、株を買って、その後に値下がりしてしまった… とか。
すると、資産(株)は減るのに、負債(借入)は減りませんから、「資産 < 負債」となります。これは、純資産(資産 ー 負債)が減っていく状態であり、よいものでないことはわかるでしょう。
また、借入をして設備投資をしたものの、おもっていた成果が得られないとなると、資産(おカネ)は増えずに、負債(借入)が残ることになるため、これもまた純資産が減っていきます。結果論ではありますが、これもムダ使いです。
こうした状態(資産 < 負債)がまず、銀行借入に依存していると言えますし、資産が減った穴埋めをするために銀行借入を重ねるのであれば、なお依存度が高まっていると言えるでしょう。
繰り返しになりますが、銀行借入をした瞬間は「資産 = 負債」であり、純資産が減ることはありません。この点で、「借りたおカネがどうなっているのか?」は要注目です。
借りたおカネの使いみちは、「資産」にあらわれます。当初借りた 1,000万円のおカネは、いまどうなっているのか? という目で、決算書(あるいは試算表)の資産を確認してみましょう。
なお、含み損には注意が必要です。資産として、株が 1,000万円と記載されていても、時価が 700万円であれば、300万円の含み損があります。同じように、棚卸資産が 1,000万円と記載されていても、陳腐化していれば、その分の含み損を抱えていることになります。
資産を見るときには、「含み損」もあわせて確認することが大切です。含み損が多いほど、借入依存につながります。
まとめ
銀行借入を活用しましょう、というハナシがありますが。実は依存していた… というケースはあるものです。というわけで、銀行借入の依存度が高い会社の特徴についてまとめました。
自社に当てはまるところがないか、確認をしてみましょう。同じ銀行借入であっても、依存的な借りかたは危険があります。まずは、依存体質を自覚することが大切です。
- ギリギリになってから借りる
- 無理矢理にでも借りようとする
- 純資産が減っていく