とりあえず借りる→負の連鎖?ゼロゼロ融資を勘違いする人たちとは

とりあえず借りる→負の連鎖?ゼロゼロ融資を勘違いする人たちとは

ゼロゼロ融資を「とりあえず借りる」ことで、負の連鎖が起きている… というハナシには勘違い(論理の飛躍)があるので気をつけましょう。というお話をしていきます。

目次

論理の飛躍が散見される。

きょうは、2023年7月13日。コロナ禍で多くの会社が利用した「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」の返済開始(=据置期間の終了)がピークを迎えています。

この点で、資金繰りが厳しく、返済に苦しむ会社が多いこと、倒産が増えていることなどから「ゼロゼロ融資の弊害」といったハナシが頻繁に見聞きされるところです。

ひいては、「とりあえず借りる」ようなことをするから、そんなことになってしまうのだ! といった論調もあります。ゼロゼロ融資は、借りやすい融資であったがために、「とりあえず借りる」といった社長が多くいたからです。

とはいえ、「とりあえず借りる」から、そんなこと(返済に苦しむ・倒産する)になってしまう、との考え方には「勘違い(論理の飛躍)」が見られますし、多分に感情論が含まれていることには気をつけたほうがよいでしょう。

誤解を恐れずにいえば、「とりあえず借りる」のは、中小企業における財務戦略です。それはさておき、「とりあえず借りる」に見られる勘違い(論理の飛躍)とは具体的にどういうことなのでしょうか?

論理の飛躍の具体例

たとえば、ゼロゼロ融資を借りる直前の年間返済額が、500万円の会社があったとします。そして、コロナを迎えて社長は、ゼロゼロ融資を「とりあえず借りる」ことにしました。

据置期間がおわり、ゼロゼロ融資の年間返済額は 200万円です。ゼロゼロ融資以外の年間返済額が変わらず 500万円だとすると、年間返済額の合計は 700万円になります。

これに対して、現状、会社の返済力(税引後利益 + 減価償却費)が 500万円だとしたら… 返済をするおカネが足りなくなる。また、あらたに借入が必要になる。返済が増える。負の連鎖だっ!

といったハナシを、とてもよく見かけるわけですが。こういったハナシは、「とりあえず借りる」の典型的な勘違いだと言ってよいでしょう。

なぜなら、「税引後利益 + 減価償却費 < 年間返済額」だと、おカネが足りなくなる、という部分には「論理の飛躍」があるからです。実際には、必ずしもそうはなりません。

ゼロゼロ融資で借りたおカネを「使わずに持っている」会社であれば、その持っているおカネのなかから返せばよいだけです。であれば、実質的な年間返済額は、ゼロゼロ融資以外の 500万円であり、それなら現状の返済力で対応できます。

というように、とりあえず借りることによって、必ずしも負の連鎖が起きるわけではないのです。

誤った前提を正さねばならない

勘違い(論理の飛躍)はなぜ起きるのか? つまるところ、前提に誤りがあります。その前提とは、「とりあえず借りる=借りたおカネは使ってしまう」というものです。

たしかに、借りたおカネを使ってしまった場合には、のちのち、返済が苦しくなることもあるでしょう。ですが、「借りたおカネを使わずにもっている」というケースもあるはずです。

「とりあえず借りる」のは、「いざというときのために、あえて借りることでおカネを持っておく」ためであり、これこそが中小企業の財務戦略だ。というのが、わたしがふだんおすすめしている考えでもあります。

なので、限られた前提(とりあえず借りる=借りたおカネは使ってしまう)のもとで、「とりあえず借りる」なんてよくない! という主張には、危険があるだろうとおもうわけです。

とはいえ、資金繰りに困ったら、借りたおカネは使うことになるのだから、結局は同じじゃないか? やっぱり、とりあえず借りるのはよくないんじゃないか? と、おもわれるかもしれません。

もっともらしいハナシではありますが、本当にそうなのでしょうか?

借りて粘るか、借りずにつぶすか

とりあえず借りたおカネは、困れば使うのだから、結局は負の連鎖に巻き込まれるだけ。だったら、「とりあえず借りる」なんてやめたほうがいいのか? という疑問はもっともです。

では、仮に、とりあえず借りることをしなかったとして。その後に、資金繰りが厳しくなったとしたらどうでしょうか。借りるのはよくないから、会社をつぶしてしまおう、という社長は少ないものと想像します。

資金繰りが厳しくなったら、まずは「なんとか借りよう」とするのではないでしょうか(もちろん、経営改善も同時進行のうえで)。ところが、そこまで厳しくなった会社が融資を受けるのは、カンタンではありません。

なぜなら、貸しても返してもらえそうにないので、銀行は融資を躊躇するからです。結果、資金ショートすれば、会社はつぶれてしまいます。

だったら、「あのとき借りておけばよかった…」という社長の後悔は、実際にもある話です。ここで言う「あのとき」が、ゼロゼロ融資にあたります。

ゼロゼロ融資は、国の後押しもあって「とても借りやすい融資」だったのですから、借りれるうちに借りておき、そのときのおカネで「のちのち粘る」ことができている会社は少なくないでしょう。

逆に、ゼロゼロ融資のような「とても借りやすい融資」がなければ、すでに、もっと多くの会社が倒産していたはずです。おかげで「ゾンビ企業」が増えてしまった、という非難もありますが。

それはまた別の話です。社長はすべからく、自社の存続を望み、尽力をされるのですから、「借りてでも粘る」のは当然でしょう。でれば、「とりあえず借りる」のは、有効な選択肢です。

まとめ

ゼロゼロ融資を「とりあえず借りる」ことで、負の連鎖が起きている… というハナシには勘違い(論理の飛躍)があるので気をつけましょう。というお話をしました。

誤解なきように申し添えると、なんでもかんでも「とりあえず借りる」のがよい、という話ではありません。借りたおカネをムダ使いするのであれば、借りないほうがよいわけで。

とりあえず借りることをおすすめするのは、「いざというときのための備え」が前提です。

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