節税目的の節税と、節税目的以外の節税と【銀行融資】

節税目的の節税と、節税目的以外の節税と【銀行融資】

社長が、興味を持つものの1つ「節税」について。大きく4つに分かれること、また、節税目的の節税は、銀行融資を受けにくくしてしまうこともあるので気をつけましょう、といったお話です。

目次

節税を4つに区分する

社長であれば、多かれ少なかれ「節税に興味がある」ものとおもいます。とはいえ、ひとくちに「節税」といってもいろいろです。あえて区分をするのであれば、大きく4つに分かれます↓

節税の4区分
  • 浪費的支出
  • 経費先取り
  • 投資的支出
  • 真の節税策

結論として、上記のうち、「浪費的支出」には注意しましょう。なぜなら、「節税目的の節税」であり、銀行融資を受けにくくもしてしまうからです(くわしくは後述)。

というわけで、会社の節税について、4つの区分とそれぞれのポイントをお話ししていきます。銀行融資の受けやすさにも関わるところです。

中小企業にとって、銀行融資は「資金調達の生命線」でもありますから、目先の税金(税務署の考え方)ばかりにとらわれるのではなく、銀行の考え方についても押さえておきましょう。

まずは、節税目的の節税から

冒頭、節税には「節税目的の節税」がある、4つの区分でいうと「浪費的支出」がそれにあたる、という話をしました。いっぽうで、「節税目的以外の節税」もあります。

まずは、「節税目的の節税」から確認していきましょう。

浪費的支出

4つの区分のうち、「浪費的支出」について。「節税目的の節税」にあたる、要注意の節税だといえます。

決算を前に、予想を上回る利益が出ていることから、予想を上回る税金が見込まれる… となった場合に、社長が「税金を払うくらいなら、経費を使う」と考えるのが典型例です。

経費を使うということは、すなわち、利益を減らすということであり、利益を減らせば税金が減る。これが社長の思惑になります。

たとえば、税率が 30%だとして、節税のために使う経費が 100万円だとすると。その経費を使うことにより、30万円の税金を減らすことができます(100万円 × 30%)。

ところが、税金が減った以上に、手元のおカネが減っていることが問題です。つまり、税金は 30万円減ったものの、手元のおカネは 100万円減ってしまった…。

もし、節税をしなければ、税金 30万円を払ったとしても、70万円のおカネは手元に残ります。この点、銀行は「貸したおカネを返してもらえるか?」を、預金残高で見ているのがポイントです。

なので、手元のおカネ(預金残高)を減らすと、銀行融資が受けにくくなります。また、銀行が見ているものは、おカネだけではありません。利益がどれくらいあるか? も見ています。

利益が多いほど、銀行融資が受けやすくなることは、社長であればご存知のことでしょう。にもかかわらず、経費を増やして利益を減らすのでは、ますます銀行融資が受けにくくなります。

というように、節税を目的とした節税(浪費的支出)には、デメリットばかりです。ちなみに、経費を使うこと自体が問題なのではありません。

浪費的支出の場合には、支出をしても「将来の利益が増えることに貢献しない」ところが問題なのです。具体的には、飲み食いに使うとか、必要以上に高級なクルマを買う、とか。

このあたり、後述する3つの節税とは「どう違うのか?」に注目をしましょう。

続いて、節税目的以外の節税も

では続いて、節税目的以外の節税を確認していきます。さきほどの、浪費的支出は「節税をするために支出する(結果、将来の利益は増えない)」という節税でしたが。

ここからは、節税そのものを目的とはしない節税になります。言い換えると、「結果的に、節税になってよかったね」ということです。

経費先取り

具体例を挙げると、固定資産の「特別償却」があります。特定の要件を満たしている場合に、通常の減価償却に加えて、より大きな額の償却ができる。というのが、特別償却です。

これにより、当期の経費が増えますので、利益が減って税金は少なくなります。ただし、特別償却は「将来の減価償却」を先取りしているに過ぎず、来期以降の経費が増える点には注意です。

つまり、ある固定資産について、経費(減価償却費)にできる総額は、特別償却があろうとなかろうと変わらない、ということになります。

それはそれとして、この「経費の先取り」は、浪費的支出のように「将来の利益が増えることに貢献しない」ものではありません。節税目的で、追加の支出をするものではないので、手元のおカネが減ることはないわけです。

また、経費を先取りするということは、それだけの利益が出ているからであり、銀行からは「利益に自信がある会社」として評価されることになります(融資が受けやすくなる)。

ほかにも経費先取りの例を挙げるのであれば、「倒産防止共済掛金(経営セーフティ共済)」です。掛金を経費(損金)として、掛金支出時の税金を減らす効果があります。

いっぽうで、解約をしたときには、それまで経費にしてきた金額が収入になるため、経費を先取りすることで「課税を繰り延べている」ということでもあります。

なお、掛金は「貯金」のようなものなので、浪費的支出のようにムダな支出をしているわけではありません。掛金分のおカネは、いずれ受け取ることができます。

連鎖倒産に備えて貯金をできる計画的な会社としても、銀行から評価されるのもメリットです。

投資的支出

たとえば、将来の売上・利益を増やすために、人材採用・教育のために支出をしたり、あたらしい商品・サービスの研究開発におカネを使ったり、広告宣伝費を投じたり。といったものが、投資的支出にあたります。

支出によって、経費が増えることから利益が減って、結果的には節税になります。同じ支出であっても、「将来の売上・利益を増やすため」という点が、浪費的支出とは異なるところです。

とはいえ、その支出で「本当に、将来の売上・利益が増えるのか?」というのは、未知数でもあります。銀行もまた、「疑いの目」を持って見ているものです。

なので、投資的支出のために融資を受けるのは、カンタンではありません。事業計画書にまとめるなどして、銀行を説得する必要があります。あるいは、自己資金で実行するかです。

ただ、自己資金にしても、あまりに投資的支出が多いと、心配になるのが銀行でもあります。繰り返しですが、「本当に、将来の売上・利益が増えるのか?」という心配です。

したがって、投資的支出が多いことで、あまり利益を減らしているようだと、融資が受けにくくなることはあるでしょう。そう考えると、自己資金であっても、銀行に対する説得が必要です。

そもそも、将来の売上・利益が増えなければ困るのは会社なのですから、実際に支出をする前に、事業計画書を策定・検討することは、銀行融資と関係なく大切なことだといえます。

真の節税策

さいごに、真の節税策です。などと、大仰な名称を付してしまいましたが、これこそが本当の節税にあたります。典型例は、「税額控除」です。たとえば、特定の要件を満たす固定資産の税額控除。

固定資産の購入金額に対して、一定割合の「税金を控除する」ことができます。これは、減価償却費とは別であるため、前述した「経費先取り」とは別モノです。

もちろん、税額控除を受けるために、別途支出も不要であり、まさに「結果としての節税」ということになります。節税目的の節税(節税をするための節税)とは、大きく異なるところです。

ただし、税額控除ができることを見逃してしまうと、節税効果も得られませんから、見逃さないように気をつけなければいけません。基本的には、税理士に確認をするのがよいでしょう。

税額控除にも、いろいろあります。利用頻度が高いものだと、社員への給与が一定割合以上に増加したときの税額控除とか。

見逃さないことに加えて、具体的な計算や申告書への記載もポイントであり、会社自身で対応するにはハードルの高さがあります。餅は餅屋ということでもあり、こういったところこそ、税理士のチカラを借りるのがよいでしょう。

いっぽうで、日ごろの「経理」については、税理士任せにはせず、できるだけ自社のチカラで取り組むのがおすすめです。税理士に任せるよりも速く、数字(業績)を把握できますし、銀行からも「管理能力が高い会社」だとの評価につながります。

まとめ

社長が、興味を持つものの1つ「節税」について。大きく4つに分かれること、また、節税目的の節税は、銀行融資を受けにくくしてしまうこともあるので気をつけましょう、といったお話をしました。

中小企業にとって、銀行融資は「資金調達の生命線」でもありますから、目先の税金(税務署の考え方)ばかりにとらわれるのではなく、銀行の考え方についても押さえておくことが大切です。

節税の4区分
  • 浪費的支出
  • 経費先取り
  • 投資的支出
  • 真の節税策
節税目的の節税と、節税目的以外の節税と【銀行融資】

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