ネット銀行の多用で起きる融資の問題3つ

ネット銀行の多用で起きる融資の問題3つ

ネット銀行をメインバンクにする会社が増えています。そのネット銀行は便利であるいっぽうで、融資を受けるにあたっては問題が起きうることを、社長は理解しておきましょう、というお話です。

目次

ネット銀行をメインバンクにする会社が増えている

いわゆる「ネット銀行(リアルの店舗を持たない銀行)」をメインバンクにする会社が増えている、との統計データがあります。

何をもってメインバンクと定義するのか、という問題はあるにせよ、ネット銀行を多用する会社が増えているということでしょう。たしかに、ネット銀行は便利ですから、それもわかります。

が、中小企業がネット銀行を多用することで起きる「融資の問題点」を、社長は理解しているでしょうか。つまり、銀行から融資を受けるにあたって、問題が起きうるということです。

おもなところでは3つ、次のような問題があります↓

ネット銀行の多用で起きる融資の問題3つ
  • 取引履歴の提示を求められる
  • 日本公庫の返済口座にはできない
  • 結果として、資金繰りが悪くなる

それではこのあと、順番に解説をしていきます。融資を必要とする会社であれば(ほとんどの会社がそうです)、必ず確認をしておきましょう。

ネット銀行の多用で起きる融資の問題3つ

取引履歴の提示を求められる

銀行に融資を申し込むと、「通帳を見せてください」と言われることがあります。口座内の取引から、経営・財務状況に問題がないかを確認するためです。

たとえば、A銀行に融資を申し込むにあたって、A銀行の口座内の取引については、当然、A銀行は把握できますし、把握をしています。ところが、B銀行の口座内の取引は把握できません。

そこで、A銀行からは「B銀行の通帳を見せてもらえますか」と言われることになるわけです。日本政策金融公庫から融資を受けるときなどはとくに、よくあるケースでしょう。

このとき、B銀行が「ネット銀行」だとすると、通帳はありませんので、取引履歴を印刷して提示することになります。というわけで、いつ見られてもいいようにしておきましょう。

この点、ネット銀行における取引がルーズになっている社長がいます。典型的なところでは、社長個人への送金がある。現金の引き出しが多い(使途がわからない)など。

そういった「ルーズ」な部分が見つかれば、必ず追及されることになります。ネット銀行内の取引に限ったことではありませんが、どういうわけかネット銀行はルーズになりがちなので注意です。

ちなみに、ルーズにしている会社が、取引履歴を銀行に見られるのはマズい…と考えて、改ざんした内容を銀行に提示するケースがあると聞きます。

なので、銀行は、その場で会社にログインしてもらい、パソコンやスマホの画面上で履歴を確認することもある、ということを覚えておきましょう。

銀行相手に、改ざんは通用しません。取引履歴は、ふだんから、いつ見られてもいいように整えておくことが大切です。

日本公庫の返済口座にはできない

公的金融機関である日本政策金融公庫(以下、日本公庫)から融資を受ける場合、民間金融機関の口座を、融資金の入金・返済口座として指定する必要があります。日本公庫には、預金機能がないからです。

この点、ネット銀行は基本的に、入金・返済口座に指定することはできません(投稿日現在、GMOあおぞらネット銀行のみ指定可)。

最近では、開業当初からネット銀行だけしか口座がない、という会社も散見されます。それだと、日本公庫から融資が受けられないので、気をつけましょう。

その日本公庫から融資を受けていない会社もありますが、わたしとしてはおすすめできません。日本公庫は中小企業にとって、唯一無二の資金調達先であり、ふだんからのお付き合いが大切です。

つまり、ふだんから融資を受けて関係づくりをしておくことで、いざというとき(たとえば、業績不振、自然災害、新型コロナなどの不測の事態)にも、融資による支援が受けやすくなります。

また、日本公庫から融資を受けることで、その融資金を「信用」にして、民間金融機関からさらに融資を受けやすくなるのもメリットです。

銀行にとって、自行の口座にある預金は「担保のようなもの」なので、預金残高が大きい銀行ほど融資が受けやすくなります。なので、融資を受けたい銀行の口座を、日本公庫の入金・返済口座として指定するのがおすすめです。

以上をふまえて、自社の銀行取引がネット銀行ばかりとなると、日本公庫から融資が受けられない、民間金融機関から受けられる融資も少なくなる、という問題点を理解しておきましょう。

結果として、資金繰りが悪くなる

ネット銀行ばかりだと、日本政策金融公庫から融資が受けられない、といいました。とはいえ、最近では、ネット銀行の融資を利用する会社も増えています。いわゆる「オンライン融資」です。

文字どおり、オンライン上で、申し込みから審査、入金手続きまで完結します。また、従来の銀行融資に比べて、申し込みから入金までのスピードが桁違いに速いのもメリットです。

ただし、現状では、従来の銀行融資に比べると「融資条件」はよくありません。たとえば、借入限度額が低い、返済期間が短い、金利が高いなど。結果として、オンライン融資ばかりだと、会社の資金繰りは悪くなります。

同じ借入をするのであれば、融資条件がよいほうから借りたほうがいい、ということはわかるでしょう。ネット銀行から500万円借りれば、基本的にはその分、リアル銀行からの借入余力は低下するのです。

なお、コスト面でいえば、ネット銀行には「振込手数料」が安い(あるいは無料)というメリットがあります。とはいえ、ネット銀行からの借入金利が高ければ、それも帳消し…ということはあるでしょう。

ネット銀行に比べると、リアル銀行の手数料は高いかもしれませんが、資金調達面ではメリットもあります。手数料は銀行にとっての収入ですから、ふだん手数料収入がある会社ほど、いざというときにも支援をしてもらえる可能性が高まります。

平時にあっても、事業支援(ビジネスマッチングや各種コンサル、提案)をしてもらいやすくもなるため、リアル銀行に支払う手数料は必ずしも高いとは言い切れないものです。

まとめ

ネット銀行をメインバンクにする会社が増えています。そのネット銀行は便利であるいっぽうで、融資を受けるにあたっては問題が起きうることを、社長は理解しておきましょう。

中小企業のほとんどは、銀行融資を必要とする状況にありますから、便利だからという理由だけでネット銀行を選んでいると、資金繰り・資金調達に支障をきたしてしまうので注意です。

ネット銀行の多用で起きる融資の問題3つ
  • 取引履歴の提示を求められる
  • 日本公庫の返済口座にはできない
  • 結果として、資金繰りが悪くなる
ネット銀行の多用で起きる融資の問題3つ

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