社長が陥る値下げ戦略3つの過ち

社長が陥る値下げ戦略3つの過ち

世の中の物価が上がっているときに、自社が販売価格を据え置くことは実質的な値下げです。では、値下げをしている社長が、意外にも気づいていない過ちとは?について、お話をします。

目次

値上げしない=値下げ

社長が取りうる戦略の1つに「値下げ」があります。

つまり、販売価格を下げて、客数を取りにいこうとする考え方です。ちなみに、世の中の物価が上がっているときに、自社は販売価格を据え置くこともまた、実質的には値下げだといえます。

まさにいまは、物価高騰が続いているので、「値上げしない=値下げ」であることは理解しておいたほうがよいでしょう。そのうえで、値下げ戦略が抱える3つの過ちについてお話をします。

値下げをしている社長が、意外にも気づいていない過ちでもあるため、ここで確認をしておきましょう。具体的には次のとおりです↓

社長が陥る値下げ戦略3つの過ち
  • 経営の難易度が上がる
  • 顧客層の質が悪くなる
  • 黒字が出しづらくなる

それではこのあと、順番に説明をしていきます。

社長が陥る値下げ戦略3つの過ち

経営の難易度が上がる

安くすれば売れる、と考えている社長がいます。たしかに、そのような一面もあるでしょう。ところが、ハナシはそうカンタンではないことを、社長は理解しておかなければいけません。

わかりやすいように、少し極端な例を挙げることにします。1個10円の駄菓子を10万個売るのと、1個1万円の高級ケーキを100セット売るのと、どちらが難しい商売か?

なお、どちらも売上総額は100万円です。原価率の違いはひとまずさておいて、売上総額だけを考えたときに、難易度が高いのは前者(1個10円の駄菓子を10万個売る)だといえます。

だって、10万個も買ってくれるだけのお客さまがいなければいけません。仮に、1人のお客さまが1個しか買ってくれないとしたら、10万人のお客さまがいなければ成り立たないわけです。

いっぽう、1個1万円の高級ケーキはどうでしょう。100人のお客さまがいれば成り立ちます。「お客さまの数」という点で、10万人に比べれば現実的だと言ってよいでしょう。

安いほう(10円の駄菓子)が、お客さまは手に取りやすい一面があるのはたしかです。ところが、安い分だけ多くのお客さまに買ってもらわなければいけない。その難易度を見落としている社長がいます。

値下げをするということは、10円の駄菓子を売りにいくということであり、従来よりも、経営の難易度をみずから上げる行為であることを理解しておきましょう。

値下げをすれば、客数が少々増えるくらいでは「売上減」になってしまうことはあるのです。だから、「値下げをしたのに、結局、売上総額は減ってしまいました…」という例は、枚挙にいとまがありません。

顧客層の質が悪くなる

例を変えます。自社がこれまで、1杯500円のラーメンを売っていたとして。世の中の物価が上がっているときに、販売価格を据え置くか、値上げをするか。さぁ、どっち?

人がよい社長ほど、価格を据え置こうとするものです。その結果、どうなるか。誤解を恐れずにいえば、お客さまの「質」が悪くなります。それはいったいどういうことなのか。

物価が高騰しているのに、販売価格を据え置くために、材料をより安いものに切り替えることがよくあります。すると、品質(味)が落ちることになるでしょう。

もっとも、1回くらい材料を切り替えたからといって、お客さまは気づかないかもしれません。ですが、物価高騰を背景に、2回、3回と材料を切り替えていったらどうなるか。

さすがに、お客さまも気がつきます。そして、「あの店は味が落ちた」という評判が流れるのです。こうなると、信用を取り戻すのはカンタンではありません。

それでもなお、ラーメンを食べ続けてくれるお客さまがいるとしたら。それは「500円しか払えないお客さま」です。社長がシビレを切らして値上げをした場合、その客は離れていくでしょう。

このときすでに、「値上げされてもおいしいラーメンを食べたい」と考える客は、悪評判によってお店に対する信用を失っていますから、そうそう戻ってくることはありません。

というわけで、値上げをするも時すでに遅し。壊滅的に客数が減ってはおしまいです。つまり、値下げをする(値上げをしない)と、顧客層の質が悪くなることを覚えておきましょう。「安くないと買わない客」ばかりになってしまうのです。

だとすると、値上げとは言うなれば、「顧客層の質を上げる」ことだとわかるでしょう。

値上げによって、これまでのお客さまが離れることはあります。でもそれは、安くないと買わない客であり、自社にとって「本当に大事なお客さま」ではありません。

本当に大事なお客さまとは、自社商品の価値を理解してくれているお客さまです。その価値(品質)を守るためには、値上げも必要です。値上げをしてでも価値を守るとは、大事なお客さまからの信用を守ることでもあります。

黒字が出しづらくなる

さきほど、値下げをすると「経営の難易度が上がる」という話をしました。同じ100万円の売上総額でも、値下げをするとその達成が難しくなる、という話です。

関連して、値下げをすれば売上だけではなく、利益の達成も難しくなります。たとえば、これまで1個10万円(原価7万円)で売っていた商品を、1万円値下げする例で考えてみましょう。

これまでは、1個販売したときの利益は、10万円ー7万円で3万円でした。1万円値下げをするにあたり、原価が変わらなければ、利益は2万円に減ってしまいます。

その減ってしまった利益は、数を売って補えばいいだろうと考えるわけですが。それが難易度を上げる行為であることは、すでにお話をしたとおりです。

だったら、原価を下げればいいだろう、とおもわれるかもしれませんが。原価を下げるにも限度があります。仕入先に1回は価格交渉ができたとしても、2回、3回となれば、そうそう受け入れられるものではないでしょう。

だったら、より安価な仕入れができる先に切り替える。と考えるのであれば、結局は品質が落ちて、お客さまからの信用を失い、困ったことになるのもすでにお話をしたとおりです。

ゆえに、値下げをしてなお品質を維持しようとすると、単純に利益を減らすことになります。つまり、会社は黒字を出しづらくなるということです。

もちろんこれは、物価が上がっているときに値上げをしない場合も、実質的には同様になります。物価高騰によって仕入値は上がるのに、販売価格を据え置けば、商品1個あたりの利益は減るからです。

黒字が出しづらくなれば、当然、資金繰りも悪くなります。そのようすを見た銀行も、融資を躊躇するようになりますから、資金繰りはいっそう悪くなる…という悪循環です。

したがって、値下げや、物価高騰時の価格据え置きは「命取り」になりうることを、社長は理解しておきましょう。

まとめ

世の中の物価が上がっているときに、自社が販売価格を据え置くことは実質的な値下げです。では、値下げをしている社長が、意外にも気づいていない過ちとは?について、お話をしました。

その過ちに、自社が陥ってはいないか。ここで、確認をしておきましょう。知らずにいると、きわめて厳しい経営状況をしいられることになりかねません。

社長が陥る値下げ戦略3つの過ち
  • 経営の難易度が上がる
  • 顧客層の質が悪くなる
  • 黒字が出しづらくなる
社長が陥る値下げ戦略3つの過ち

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