必要がないおカネは借りるな!の誤り

必要がないおカネは借りるな!の誤り

必要がないおカネは借りるな、というアドバイスがあります。もっともらしいハナシではあるものの、誤りもあるので気をつけましょう。資金繰りを悪くしてしまうので、というお話です。

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思考停止で納得してないか

会社の銀行融資について。必要がないおカネは借りるな!というアドバイスがあります。これを聞いて、何をおもうか。わたしは「誤りがある」と考えます。

では、どこに誤りがあるのか?それは、「必要がないおカネ」の部分です。厳密には、誤りというか「定義があいまいなのではないか」との問題提起でもあります。

つまり、「必要がないおカネ」ってどういうこと?具体的にいくらなの?ということであって、さらにいえば、多くの中小企業にあっては「必要がないおカネ」なんてある?ということです。

必要がないおカネは借りるな!とは、一見するともっともらしいハナシであり、思考停止で納得してしまわないように気をつけなければいけません。

というわけで。このあと、「必要がないおカネは借りるな!の誤り」について、正していくことにしましょう。資金繰りの良し悪しにも直結する、大事なお話です。

必要がないおカネとは、具体的に

繰り返しですが、多くの中小企業にあっては「必要がないおカネ」なんてある?と、わたしは考えています。

実際に、多くの社長は「もっとおカネがあったらいいな」と考えているものではないでしょうか。だとすれば、必要がないおカネは借りるな!とのアドバイスは現実的ではありません。

また、世の中なにが起きるかわからないことを考えると、それに備えるおカネも必要です。新型コロナをへて、実感した社長は少なくないものと想像します。

では、それくらいのおカネを備えておけばよいのか?あればあるほどいいわけですが、それもまた現実的ではありません。そこで、折り合いをつけたるための目安が「平均月商の6か月分」です。

平均月商、つまり「年間売上高÷12か月」の6ヶ月分の預金を持ちましょう、ということになります。それくらいのおカネがあれば、いざというときの備えにもなりますし、なにかあたらしいことをはじめようというときにも、動き出しやすくなるでしょう。

ゆえに、平均月商の6ヶ月分の預金が、現実的に「必要なおカネ」の目安だと、わたしは考えています。では、それだけの預金を持っている中小企業がどれくらいあるのか?

割合でいえば、きわめて少数派です(ほとんどが、平均月商の2〜3か月分に満たない)。であるならば、必要がないおカネは借りるな!というアドバイスが通用する中小企業もまた、きわめて少数派だということになります。

ちなみに、会社が必要とするおカネを、一律に「平均月商」ではかるのには問題があるのではないか?とおもわれるかもしれませんが。それについては、いずれ場をあらためてお話ししましょう。

借りすぎる、とはどういうことか

話を戻して、必要がないおカネを借りるな!とのアドバイスについて。これは、必要がないおカネまで借りるのは借りすぎだ!という注意喚起でもあります。

たしかに、借りすぎはよくありません。とはいえ、そもそも借入すること自体、「借りすぎ」にはならないことは理解しておいたほうがよいでしょう。

たとえば、1,000万円を銀行から借入するとして。このとき、負債が1,000万円増えますが、同時に、1,000万円の資産(預金)も増えます。行って来いですから、実質的に負債は無いのといっしょです。

にもかかわらず、「借りすぎ」などという事態が起こるのは、借りたおカネを「ムダ使い」してしまうからにほかなりません(赤字補てんに使う、利益を生み出さない資産を買うとか)。

前述したとおり、平均月商の6ヶ月分の預金を持つために、わたしはよく「借入をしましょう」といっています。つまり、借りてでもおカネを持つ、ということです。

すると、「それは借りすぎだろう!」との反論もあるわけですが、借りる時点では借りすぎにならないことは、お話をしました。その反論には誤りがある、ということになります。

すると、こんどは「それでも、自己資本比率が下がってしまうだろう!」との反論はあるもので。たしかに、自己資本比率は下がります。ですが、それも「ていど加減」です。

結論をいえば、「自己資本比率>20%」をキープできるのであれば、借入による自己資本比率の低下をそれほど気にする必要はありません。

むしろ、自己資本比率が高い「完全無借金」の会社で、預金はほとんどありませんでした…というほうが、よほど危険です。銀行もまた、そういう会社を警戒しています。

誤解を恐れずにいえば、だいじなのは、自己資本比率よりも預金残高です。自己資本比率がひと桁になるほど低いのは問題ですが、そこそこでいい(>20%)、と考えておくとよいでしょう。

いつでも借りられる、という詭弁

ふたたび話を戻して、必要がないおカネを借りるな!とのアドバイスについて。業績がよければ、いつだって銀行借入はできる。だから、必要がないおカネを借りることはない!との説明もあります。

銀行にも「都合」がある以上、自社の業績がよいからといって、必ずしも借りれるわけではありません。ですが、そこは一歩譲って、業績がよければ借りられるものとします。

ただそれでも、いつだって銀行借入はできるというのは「言いすぎ」でしょう。なぜなら、「業績がよければ」との前提が、多くの中小企業では成り立たないからです。

長く事業を続けていれば、事業は山あり谷ありです。とくに中小企業は、大企業ほどには事業が安定しませんから、業績がよいときばかりではありません。

だとすれば、「業績がよければ、いつだって銀行借入できる」など、現実を無視した詭弁だといえます。なので、業績が悪くなったときのことも想定して、業績がよいうち・借りやすいうちにできるだけ借りておきましょう、というのが現実的なアドバイスになるでしょう。

ややもすれば、「できるだけ借りておく」ということが、余計な借入に見えるのかもしれません。ですが、「いま」は余計だとしても、「将来」は必要になるおカネかもしれません。

必要なおカネとして、「平均月商の6か月分」との目安もお話をしました。将来、必要になるかもしれないおカネとして、借りられるときに借りておくことを考えましょう。

いつでも借りられる、という考え方には危険があります。

まとめ

必要がないおカネは借りるな、というアドバイスがあります。もっともらしいハナシではあるものの、誤りもあるので気をつけましょう。資金繰りを悪くしてしまうので、というお話をしました。

そもそも「必要がないおカネ」とはどういうことなのか?そこから、考えてみましょう。多くの中小企業にあっては、「必要がないおカネ」なんてなかったりもするものです。

必要がないおカネは借りるな!の誤り

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