銀行融資について、銀行のほうから「借りませんか」と声をかけてくるケースがあります。いわゆる、融資提案です。そんな融資提案を受けたときの、確認ポイントをまとめます。
借りにいくだけが融資じゃない。
銀行融資というと、会社のほうから銀行に対して「借りにいく」というイメージがありますが。逆に、銀行のほうから会社に対して「借りませんか」と声をかけてくるパターンもあります。
いわゆる、融資提案です。そんな銀行からの融資提案を受けたときに、社長が確認をしたほうがよいポイントについて考えてみましょう。おもなところでは、次のとおりです↓
- 融資条件
- 借入シェアの変化
- 借りるか否か
これらを見て、「どういうこと?」とおもわれるのであれば、このあとの話を確認しておくことをおすすめします。以降の資金繰りの良し悪しにかかわるところです。
銀行から融資提案を受けたときの確認ポイント
融資条件
融資条件にもいろいろあります。多くの社長が気にしている「金利」のほかにも、返済方法や返済期限、担保・保証の有無など。それらの融資条件を確認するところからはじめましょう。
たとえば、銀行が「制度融資」を勧めてくることがあります。制度融資とは、銀行に加えて、自治体と信用保証協会が一体になっておこなう融資です。端的にいえば、保証付き融資になります。
この点で、すでにプロパー融資を借りている会社であれば、注意が必要です。プロパー融資を借りられるくらい「良い会社」なのですから、あえて保証付き融資を受けるのはどうなのか?
以後、その銀行がプロパー融資を出さなくなれば、既存のプロパー融資の返済がおわったところで、保証付き融資のみになってしまいます。というように、銀行は「プロパー融資から保証付き融資への置き換え」を狙っている可能性があるのです。
実際に置き換えられれば、銀行はリスクを軽減できます(保証付き融資であれば、会社が返済できなくても信用保証協会が肩代わりをしてくれるから)。
なので、融資提案を受けたときには基本的に、「既存の融資」よりも、会社にとって良い融資条件であるかを確認するようにしましょう。
保証付き融資ではなく、プロパー融資にしてもらうとか。経営者保証は無しにしてもらうとか。金利は、既存の融資よりも下げてもらうとか。証書貸付ではなく、当座貸越をお願いするとか。
銀行が、「ほんとうに貸したい(優良な融資先なので関係を深めたい)」と考えているのであれば、融資条件の交渉に応じてもらえる可能性は高くなります。
いっぽうで、銀行の都合で「特定の融資商品」を案内したいだけだと、融資条件の交渉に応じてもらうことはできないでしょう。よって、交渉に対する銀行の反応で、銀行の思惑をうかがいしることができます。
借入シェアの変化
いま現在、A銀行、B銀行、C銀行の3行から融資を受けているとします。それぞれの借入残高が、A銀行 3,000万円、B銀行 1,500万円、C銀行 500万円だとすると、借入シェア(各銀行の残高 ÷ 借入総額)は、A銀行 60%、B銀行 30%、C銀行 10%にです。
ではここで、B銀行から 3,000万円の融資提案があったらどうでしょうか。もし提案を受け入れると当然ながら、借入シェアのトップは、A銀行からB銀行に入れ替わることになります。
A銀行が「自行がメインバンクだ」と考えていた場合には、A銀行との関係性が悪くなる可能性があるので注意が必要です。銀行は、会社がおもっている以上に、借入シェアを気にしています。
この点で、B銀行はさらに積極的に「A銀行の3,000万円もあわせて借り換えませんか?金利の引き下げも検討しますので」みたいな提案をしてくることもあるでしょう。
これ幸いと、B銀行の提案にまるまる乗っかるようだと、A銀行との関係断絶はもはや決定的です。
なので、A銀行との関係性を悪くしたくないのであれば、B銀行からの提案を受けるにしても借入シェアを考慮した内容にする事も考えましょう(A銀行の借入シェアトップを維持するとか)。
また、B銀行の提案内容をA銀行に伝えて、A銀行からの提案を依頼するのも1つの方法です。そのうえで、A銀行とB銀行両者の提案を検討して、バランスをとるのもよいでしょう。
いずれにせよ、1つの銀行から「良い提案」があったとしても、すぐには飛びつかないことが大切です。その提案を受け入れることで、借入シェアがどのように変化するのかを確認する。これを忘れてはいけません。
銀行との関係性を悪くすれば、中長期的な資金繰りには悪影響です。
借りるか否か
さいごの確認ポイントは、「借りるか否か」です。銀行から融資提案を受けたときに、「いまは借りなくても大丈夫」と断ってしまう社長がいます。
銀行が融資提案をする先は、基本的に「良い会社」が多く、つまり、業績が良くて資金繰りも良いので、いまいまおカネを借りる必要がない。ゆえに、提案を断りがちなのです。
とはいえ、中小企業の財務戦略は「借りれるときに借りること」だと言えます。借りたいとき(業績が悪い・資金繰りも悪い)には借りられないのが中小企業だからです。
だとすれば、よほど資金が潤沢でない限りは、「借りておく」のがおすすめだと考えます。では、資金が潤沢とはどのていどをいうのか? 目安として、年間売上高の半分の預金があるかどうかです。
そこまでの預金がないのであれば、ひとまず借りておきましょう、ということになります。このような考え方に否定的な意見があるのは承知していますが、だからこそ、あえてのお話です。
銀行融資について、社長が完全にコントロールできるのは「借りるタイミング」しかありません。融資の可否や、融資条件を完全にはコントロールできないのですから(銀行に主導権がある)、コントロールできるものは漏らさずコントロールすることをおすすめします。
まとめ
銀行融資について、銀行のほうから「借りませんか」と声をかけてくるケースがあります。いわゆる、融資提案です。そんな融資提案を受けたときに、社長が確認をしたほうがよいポイントをまとめました。
以降の資金繰りの良し悪しにもかかわるところですから、それぞれのポイントを押さえておきましょう。
- 融資条件
- 借入シェアの変化
- 借りるか否か