銀行に提出する計画書は、「慎重につくれ」と言われます。なぜ慎重でなければいけないのか、慎重とは具体的にどういう意味なのか、など。計画書をつくる際の注意点や考え方をまとめます。
調子がよい計画書の落とし穴
会社が融資を受ける際、銀行から「計画書(経営計画や設備投資計画など)」を求められることがあります。また、求められずとも自主的に提出することで、融資を受けやすくする効果はあるものです。
その「計画書」の注意点として、「慎重につくりましょう」というハナシがあります。ここで言う「慎重」とは、「保守的」や「堅実」といった意味合いです。
これを聞いて、「えー、知らなかった…」というのであれば、これからは気をつけましょう。なかには、「どうせ計画なのだから、調子がよいものをつくったほうが銀行ウケもよいだろう」と考える社長もいるようです。
ところが、調子がよい計画書には「落とし穴」があります。調子がよいほど、銀行からは疑われる(本当に実現できるの?)というのが、まず1つ。
もう1つは、「だったら借りなくてもいいじゃん」と銀行におもわれてしまうことです。調子がよい計画書になると、売上がどんどん増えて、利益もどんどん増えます。それならおカネも増えるはずなのですから、借りる必要ないじゃん。貸さなくてもいいじゃん、となるわけです。
これでは、なんのために銀行に計画書を提出すのかわかりません。
銀行に提出する計画書の役割は、「おカネを借りる必要性」と「借りたおカネを返せる(だけの利益が出る)」ことを示すことにあります。と、若干、話がそれてしまいましたが。
話を戻して、計画書は「慎重につくりましょう」という注意点について。このあと、さらに掘り下げてみたいとおもいます。銀行に計画書を提出する際の、ご参考になれば幸いです。
慎重であっても根拠がなければダメ
繰り返しになりますが、計画書は慎重につくりましょう。つまり、数字については保守的・堅実につくりましょう。さらに具体的に言うと、「売上は少なめ」です。
売上が多すぎる計画は、前述した調子がよい計画書にあたります。割とよく見かけるのが、未来に向かって、売上が右肩上がりにどんどん増えていく計画書です。
これが、銀行から疑われることは、すでにお話をしました。ならば、売上の計画値が少なければ、問題がないのか? といえば、そういうわけではありません。
本当に大事なことは、「売上の大小」ではなくて、「売上の根拠」があるかどうかです。根拠とは、たとえば、「受注書がある」とか「見込み客リストがある」とか。そういった「数字の裏付け」になるものが「根拠」にあたります。
なので、計画書を銀行に提出する際には、根拠もあわせて提出できると、計画書の信頼性が高まることを覚えておきましょう。
この点で、売上が多すぎると(調子がよい計画書だと)、困ったことになります。数字の裏付けになるだけの根拠がないからです。結果、計画書の信頼性は下がります。
調子がよい計画書ほど、銀行からは根拠をより求められるものです。言い換えると、調子がよい計画書ほど、銀行からは厳しく見られる、ということになります
会社が慎重であっても銀行はさらに慎重
ここまで一貫して、計画書は慎重につくりましょう、というお話をしています。これは、計画書をつくる「会社側の姿勢」の話です。いっぽうで、銀行側の姿勢もあります。
では、銀行の姿勢とは? ずばり、慎重です。会社よりもさらに慎重、それが銀行側の姿勢です。
会社が慎重な計画書を提出したとしても、銀行がそれを「そのまま信じる」ことはありません。多かれ少なかれ「ゲタをはかせているはずだ」という見方をしている、と聞きます(銀行員の方から)。
実際、調子がよい計画書をつくる会社が多いから。という、銀行員の「経験則」にもとづく見方であり、見られる側の会社としては、そういった「銀行員の見方」は知っておくとよいでしょう。
では、どうするか? 誤解を恐れずにいえば、「少々、ゲタをはかせる」ことです。銀行員が、慎重に見る分だけ、計画書の数字を「盛っておく」ということになります。
くれぐれも誤解がないように申し添えますが、これは「根拠のない売上を計画に入れちゃいましょう」という趣旨ではありません。
きわめて抽象的な表現をするのであれば、「現実的におこりうる上振れ分を計画に織り込む」ということになります。たとえば、超慎重な売上計画であれば月 300万円のところ、上振れ分を考慮して 350万円の計画値とする、みたいな。
とはいえ、どこまで上振れ分を考慮すればよいのか…?
計画の8割達成! が最低ライン
計画の上振れ分について、ひとつの目安があります。それは、「計画の8割達成が最低ライン」という目安です。
銀行は、会社がつくる計画書を受け取っておしまい、ではありません。受け取った計画書は必ず、その後の「実績」との比較をおこなっています。社長はつくっておしまい… だとしても、です。
このとき、銀行は「計画の8割達成が最低ライン」という見方をしています。たとえば、ひと月の売上計画が 350万円だとしたら、その8割である 280万円が最低ラインです。
実際の売上が 280万円を下回り続けるようだと、「この会社がつくる計画書は、もう信用ならない」という評価になります。その後、会社がつくる計画書を見る目は厳しくなるわけです。
ちなみに、リスケジュール(返済猶予)を依頼する際に提出する「経営改善計画書」についても、銀行は同じような見方をしています。計画に対して実績が8割未満… のような状態になると、リスケジュールを打ち切られることにもなるため注意が必要です。
計画書をつくるときに上振れ分を考慮するとはいっても、「計画の8割達成」には気をつけましょう、ということになります。大風呂敷を広げてはいけません、ということです。
なので、超慎重な売上計画が月 300万円のところ、「少々、ゲタをはかせておこう」と月 400万円にした場合。400万円の8割は 320万円ですから、銀行から見た最低ラインは 320万円です。
これだと、実際には最低ラインに届かない可能性が高まります。したがって、この場合の「月 400万円」はゲタをはかせすぎだ、といえるでしょう。計画の8割を高い確率で達成できる、という観点から計画値を決めることが肝要です。
まとめ
銀行に提出する計画書は、「慎重につくれ」と言われます。なぜ慎重でなければいけないのか、慎重とは具体的にどういう意味なのか、など。計画書をつくる際の注意点や考え方をまとめました。
銀行に計画書を提出する際の、ご参考になれば幸いです。