取引銀行を増やす目的は金利競争をさせるためではない

取引銀行を増やす目的は金利競争をさせるためではない

取引銀行を増やす目的は、金利競争させて、借入金利を引き下げるため。といった考え方もありますが、得られるものに対して失うものが多すぎるのでき気をつけましょう、というお話です。

目次

それも1つの考え方ではあるものの。

銀行融資に関するご相談のなかには、「借入金利を下げたい」というものがあります。その方法にとして、「取引銀行を増やして、金利競争をさせている(あるいは、させようとしている)」との話を聞くこともあります。

この点で、「取引銀行を増やす目的は、金利競争をさせるためではない」というのが、本記事でお伝えをしたいことです。たしかに、それも「1つの考え方」ではあるものの、得られるもの(金利)に対して失うものが多すぎる… というのがわたしの考えです。

では、具体的に何を失うというのか? 取引銀行に金利競争ばかりさせているとこうなります↓

取引銀行に金利競争をさせるとどうなるか
  • 銀行の足が遠のく
  • メインバンクができない
  • 金利以外のメリットを逃す

このあと、順番に確認していきましょう。じゃあ、取引銀行を増やす目的は何のなのか? の理解にもつながります。

取引銀行に金利競争をさせるとどうなるか

銀行の足が遠のく

取引銀行を増やし、銀行どうしを競わせて、借入金利を引き下げることは可能です。では、その金利が下がると、会社がトクをするいっぽうで、銀行はどうなるか?

当然、損をします。金利が下がれば、銀行が受け取る利息は少なくなるわけで。銀行にとっては、利息が収入なのですから、その利息が少なくなるのは損でしかありません。

なので、いつもいつも「金利を下げろ」と言われ、いつもいつも金利を下げられているのだとしたら、銀行員はどう感じるか? もう、この会社に融資をしなくてもいいや。そんなふうに考えることでしょう。

つまり、金利を引き下げようとばかりしていると、銀行の足が遠のきます。結果として、会社は融資そのものが受けにくくなってしまう… そうなれば、金利以前の問題です。

中小企業にとって、銀行融資は資金調達の生命線。まずは、融資を受けられることが第一だと言ってよいでしょう。そういう意味で、金利は二の次三の次です。

そもそも、いま現在(2023年6月8日)では、じゅうぶんに低金利でもあります。金利競争をさせるまでもなく、以前に比べれば金利はすでに低い状態です。

そのうえ、さらに金利を下げろというのでは、銀行からすれば「いったい、どうやって儲けろというのか? なぜ、そこまでして融資をしなければいけないのか?」と、イヤになってしまうでしょう。

ですから、金利競争を目的に取引銀行を増やす、という考え方には注意が必要です。じゃあ、取引銀行を増やす目的とはいったい何なのか? このあと、おいおいとお話をしていきます。

メインバンクができない

取引銀行を増やして、そのつど金利が低い銀行から融資を受けている社長がいます。さらにエスカレートすると、既存の他行からの借入まで、金利が低い銀行で借り換えてしまったり…

といった状況もまた、取引銀行に金利競争をさせているといえます。そのようにして、金利を基準に、借入先の銀行をとっかえひっかえしていると何が起きるのか?

メインバンクと呼べる銀行がなくなります。メインバンクとは、端的にいえば「借入残高がもっとも大きい銀行」です。が、とっかえひっかえすることで、「借入残高がもっとも大きい銀行」は絶えず入れ替わることになります。

すると、いくら「借入残高がもっとも大きい」とはいっても、銀行からすれば「いつ、ほかの銀行と入れ替わるかわからない」ということになり、どの銀行も「自行がメインバンクだ」とは考えなくなるものです。

では、メインバンクの役割とは何なのか? 会社にとって一番は「困ったときにも積極的に支えてくれる」ことでしょう。困ったときとは、業績不振などで資金繰りに窮しているときであり、銀行からすれば支援を躊躇するところです。

それでも、メインバンクであれば、「できるだけ支えよう」との動機がはたらきます。結果、メインバンクが支援をはじめれば、その姿を見たほかの銀行もまた、支援に動きやすくなります。

コロナ禍、自行がメインバンクだとおもっていた銀行は、黙っていても足を運んでくれたでしょうか。ゼロゼロ融資をはじめ、支援の提案をしてくれたでしょうか。

会社が困ったときにこそ、銀行の動きを通じて、メインバンクとの関係性が見えるものです。

金利以外のメリットを逃す

金利は、融資条件の1つにすぎません。融資条件はいろいろあります。借入金額、借入期間、据置期間、担保や保証の有無など、いろいろです。では、金利を下げようとするとどうなるか?

基本的には、ほかの融資条件が悪くなります。逆に、金利を上げることで、ほかの融資条件を良くすることができます。なので、「金利は上がってもいいので」と交渉するのは1つの方法です。

金利は少々上がっても、借入期間を長くしてもらうとか。金利は少々上がっても、経営者保証なし、信用保証協会の保証なしにしてもらうとか。

いっぽうで、取引銀行を増やして、金利競争を促してばかりいると、金利は下がれどほかの融資条件はいっこうに良くならない… ということはあるものです。

銀行にしてみれば、「金利も下げて、ほかの融資条件も良くして」は難しいものがあります。会社は、融資条件のすべてを交渉することはできない、と考えておきましょう。

金利にこだわれば、金利以外の融資条件、金利以外のメリットを逃すことになります。

現状の金利が、すでにじゅうぶん低いことは前述したとおりです。金利を引き下げられる余地はほとんどないともいえますから、それなら、ほかの融資条件を良くするほうが有意義でしょう。

銀行は金利を上げたいのであり、金利が上がることを容認すれば、銀行はうれしい。代わりに、ほかの融資条件を良くしてもらえれば、会社もうれしい。Win-Winです。

そのうえで、会社が融資条件の交渉をするにあたっては、「選択肢が多い」ほうが結果も出やすくなるので、それを目的に取引銀行を増やすことを考えてみるとよいでしょう。

まとめ

取引銀行を増やす目的は、金利競争させて、借入金利を引き下げるため。といった考え方もありますが、得られるものに対して失うものが多すぎるのでき気をつけましょう、というお話をしました。

中小企業にとって、銀行融資は資金調達の生命線です。目先の金利よりも、長期的に安定した資金調達を目指しましょう。そのためには、少々の金利は犠牲にするという視点も必要です。

    取引銀行に金利競争をさせるとどうなるか
    • 銀行の足が遠のく
    • メインバンクができない
    • 金利以外のメリットを逃す
取引銀行を増やす目的は金利競争をさせるためではない

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