銀行融資を受けるにあたって、借入金利ばかりを気にしている社長がいます。金利が下がって喜んでいる! のもよいですが。実は間違っていることもあるので気をつけましょう。という、お話です。
金利は融資条件の1つに過ぎない。
会社が銀行融資を受けるにあたって、借入金利を気にする社長がいます。つまり、借入金利が下がれば万々歳! みたいな社長です。ところが、実は間違っている… ということもあります。
なぜなら、金利は「融資条件」のうちの1つに過ぎないからです。会社にとって、重要な融資条件は金利だけではありません。もちろん、金利は低いに越したことはないわけですが、金利が低いよりもまず、重視すべきこともあります。
では、あらためて、「借入金利が低くなって喜んでいるけど実は間違っている社長の例」がこちらです↓
- 返済期間が短い
- 保証付き融資
- 不動産担保付き
- 経営者保証付き
- 既存融資がそのまま
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
借入金利が低くなって喜んでいるけど実は間違っている社長の例
返済期間が短い
まずは、返済期間と金利の関係について。ご存知のこととはおもいますが、返済期間が長いほど金利は高くなります。逆に、返済期間が短いほど金利は低くなります。
なぜなら、返済期間が長くなると、短い場合に比べると、そのあいだに何かが起きる可能性が高くなるため、返済してもらえない可能性も高まるからです。
では、金利が低い場合に何が起きているのか? といえば。返済期間が「より短くなっている」という可能性があるわけです。本来であれば、5年でも借りられるところ、3年にされているのかもしれません。
それならそれでかまわない、との考え方もありますが。中小企業の財務戦略から見ると、「できるだけ長く借りる(返済期間は長く)」のがセオリーです。そのほうが、毎月の返済額は少なくてすみます。
すると、資金繰りはラクになりますし、より多くのおカネを手元に残しておける。それが、銀行融資を利用する目的でもあるため、金利よりもまず返済期間を優先しましょう。というのが、わたしのおすすめです。
保証付き融資
信用保証協会の保証付き融資は、銀行にとってリスクが小さい融資だといえます。会社が返済できないときには、信用保証協会が肩代わりをしてくれるからです。
そのため、プロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)に比べると、保証付き融資のほうが金利が低くなることが少なくありません。
ところが、保証付き融資には、信用保証協会に対する保証料の支払いもあり(金利に換算すると、年利1%ていどになることも…)、また、保証付き融資には制度上の限度額もあります。
保証付き融資は、銀行にとってのリスクが低いことから、銀行は貸しやすく・会社は借りやすい融資ですが、保証付き融資ばかりになると、限度額いっぱいになるのが問題です。
すると、借りやすい融資を利用したい場面で(=赤字のとき・資金繰りが厳しいとき)、肝心の保証付き融資が使えない… ということになりかねません。
いざというときのためにも、また、保証付き融資の制度上の限度額を超えて、銀行融資を受けられるようになるためにも、プロパー融資を受けられるようになりましょう。
それには、少々金利が高くても、プロパー融資を受けて実績をつくることです。実績を重ねれば、金利を下げていくこともできます。
不動産担保付き
保証付き融資だと、銀行が金利を低くできる理由(リスクが小さいから)がわかれば、不動産担保付き融資もまた、金利を低くできることがわかるでしょう。
担保をとることができれば、銀行はいざというときにも、担保を売却処分して、貸したおカネを回収することができます。ゆえに、担保付き融資の場合には、金利を抑えることができるわけです。
が、会社にとって不動産担保は、「さいごの砦」と言っても過言ではありません。担保が付いていない不動産を持っていることで、いざというときにも何とか借り入れできた… ということはあります。
だとすれば、不動産はおいそれと担保提供するものではなく、できるだけ温存しておきたいものです。金利が低くなるからといって、カンタンに担保提供しないように気をつけましょう。
また、いちど担保提供して、根抵当権を設定すれば、すべての融資を完済するまでは根抵当権を解除することが難しくもなります。銀行の立場になってみれば、それも当然です。
担保提供する場合でも、根抵当権ではなく、抵当権(普通抵当権)で対応できないかも検討することをおすすめします。
経営者保証付き
経営者保証、つまり、会社の融資について社長が連帯保証人になる場合にも、金利は低くなります。これもまた、保証付き融資や担保付き融資と同じ理屈です。
経営者保証があれば、銀行にとってはそれが安心材料になります。なので、経営者保証がない場合に比べると、金利を低く設定することもできるわけです。
2023年4月からは、銀行に「経営者保証の説明義務」も課され、経営者保証を必要としない融資が、ますます広がりやすい環境となりました。とはいえ、黙っていればやはり経営者保証があたりまえ、ということもありえます。
いままでは経営者保証があたりまえでも、これからは、経営者保証を外すことを考えていきましょう。その際、「金利が少々高くなるのはかまわないので」という交渉方法があります。
経営者保証がない分、銀行のリスクが高まるというのなら、その分の金利は自社で負担する。だから、経営者保証なしの融資も検討してほしい。と、銀行に交渉するわけです。
1つの選択してとして、検討してみましょう。
既存融資がそのまま
いままでのケースとは、少しおもむきが変わりますが。新規融資を受ける場面において、「以前よりも、だいぶ低金利で融資を受けられた!」と喜んでいるなら、注意が必要です。
新規融資の金利は低くなったかもしれませんが、既存融資の金利は高いままかもしれません。なんらかの事情(市中金利が高かった、自社の業績が悪かったなど)によって、過去に受けた融資の金利が高かった… ということはありえます。
だとすれば、既存融資の金利負担は大きなままです。それも、残高がかなり減っているのであればよいものの(金利が高くても、支払う利息額は少額なので)、それでもない場合に放置するのもどうなのか?
この点、新規融資を受けるタイミングで、一本化(借り換え)するのは1つの方法です。結果として、既存融資の残高も含めて、新規の低い金利に置き換えることができます。
ただし、自社の業績が悪いときなどは、銀行も一本化は嫌うものですし、金利を下げるのも難しくなるでしょうから、業績が良いときをみはからって、相談をするのがおすすめです。
まとめ
銀行融資を受けるにあたって、借入金利ばかりを気にしている社長がいます。金利が下がって喜んでいる! のもよいですが。実は間違っていることもあるので気をつけましょう。
金利は、数ある融資条件の1つに過ぎません。金利よりもまず重視すべきこともある、ということを忘れないようにしましょう。
- 返済期間が短い
- 保証付き融資
- 不動産担保付き
- 経営者保証付き
- 既存融資がそのまま