銀行から、自社の工場や倉庫、店舗などを「見学したい」と言われることがあります。このとき、社長はどうしたらよいのか?銀行の意図を理解することで、社長がとるべき対応も見えてきます。
むしろ、お誘いするのがちょうどよい。
銀行から融資を受けている会社が、銀行から「見学したい」と言われたらどうするか?つまり、自社の工場や倉庫、店舗などを見たいと言われたら、社長はどうすればよいのか。
答えは、一択。「どうぞ、どうぞ、ぜひ見学してください」というほかありません。むしろ、銀行から言われずとも、社長のほうから「見学しませんか?」とお誘いするのがちょうどよいくらいです。
それはなぜなのか?理由として、銀行が見学したいと考える「意図」を理解しておきましょう。銀行の意図を理解することで、見学に対応する際の注意点も見えてくるはずです。
おもなところでは4つ、次のとおりになります↓
- 業績の裏付けをとるため
- 粉飾の裏付けをとるため
- 事業の裏付けをとるため
- 事業性評価を進めるため
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
銀行が工場・倉庫や店舗を見学したい意図
業績の裏付けをとるため
銀行が、融資審査をするときには「決算書の内容を重視する」というのは有名なハナシです。その内容が良い(黒字)にしても悪い(赤字)にしても、銀行は「裏付け」をとりたいと考えます。
黒字であれば、これからも続きそうか。赤字であれば、黒字に転換できそうかをはかるためです。というわけで、銀行は「業績の裏付け」をとるために、工場や倉庫、店舗などを見学したいとの意図があることを理解しておきましょう。
この点、業績が悪いときの見学には、とくに注意が必要です。銀行が、業績が悪いことの裏付けをとれば、業績改善は難しいと考えるため、融資が受けにくくなってしまいます。
では、銀行はどのような点に注目をしているのか?
いくつか例を挙げると、工場であれば「機械の稼働状況」です。使われていなそうな機械があったり、止まっている機械があると、銀行は「需要不足」をイメージします。未稼働の機械があれば、理由や状況などを説明できるとよいでしょう。
倉庫であれば、「整理整頓」ができているかは銀行の関心事です。商品を乱雑に扱うような会社の業績がふるわないことを、銀行は経験則として理解しています。整理整頓はふだんから心がけるべきことではありますが、銀行が見学するときにはとくに注意しましょう。
また、店舗であれば、銀行は「雰囲気」に目配りをしています。店員の身だしなみや、挨拶などを含めて、明るく良い雰囲気があるかどうか。服装が乱れていたり、挨拶ができなかったり、活気がないようすを感じると、銀行は業績が悪いことの裏付けとするものです。
粉飾の裏付けをとるため
ときおりニュースにもなりますが、粉飾決算をする会社があります。銀行も、それを当然わかっているので、粉飾決算には細心の注意を払っているわけです。その一環として、工場や倉庫、店舗などの見学を申し出ることがあります。
粉飾をしていけないのはあたりまえとして、粉飾などしていないのに誤解をされないよう気をつけましょう。では、どのような場合に誤解されやすくなるのか?
さきほども言いましたが、「整理整頓」ができていないのはよろしくありません。たとえば、在庫商品が、あちらこちらに(通路にまで…)散らばっていたりすると、「すべて管理できているのだろうか?」と見られることはあるでしょう。
在庫の管理が行き届かなければ、不良在庫も増えるものですから、結果として、不良在庫を隠すような粉飾につながることがイメージされます。
ですから、在庫が多い会社はとくに、在庫表と現物の突き合わせをしながら、銀行に見学をしてもらうとよいでしょう。すべての在庫を突き合わせるまでの必要はなく、主要な在庫について説明できるだけでも、情報開示の姿勢に銀行は安心を感じるものです。
事業の裏付けをとるため
銀行は、「事業の実態があるのか」ということも気にしています。極端をいえば、決算書上は商売をしているように見えても、実は「ペーパーカンパニー」みたいなこともあるわけです。
なので、お付き合いが浅い融資先についてはとくに、事業の裏付けをとるために、見学を申し出ることがあります。このとき、銀行はどのような点に注目をしているのか?
決算書に、工場や倉庫、店舗が資産計上されているようなら、それらが「実在するか」を確認しています。倉庫として〇〇億円と記載されているのに、実はそんなものはありませんでした…というケースもゼロではありません。
そこまで大きなウソではないにしても、決算書上は「あるはずの機械」が、実はありませんでした…ということもありえます。なので、銀行は「金額が大きい資産」を中心に、決算書の金額と現物との突き合わせをしていることを理解しておきましょう。
なので、社長もまた、見学の前には決算書(固定資産台帳)を確認しておき、それぞれの資産がどこにあるのかを説明できるように、準備をしておくことが大切です。
すると、決算書には計上されている資産が、実はありませんでしたということはあるものです。数年前に処分した機械の経理処理が漏れているとか。そういったことが見学の場で発覚して、社長があわてるようだと、銀行の心象も悪くなってしまいますから気をつけましょう。
事業性評価を進めるため
最近は耳にする機会も増えた「事業性評価」。なにそれ?ということがないように、社長も「事業性評価」については勉強しておきましょう。端的にいうと、「事業の内容や将来性を評価する」考え方をいいます。
つまり、従来のように「決算書の良し悪しや、担保・保証の有無」にばかり依存しない、ということであり、銀行はもっと「会社の商売」をよく見ましょう、ということです。
事業性評価は、金融庁が銀行に促しているものであり、ゆっくりながらも現場への浸透が進んでいます。その事業性評価を進めるにあたって、見学が役立ちます。
銀行が、工場や倉庫、店舗などを見学することで、融資先の商売をより理解しやすくなるからですね。なので、事業性評価を目的に、銀行が見学を申し出ることがあるわけですが、むしろ、社長のほうから見学を勧めるのがよいことはわかるでしょう。
事業性評価が進めば、融資の可能性は広がりますし、融資以外にも、銀行によるビジネスマッチングやコンサルティングといった支援を受けやすくなります。
逆に、事業性評価が進まないと、従来の「決算書ありき、担保・保証ありき」の融資に限られ、融資以外の支援も受けられない…というのでは、会社にとっては損だといえるでしょう。
というわけで、社長は折を見て、銀行に見学の機会をつくるのがおすすめです。
まとめ
銀行から、自社の工場や倉庫、店舗などを「見学したい」と言われることがあります。このとき、社長はどうしたらよいのか?結論、見学してもらうの一択です。
そのうえで、銀行の意図を理解して、社長が見学に対応する際の注意点を押さえておきましょう。その後の融資の受けやすさにもつながるところです。
- 業績の裏付けをとるため
- 粉飾の裏付けをとるため
- 事業の裏付けをとるため
- 事業性評価を進めるため