日銀による、マイナス金利の解除が決まりました。金利も上がることだし、繰り上げ返済をしようかな…と、考えるのであれば気をつけましょう。このタイミングでの繰り上げ返済にはデメリットがあります。
マイナス金利の解除と、繰り上げ返済のデメリットと
きょうは、2024年3月21日。つい先日、日銀によるマイナス金利の解除が決まりました。17年ぶりの利上げとなり、ちまたは「金利のある世界」がやってくる!というハナシでもちきりです。
とはいえ、まだしばらくは「どんどん利上げ」の状況ではなく(現状、それが日銀の見解でもあるし)、本格的な金利上昇はまだ先だとおもわれている社長もいるでしょう。
ただ、いっぽうで、銀行は着々と利上げの準備を進めており、融資の現場では「すでに融資金利が上がりはじめている」のも事実です。「他行が上げれば、ウチも上げる」というのが銀行の世界。この動きは連鎖していくものと推測します。
また、融資金利が上がる原因は、政策金利の上昇だけではありません。いまは、銀行再編(提携・統合・合併)が進んでいるところであり、銀行の数が減ったり、銀行どうしの争いが少なくなれば、行き過ぎた低金利(融資先獲得合戦による)は不要となります。
結果として、この先はこれまでよりも金利が上昇していくことになるわけです。
と、少し話がそれてしまいましたが、マイナス金利の解除を迎えたいま、銀行融資において社長が気をつけるべきこと。その1つが、繰り上げ返済です。
このタイミングでの繰り上げ返済には、次のようなデメリットがあることを理解しておきましょう↓
- 次に借りるときの金利上昇
- 次に借りるときには借りにくい
- 預金をほしがる銀行に応えられない
これらについて、このあと順番に解説をしていきます。
いま繰り上げ返済することのデメリット
次に借りるときの金利上昇
マイナス金利が解除されたということは、長い目で見れば、利上げが進むということです。冒頭でもふれたとおり、いまは「どんどん利上げ」ではないにせよ、中長期的には利上げが進むものと考えられます。
だとすれば、いま借りるよりも、あとになって借りるほうが融資金利が高くなる、と考えるのが自然でしょう。あとになって借りるなら、いま借りたままにしておくのが得策だということです。
ところが、いま手元におカネがあると、目先の利息支払いを惜しんで、繰り上げ返済をしたがる社長がいます。そして、あとになって「やっぱりおカネが足りない…」と借入をすることになる。結果として、金利が上がってしまい、むしろ高くつく…
ということは、考えておいたほうがよいでしょう。それでも、いま手元におカネがあると、将来、おカネが足りなくなることを想像できないものでもあります。だから、繰り上げ返済をする社長が少なくないのです。
ところが、多くの中小企業(というか、ほとんどの中小企業)が、将来にわたって借入を必要としています。つまり、「いつかはまた借入をする」という状況にあるわけです。
だとすれば、いま借りたままにしておくのも、あとになって借りるのも同じこと。いま借りたままにしておくほうが金利が低くてすむのであれば、そのほうがよいはずです。目先の金利支払いにとらわれず、長い目で金利を考えるようにしましょう。
次に借りるときには借りにくい
いずれ世の中の金利も上がり、融資金利も上がるとどうなるか。銀行は、貸し渋るようになります。
いやいや、銀行は貸してナンボの商売でしょう?金利が高いほど儲かるのだから、逆に、どんどん貸したがるでしょう?と、おもわれるかもしれません。ですが、それは違います。
たとえば、これまでA社とB社に1億円ずつ融資をしていた銀行があったとします。ではもし、融資金利が2倍になったとしたら…銀行は、A社かB社のどちらかいっぽうに融資をするだけで、これまでと同じ利息をかせぐことが可能です。
銀行が融資をするにも、手間と時間がかかります。銀行員も忙しいのですから(人手不足もあるし)、ラクにかせげるほうがよいでしょう。
この点、A社がB社に比べて、手間がかかる会社だとしたら。金利のある世界ともなれば、銀行は「B社にだけ融資をすればいっか」と考えるようになります。その分、B社の融資を増やせば、銀行はラクにかせげるようにもなるわけです。
さきほど、銀行は貸し渋るようになるといいました。正確には、「時間や手間がかかる会社には貸し渋るようになる」ということです。よって、いままでは融資を受けられていた会社も、融資金利が上がっていく過程で借りにくくなることが考えられます。
とくに、業績が悪い会社・業績改善が進まない会社や、銀行対応が悪い会社(試算表や資金繰り表などをつくっていない会社)は、注意が必要です。
次に借りるときには借りにくくなっていることを考えれば、「すでに借りられているおカネを、わざわざ繰り上げ返済することもないのではないか」という話をしています。
預金をほしがる銀行に応えられない
金利のある世界で、銀行は預金をほしがるようになります。あずかった預金を元手に、融資を増やしたり、運用を増やしたりすれば、銀行はより儲かるからです。
というわけで、大手銀行を中心に、預金獲得合戦がはじまっています。これからは、これまで以上に、銀行から預金を求められることもあるでしょう。だとすれば、預金を増やすことで、会社は銀行交渉がしやすくなるとわかります。
つまり、金利を引き下げる、信用保証協会の保証なしにしてもらう(プロパー融資)、経営者保証をなしにしてもらう、といった交渉がとおりやすくなる、ということです。
この点、預金を増やす方法として、日本政策金融公庫からの融資を利用することが挙げられます。日本政策金融公庫は融資専門の金融機関であり、預金ができないので、借りたおカネは別の銀行にあずけなければいけません。
だとすれば、日本政策金融公庫から融資を受けることで、ほかの銀行の預金を増やすことができます。逆に、日本政策金融公庫から借りたおカネを繰り上げ返済すれば、その預金が減ってしまうことに気づきましょう。
ですから、いまある日本政策金融公庫からの借入を繰り上げ返済することは、預金をほしがる銀行の思いに反することになってしまうわけです。すると、前述したような交渉がしづらくなったり、そもそも融資が受けにくくなることも考えられます。
コロナのときに借入をしたけど、据置期間もおわって返済もはじまったことだし、繰り上げ返済をしようと考える社長は少なくないようです。そのデメリットは理解しておきましょう。
まとめ
日銀による、マイナス金利の解除が決まりました。金利も上がることだし、繰り上げ返済をしようかな…と、考えるのであれば気をつけましょう。このタイミングでの繰り上げ返済にはデメリットがあります。
- 次に借りるときの金利上昇
- 次に借りるときには借りにくい
- 預金をほしがる銀行に応えられない