銀行から、肩代わり融資の提案をされることはあるものです。これって、自社が優良企業の証なのか?と喜ぶのであれば気をつけましょう。必ずしもそうとはいえないケースがあるからです。
肩代わり提案とは何か?
ある銀行から、肩代わり提案をされた。すると、「これって、自社が優良企業の証なのか!」と喜ぶ社長がいます。では、そもそも「肩代わり提案」とはどのようなものなのか?
たとえば、A銀行に対する借入残高が3,000万円あるとして。そこへ、B銀行がやってきて「3,000万円を融資します。金利は低くしておきますので、A銀行の借入を返済しちゃいましょう」みたいな提案です。
また、既存の3,000万円分だけではなく、「さらに、1,000万円を上乗せします」といった提案もありえます。
これを聞いた社長は「それは、良い提案だ」と考え、そのように自社に有利な提案をしてもらえるのは「これって、自社が優良企業の証なのか!」と喜ぶことになるわけです。
たしかに、そういったケース(自社が優良企業)もありますが、必ずしもそうとは言い切れないケースもあります。という点では、気をつけなければいけません。
もし、自社を優良企業だと勘違いすると、「どの銀行からでも借りられる」との勘違いにもつながります。結果、「おもったようには借りられない…」となるのは、困ったことでしょう。
では、肩代わり提案をされたからといって、自社が優良企業だとは言い切れないケースとは、具体的にどのようなケースなのか?
保証付き融資がほしいだけ
肩代わり提案の内容に、注目をしてみましょう。さきほどの例でいうと、もともとの借入、つまり、A銀行に対する借入残高は3,000万円でした。この借入の中身はどうなのか?
わかりやすいのは、3,000万円すべてが「信用保証協会の保証付き融資」であり、それをB銀行が「まるまる保証付き融資で借り換える」という提案です。
保証付き融資を保証付き融資で借り換えるなんて、意味があるのか。信用保証協会的にOKなのか。と、おもわれるかもしれませんが。
借り換えをすることで、資金繰りが改善する(複数本の借入をまとめる、金利が下がるなど)といった「合理的」な理由があるのであれば、意味がありますし、信用保証協会的にもOKです。
それはさておき、B銀行の狙いは何なのか?
もはや、いうまでもありませんが、保証付き融資による「保全」です。保証付き融資は、会社が返済をできない場合には、信用保証協会が代わりに返済をしてくれるため(代位弁済)、銀行にとっては「安心・安全」な融資としてのメリットがあります。
同じ3,000万円を貸すのでも、プロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)に比べて、銀行は回収不能リスクを抑えられるのですから、「保証付き融資で貸したい」のが銀行の本音です。
というわけで、B銀行は「自社が優良企業だから」というよりも、「保証付き融資で貸せるから」という狙いで、肩代わり提案をしているものと考えられます。
さぁ、どうしたものか?
B銀行の狙いがわかったところで、社長はどうするか。
保証付き融資だろうと何だろうと、資金繰りが改善する(複数本の借入をまとめることで毎月の返済額が減る、金利が下がるなど)ならいいなじゃないか。というのも、1つの考え方ではあります。
が、もう少し長い目で見ることも大切です。たとえば、肩代わりされる側のA銀行が、保証付き融資3,000万円のほかにも、プロパー融資をしてくれていたとします。
前述したとおり、プロパー融資とは銀行にとってリスクのある融資です。にもかかわらず、プロパー融資をしてくれていたということは、A銀行はリスクを負ってくれていたということです。
そのうえで、保証付き融資をB銀行に肩代わりされたとしたらどうでしょう。A銀行がリスクを負っていたのは、融資のいちぶを保証付き融資によってリスク軽減していたからだといえます。
ところが、その保証付き融資がなくなってしまうのだとしたら…A銀行はプロパー融資だけとなり、リスクの軽減はなくなってしまいます、こうなると、A銀行はそれ以上の融資をする気にもなれないでしょう。
また、自行の融資をB銀行に「盗られた」のだとすれば、おもしろくもありません。すると、自社とA銀行との関係性も壊れますから、やはり、今後はA銀行からの融資は難しいものがあります。
それでもなおB銀行からの提案を受けるなら、「保証付き融資+プロパー融資」が必須だと考えておきましょう。つまり、いままでのA銀行のように、B銀行にもリスクを負ってもらうのです。
繰り返しになりますが、銀行がプロパー融資をするということは、リスクを負うということであり、リスクを負うということは「そうカンタンには引けなくなる」ということでもあります。
自社の業績がちょっと悪くなったからといって、すぐに貸し渋り・貸し剥がしができません。そんなことをすれば、自社はつぶれてしまい、そうなれば、銀行はプロパー融資を回収できずに損失を負うことになるからです。
なので、プロパー融資をしているような銀行は、自社のピンチにも「改善の余地がある」かぎりは、積極的に支援をしようと考えます。その典型例が「メインバンク」です。
話を戻して、B銀行からの提案を受けるなら、「保証付き融資+プロパー融資」が必須だと考えておきましょう。保証付き融資だけで肩代わりをした結果、A銀行との関係は絶たれ、B銀行もいざというときには知らんぷり…というのでは困ってしまいます。
まとめ
銀行から、肩代わり融資の提案をされることはあるものです。これって、自社が優良企業の証なのか?と喜ぶのであれば気をつけましょう。必ずしもそうとはいえないケースがあるからです。
それでもなお、提案を受け入れるのであれば、「保証付き融資+プロパー融資」が必須であることを忘れてはいけません。