社長にイマイチ理解されていない、短期継続融資の効果。ゆえに、会社にとってメリットがあるはずの短期継続融資の利用が進まない…といった現状があるようです。そのあたりを深堀りします。
短期継続融資の利用が進まない
会社の銀行融資について、「短期継続融資」という借りかたがあります。文字どおり、短期(1年以内返済)の融資を継続する、という借りかたです。
たとえば、返済期日を1年後とする手形貸付で、運転資金を600万円借りる。期日が来たら、銀行の審査のうえで期日を更新してもらう。実質的に、600万円を借り続けていることになる。
これが、短期継続融資です。
手形貸付に代えて、当座貸越もまた短期継続融資にあたります。当座貸越とは、銀行が決めた限度額の範囲内で、会社が自由に借りたり返したりをできる借りかたです。
いずれにせよ、短期継続融資の対象は「経常運転資金」になります。算式であらわすと、「売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産ー仕入債務(買掛金・支払手形)」です。
というわけで、経常運転資金分のおカネを借りるのであれば、短期継続融資で借りましょう!とのハナシがあります。ところが、短期継続融資の「効果」が、社長にイマイチ理解されていない。ゆえに、短期継続融資の利用が進まない…といった状況があるようです。
そこでこのあと、短期継続融資の効果についてお話をしていきます。いうなれば、会社側のメリットであり、ぜひ理解を深めておきましょう。具体的には、次のとおりです↓
- 資金繰りがラクになる
- 他行へのアピールになる
- 銀行との関係性が密になる
これらの効果について、順番に解説をしていきます。
社長にイマイチ理解されていない短期継続融資の効果とは
資金繰りがラクになる
繰り返しになりますが、短期継続融資とは「短期(1年以内返済)の融資を継続する」という借りかたです。言い換えると、「借りっぱなし」にできるということでもあります。
さきほどの例を再掲すると…
たとえば、返済期日を1年後とする手形貸付で、運転資金を600万円借りる。期日が来たら、銀行の審査のうえで期日を更新してもらう。実質的に、600万円を借り続けていることになる。
では、この600万円を、毎月返済がある証書貸付で借りたとしたらどうでしょう?返済期間が5年(60か月)であれば、毎月10万円の元金返済が必要になります。
1年たてば120万円、2年たてば240万円のおカネが減るのであり、その分だけ資金繰りが悪くなるのが問題です。
これまた繰り返しになりますが、短期継続融資の対象は「経常運転資金」だといいました。経常運転資金とは、会社が事業を続けている限り必要なおカネです。
借入当初は、600万円の経常運転資金が必要だから借入をしたのに、毎月返済を続けていれば、その600万円分のおカネはどんどん目減りしていきます…だから、資金繰りが悪くなるのです。
ところが、経常運転資金を短期継続融資で借りることができれば、毎月の返済はありません。結果、資金繰りがラクになる!というのが、短期継続融資の効果の1つです。
でもさぁ、銀行から「返済しろ」といわれたらどうするの?と、不安におもわれるかもしれません。つまり、手形貸付の期日になって、銀行が期日を更新してくれなかったらどうするのか。
たしかに、そういうこともあるでしょう。しかし、そんなことをすれば会社の資金繰りが厳しくなるのは、銀行も承知しています。ですから、むやみやたらと返済を求めたりはしませんし、求めるとしても一括返済までは求めないものでしょう。
毎月分割返済で対応する、ということです。であれば、「証書貸付に戻るだけ」なのですから、まずは、可能な限り短期継続融資で借り続けることをおすすめします。
他行へのアピールになる
短期継続融資がおすすめですよー、というお話をしましたが。だれでもかれでも、どんな会社でも短期継続融資で借りられるわけではありません。
さきほどから、短期継続融資とは「借りっぱなし」にできる借りかただと繰り返しています。これが、会社側のメリットであるならば、銀行側のデメリットになることはわかるでしょう。
銀行にしてみれば、「貸しっぱなし」になるのであり、それだけ回収不能リスクが高まることを意味しているからです。なので、短期継続融資は「優良な会社」が前提となります。
もう少し具体的にいうと、利益がきちんと出ている会社や、預金もじゅうぶんにあって資金繰りに不安が少ない会社です。
いやいや、それだけ優良な会社であれば、もうおカネがいらないのでは?と、おもわれるかもしれません。それでも短期継続融資を受けることには、さらなる効果があります。
短期継続融資で借りられるということは、それだけ優良な会社の証であり、短期継続融資で借りているということは、他行に対するアピールになる。これもまた、短期継続融資の効果です。
たとえば、A銀行から短期継続融資で借入をしているとします。B銀行はそれを知って、「短期継続融資ができるほどよい会社なら、ウチも貸したい!」となるわけです。
銀行が「貸したい」と考えるようになれば、当然、会社は融資を受けやすくなりますし、融資条件の交渉もしやすくなります(金利の引き下げ、経営者保証の解除、プロパー融資など)。
すると、資金繰りは「ますます」よくなるのがメリットです。
利益が出ているときこそ、預金があるときこそ、短期継続融資の借入に動きましょう。そのタイミングを逃して、のちに資金繰りに窮する会社は、けして少なくありません。
銀行との関係性が密になる
短期継続融資は、銀行にしてみれば、回収不能リスクが高まる貸しかたであることは前述しました。貸しっぱなしになることは、銀行にとっての不安材料なのです。
よって、短期継続融資で貸したあとも、銀行は継続的に融資先の状況把握に努めることになります。状況が悪くなっていないか?悪くなっていれば、早く回収に動かねば!といった具合です。
これを聞いて、なんだかうっとうしいなぁ…と、おもわれるかもしれません。ところが、そこにはメリットもあります。銀行が、自社に関わる機会が増えるというメリットです。
たとえば、銀行担当者が自社に訪問する頻度が増えるとか、試算表や資金繰り表などの提示を定期的に求められるようになるとか。たしかにうっとうしい側面があるいっぽうで、銀行が自社の商売や状況を深く理解しやすくなります。
すると、以降の融資は、より柔軟に検討しやすくもなりますし、融資以外の提案(ビジネスマッチングや各種コンサルなど)を銀行もしやすくなるので、会社にとってはメリットでしょう。
これに対して、毎月分割返済の証書貸付だと、銀行はそこまで熱心に関わろうとはしないものです。なぜなら、放っておいても毎月返済が進んでいくので、その分、回収不能リスクは勝手に減っていくからです。
なので、いまはラクでも(うっとうしくなくても)、中長期的に見れば、融資が受けにくくなったり、融資以外の支援が受けにくい…というデメリットがあることは理解しておきましょう。
以上をふまえて、銀行との関係性を密にするためにも、短期継続融資の利用をおすすめするところです。
まとめ
社長にイマイチ理解されていない、短期継続融資の効果。ゆえに、会社にとってメリットがあるはずの短期継続融資の利用が進まない…といった現状があるようです。
というわけで、そのあたりを深堀りしました。短期継続融資を利用するかいなかで、会社の資金繰りの良し悪しには差が出ます。可能であれば、短期継続融資の利用をおすすめするところです。