資金使途には、設備資金と運転資金とがあります。このうち運転資金について、資金繰りをラクにする借りかたがありますよ、というお話です。知らずにいると、資金繰りは悪くなります。
逆をいえば、資金繰りが悪くなる
会社の銀行融資について。資金使途(借りたおカネの使いみち)は、大きく2つに分かれます。1つは設備資金であり、もう1つは運転資金です。
このうち設備資金とは、設備投資をするためのおカネをいいます。土地を買って工場を建てるとか、機械設備を買うとか、クルマを買うとか、パソコンやソフトを買うとか。
いっぽうの運転資金とは、設備資金以外のことに使うおカネをいいます。具体的には、仕入代金の支払いをしたり、諸経費の支払いをしたり。では、その運転資金の借りかたについて。
資金繰りをラクにする借りかたがあります。逆をいえば、その借りかたができていないと、資金繰りは悪くなるということです。そうはならないように、資金繰りをラクにする運転資金の借りかたを押さえておきましょう。
おもなところでは、次のとおりです↓
- 増加運転資金
- 短期継続融資
- 折り返し融資
それではこのあと、順番に確認していきます。
資金繰りをラクにする運転資金の借りかた
増加運転資金
そもそも運転資金の融資の対象は「経常運転資金」です。経常運転資金とは、算式でいうと「売掛金・受取手形+棚卸資産ー買掛金・支払手形」となります。
この点、会社は経常運転資金分のおカネを持たずにいると、資金繰りが厳しくなる…ということは覚えておきましょう。売掛金・受取手形や棚卸資産は、おカネが入金されるのを待っている状態であり、それらが増えれば増えるほど、資金繰りが厳しくなることはわかるはずです。
ちなみに、買掛金・支払手形は、逆におカネの支払いを待ってもらっているのであり、ゆえに、売掛金・受取手形と棚卸資産からマイナスをする、というのが算式の意味するところとなります。
そのうえで、経常運転資金の「変化」について考えてみましょう。算式を見ればわかるとおもいますが、経常運転資金は「常に一定」ではありません。なぜなら、売掛金・受取手形も棚卸資産も、そして買掛金・支払手形も、それらの金額は常に変化しているからです。
それでも「おおむね一定」であれば、経常運転資金の金額もまた「おおむね一定」であり、その分の借入ができている限り、資金繰りに問題はありません。が、経常運転資金の金額が「増加傾向にある」としたらどうでしょう。
増加した分の借入ができなければ、資金繰りが厳しくなることがわかるはずです。では、経常運転資金の金額が「増加傾向にある」とは、どのような状態か。
売上が増加傾向にある状態です。喜ばしいことに売上が増え続けているとき、いっぽうで、売掛金や棚卸資産も増え続けるものであり、放っておくと資金繰りに問題が起きることを忘れてはいけません。
急成長の会社ほど、資金繰りが厳しくなるものなのです。そこで、売上が増加傾向になることがわかった時点で早めに、銀行借入に動くことが大事になります。このときの資金使途が、「増加運転資金」です。
増加運転資金の借入を申し込むときには、売上計画や受注リストなどを用意して、「たしかに売上が増加する」ことを銀行に説明できるようにしましょう。あわせて資金繰り予定表(向こう6か月〜1年ていど)も用意することで、将来にわたり返済に問題がないことも示します。
短期継続融資
運転資金(増加運転資金を含む)を借りるときに、多くの会社は、毎月分割返済で借りているものと推測します。ところが、そのままでは資金繰りが悪くなってしまうことに、社長は気づいているでしょうか。
たとえば、経常運転資金の算式にあてはめて計算したところ、1,000万円になったとします。このとき、1,000万円の運転資金の借入をすれば、その瞬間は資金繰りが均衡します。いうまでもなく、手元に1,000万円のおカネが増えるからですね。
ところが、その後に毎月の返済がはじまるとどうなるか。手元の1,000万円はどんどん減っていきます。では、300万円の返済が済んだとしたらどうでしょう。手元のおカネは700万円です。
経常運転資金が変わらず1,000万円であれば、300万円が不足することとなり、資金繰りが厳しくなっている…というのが、ちまたでよく見られる現象です。では、どうしたらよいのか?
毎月返済なしで借りっぱなしの融資を受けることです。これを「短期継続融資」と呼びます。具体的な手段としては、当座貸越という借りかたをするか、短期の手形貸付で借りるかです。
このうち当座貸越であれば、銀行が決めた限度額の範囲内で、自由に借りたり返したりできます。つまり、借りっぱなしにもできるということです。
また、短期の手形貸付であれば、期日に銀行の審査を受けることで、期日を書き換えてもらい(期日を更新する)、返済を先延ばしにすることができます。
ただし、いずれも銀行にとってはリスクがあるため(貸しっぱなし)、自社の業績が良いときに短期継続融資の依頼をするのがおすすめです。
いまでは、金融庁が銀行に対して「短期継続融資の推進」を求めていることから、以前よりも短期継続融資が受けやすい状況にあります。運転資金が大きい会社ほど、資金繰り改善効果が見込めますので、チャレンジしてみましょう。
折り返し融資
いましがた、短期継続融資の話をしました。以前よりも受けやすくなったとはいえ、それでも、すべての銀行が応じてくれるものでもなく、すべての会社が利用できるわけではありません。
だからといって、毎月返済の運転資金の借入を放置していれば、どんどん資金繰りが悪くなることは前述したとおりです。では、どうするか?
定期的に、折り返し融資を受けることです。折り返し融資とは、返済した分のおカネをまた借りること。それにより、もともと借入をしていた金額まで借入残高を戻すことをいいます。
これができれば、毎月返済の融資であっても、資金繰りが悪くなるのを避けることが可能です。
銀行にしてみれば、いちど貸したことがある金額までの融資なので、折り返し融資は貸しやすい。つまり、会社にとっては難易度が低い融資だといえます。
折り返し融資は、銀行のほうから提案してくれることもありますが、提案してくれないこともあるので気をつけましょう。銀行の提案がないまま、会社も何もせずにいれば、資金繰りはどんどん悪くなってしまいます。
目安としては、当初の借入の3分の1くらい返済が進んだところで、折り返し融資の依頼をすることです。
なお、折り返し融資は難易度が低いとはいいましたが、自社の業績が極端に悪くなっていたり、継続の金額が大きく減っていたりすると、難しくなることはあります。
だとすれば、できるだけ業績が良いときに、経常運転資金が安定しているうちに、折り返し融資を受けるのがよいとわかるはずです。
まとめ
資金使途には、設備資金と運転資金とがあります。このうち運転資金について、資金繰りをラクにする借りかたがありますよ、というお話した。知らずにいると、資金繰りは悪くなるので要注意です。
- 増加運転資金
- 短期継続融資
- 折り返し融資