会社の銀行融資には、保証付き融資とプロパー融資とがありますが。保証付き融資には保証枠があることをふまえて、いまこそ、その保証枠を空けるようにしましょう。という話をします。
ふだんから限度いっぱいまで
会社が民間金融機関から融資を受ける場合には、大きく分けて2つ、「信用保証協会の保証付き融資」と「プロパー融資」があります。
このうち、保証付き融資とは、信用保証協会の保証が付いた融資であり、会社が返済できなくなった場合には、信用保証協会が肩代わりをする融資です。したがって、銀行にとってはリスクが小さく、貸しやすい融資だといえます。
いっぽうのプロパー融資には、信用保証協会の保証がなく、会社が返済できなくなった場合には、銀行が100%損をかぶる融資です。ゆえに、銀行にとってはリスクが大きく、保証付き融資に比べると貸しにくい融資だといえます。
ならば、会社は、銀行が貸しやすい保証付き融資を借りればいいじゃないか、とはいきません。なぜなら、保証付き融資には「保証枠(=限度枠)」があるからです。
具体的には、一般保証・無担保であれば、8,000万円が保証枠になります。ただし、会社の規模や状況によっては、それよりも少ない額が限度になることもある点には注意です。
1つの目安として、「年間売上高の3〜5割くらい」と覚えておくとよいでしょう。つまり、8,000万円か「年間売上高の3〜5割」のどちらか少ないほうが、限度になるということです。
そのうえで、いまこそ保証付き融資の保証枠を空けましょう。ふだんから限度いっぱいまで保証付き融資を借りるのではなく、限度までの余裕を残しておきましょう。これが、今回のお話になります。
ではなぜ「いまこそ」なのか。おもな理由は次のとおりです↓
- 保証付き融資が厳しくなる
- プロパー融資を受けるため
- 融資条件を悪くしないため
このあと、順番に解説をしていきます。
いまこそ保証付き融資の保証枠を空ける理由
保証付き融資が厳しくなる
コロナ禍では、多くの会社が「ゼロゼロ融資(実質無担保・無利子の融資)」を利用しました。これもまた、保証付き融資ですが、その「代位弁済」が増えています。
代位弁済とは、会社が返済することができずに、信用保証協会が肩代わりをすることです。ちなみに、信用保証協会が肩代わりをするのは、銀行に対してであり、会社の「債務」が消えるわけではありません。
なので、代位弁済後、会社は信用保証協会に対して、返済を続けることになります。
それはさておき、代位弁済が増えていることから、信用保証協会はこれまでよりも審査を厳しくしているといってよいでしょう。つまり、保証付き融資が借りにくくなっているということです。
また、保証付き融資ばかりで、信用保証協会ばかりがリスクを負うのではなく、民間金融機関もまたリスクを負うべきだ、との考え方も広まっています。結果、プロパー融資を受けていない会社は、保証付き融資が受けにくくなるわけです。
というように、借りやすいはずだった保証付き融資も、変化をしつつあり、以前のようにはカンタンに借りられなくなっていることを、社長は理解しておきましょう。
ただそれでも、プロパー融資に比べれば借りやすいという一面はありますから、いざというときに備えて、保証付き融資の保証枠を空けておくことが大切です。
プロパー融資を受けるため
保証付き融資の保証枠を空けておくためには、プロパー融資を増やす必要があります。とはいえ、プロパー融資は銀行が貸しにくい融資であることは前述したとおりです。
この点、保証付き融資の保証枠を空けておくことが、プロパー融資を受けるのに役立ちます。なぜなら、保証枠に空きがあるということは、銀行にとっての「安心材料」になるからです。
繰り返しになりますが、銀行にとって保証付き融資は、プロパー融資よりも貸しやすい融資です。その保証付き融資の保証枠が残っていれば、会社が厳しいときでも、融資できる可能性は高まります。
だとすれば、プロパー融資で貸したとしても、会社が厳しいときには保証付き融資を貸すことで、プロパー融資の回収が滞ることは防げるだろう。というのが、銀行の考えです。
逆に、保証付き融資の保証枠が空いていなければ、プロパー融資の回収が滞る可能性が高いので、銀行としてはプロパー融資をしづらくなります。
また、前述したとおり、銀行は保証付き融資ばかりではなく、プロパー融資もしなければいけないという考え方から、できることならプロパー融資を増やそうとしていることも覚えておきましょう。
さらには、日銀のマイナス金利解除・利上げが予定されています。金利のある世界となれば、貸し出しを増やそうとする銀行もあるでしょう。とはいえ、保証付き融資には限度があるのですから、プロパー融資を増やしていくことになります。
このとき、保証付き融資の保証枠を空けておくことで、プロパー融資が受けやすくもなるはずです。
融資条件を悪くしないため
金利のある世界、という話をしました。中長期的に見れば、融資金利が上がることは間違いありません。これまでが超低金利だったのですから当然です。
では、世の中の金利が上がったときに、自社の融資金利を少しでも下げるにはどうしたらよいか?ひとつは、自社が「良い会社」であることです。
良い会社の定義として、たとえば、「利益がたくさん出ている」といったことが挙げられます。この点、「保証付き融資の保証枠が空いている」のも、良い会社のひとつだといえるでしょう。
前述したとおり、保証枠が空いている会社には、いざというときに保証付き融資を受けられる可能性がある、という「安心材料」があるからです。
結果、プロパー融資を受けるにあたって、融資金利を引き下げる材料にもなりえます。
また、最近では、経営者保証なしの融資が増えている点も注目です。金融庁の要請もあって、銀行は、「経営者保証なしの融資を増やしたい」という状況にあります。
とはいえ、経営者保証なしにできるのは「良い会社」に限られるわけで、だとすれば、ここでも「保証付き融資の保証枠が空いている」ことが役に立つことはあるでしょう。
というように、金利や経営者保証にも、変化が起きていることをふまえて、保証付き融資を考えることが大切になります。これまでと同じ感覚で、保証付き融資を考えないことです。
まとめ
会社の銀行融資には、保証付き融資とプロパー融資とがありますが。保証付き融資には保証枠があることをふまえて、いまこそ、その保証枠を空けるようにしましょう。という話をしました。
借りやすいからといって、保証付き融資ばかりを受けることがないように注意が必要です。融資条件が悪くなってしまったり、いざというときに融資が受けられなくなってしまいます。
- 保証付き融資が厳しくなる
- プロパー融資を受けるため
- 融資条件を悪くしないため