借入金が多いと感じるときに見るべき勘定科目

借入金が多いと感じるときに見るべき勘定科目

コロナを経て、借入金が多いと感じるかもしれません。そのときに、借入金の金額ばかりを見ていると、必要以上に不安を感じたり、かえって資金繰りを悪くしてしまいかねないので気をつけましょう。

目次

無理矢理、借入を減らそうとしたり。

本記事の投稿日は2023年9月21日、ちまたでは、ゼロゼロ融資の返済本格化が話題になっています。つまり、コロナ禍で増えた借入の返済がはじまり(据置期間がおわり)、その返済負担が重荷になっている会社が少なくない、という話です。

あわせて、「過剰債務」という表現も目立ちます。やはり、コロナ禍で増えた借入が「増えすぎ」だということであり、「借金が多すぎる」というのが過剰債務です。

とはいえ、社長が「借入金の金額」ばかりを見ていると、必要以上に不安を感じることになりかねません。本当は不安になる必要がないのに、無理矢理、借入を減らそうとしたり、その結果、資金繰りが悪化して、余計なストレスを招いたり…というのでは困ります。

そこで、借入金が多いと感じるときに見るべき勘定科目を押さえておきましょう。借入金の金額ばかりを見るのではなく、ほかの勘定科目の金額も見てみましょう、ということです。

では、見るべき勘定科目とは?おもには、次のとおりです↓

借入金が多いと感じるときに見るべき勘定科目
  • 預金
  • 売掛金、棚卸資産
  • 固定資産

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

借入金が多いと感じるときに見るべき勘定科目

預金

わかりやすいように、極端な例を挙げます。もし、1億円の借入金があっても、預金も1億円あったとしたら、その借入金はないのと同じですよね。いつでも、返済することができます。

だとすれば、預金がある分の借入金については、気にする必要はありません。もし、借入金が1億円あったとしても、預金が4,000万円あれば、実質的な借入金は6,000万円です。

銀行もまた、そのような見方をしていることを覚えておきましょう。なので、借入金の1億円という金額だけを見て、借入金が多いかどうか(過剰債務かどうか)を判断はできません。

この点、わたしは「預金を増やすための借入」を推奨もしています。「どこまで増やすか」という論点はあるものの、資金繰りに余裕をもたせるくらいまでは預金を増やしたいものです。

このとき、借入金の金額ばかりを見ていると、「こんなに借入して大丈夫かなぁ」と不安になってしまうでしょう。ですが、借入をすれば必ず、同時に預金も増えます。1億円借りれば、1億円の預金も増えるのです。

大丈夫かどうかを心配するのであれば、「借りた1億円のおカネをムダ使いしないかどうか」になります。心配の対象を間違えないようにしましょう。間違えると、資金繰りは悪くなります(=資金繰りの改善が進まない)。

なお、増えた預金を、借入をしている銀行に「定期預金」することはおすすめできません。銀行にとっては、担保のようなものなので、解約をしようとしても止められることが多くなるからです。

そうなると、自由には使えない預金となってしまいます。そもそも、定期預金をおすすめしませんが、どうしても定期預金をするのであれば(そうしないと、ムダ使いしてしまう!みたいな)、借入をしていない銀行にしましょう。

売掛金、棚卸資産

次に見るべき勘定科目は、売掛金と棚卸資産(在庫)です。売掛金とは、売上代金の回収を待っている金額であり、棚卸資産とは売却されておカネになるのを待っている金額をいいます。

つまり、売掛金も棚卸資産も、近い将来に現金化されるものであり、だとすれば「預金に近しいもの」だと言えるでしょう。

たとえば、売掛金が2,000万円、棚卸資産が1,000万円だとしたら。そのうちに、3,000万円の預金が増えるということです。なので、借入金のうち3,000万円については、ないのと同じだと考えることができます。銀行もまた、そのような考え方です。

なお、預金分の借入金はないのと同じだと考えられても、売掛金や棚卸資産分の借入金については、ないのと同じとは考えられない(=考え方を理解していない)社長もいますから、気をつけましょう。

ちなみに、売掛金や棚卸資産のなかに、不良資産や架空資産が混じっている場合には、話は変わってきます。たとえば、売掛金2,000万円のなかに、500万円の回収不能な売掛金(不良資産)があるとか。300万円は、架空売上にともなう売掛金(架空資産)だとか。

となると、実質的な売掛金は、1,200万円だけということになります(2,000万円−500万円−300万円)。棚卸資産についても、考え方は同じです。

というように、不良資産や架空資産があれば、その分の売掛金や棚卸資産は、預金に近しいものとは言えませんから、「その分の借入金はないのと同じ」だと考えることもできません。

銀行もそれがわかっているので、売掛金や棚卸資産の「内容」については、強い関心を持っています。内容について聞かれたときには、すぐに回答・説明できるように、社長は確認・準備をしておきましょう。

固定資産

さいごに、もうひとつ。固定資産も、見るべき勘定科目の1つです。わかりやすいところでは、製造業の「機械設備」など。値が張るモノが多いので、銀行借入をして買うことが少なくありません。

たとえば、1,000万円の機械設備を全額借入で買った場合には、購入直後は「機械設備1,000万円、借入金1,000万円」となります。機械設備は、たしかに1,000万円の価値があるのですから、これも預金に近しいもの、と考えることができるでしょう。

つまり、機械設備の金額分の借入は、ないのと同じです。

ところが、問題は購入したあと。減価償却によって、機械設備の金額は減少していきます。いっぽうで、機械設備の購入にともなう借入金も、返済によって減少していきます。

そのうえで、機械設備の金額分の「価値」はあるのかどうかです。価値については、時価(中古市場の相場)という見方もありますが、それよりは、「利益をあげられているか」が重要です。

さきほどの機械設備であれば、少なくとも「減価償却で減っていく分くらいの利益」をあげられているのかどうか。あげられていないということであれば、返済をするのに、預金を食いつぶしていることになりますから、結果として、設備投資の失敗を意味します。

すると、機械設備の購入にともなう借入(の残高)については、過剰債務だと言ってもよいでしょう。なので、社長は固定資産について、「利益をあげられているか」を確認し続けることが大切です。

この点、遊休不動産(未利用の土地など)があれば、売却をして現金化する、借入の返済に充てることが1つの選択肢となります。

まとめ

コロナを経て、借入金が多いと感じるかもしれません。そのときに、借入金の金額ばかりを見ていると、必要以上に不安を感じたり、かえって資金繰りを悪くしてしまいかねないので気をつけましょう。

借入金が多いと感じたら、本記事で挙げた、ほかの勘定科目の金額も確認してみることです。借入金の金額ほど、実は多いわけではないということもあります。

借入金が多いと感じるときに見るべき勘定科目
  • 預金
  • 売掛金、棚卸資産
  • 固定資産
借入金が多いと感じるときに見るべき勘定科目

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