銀行は、融資先の動向に注意を払っています。この点、銀行が警戒するのが「新規の〇〇」です。それは具体的にどういうことなのか。対して、社長はどう行動すればよいのかをお話しします。
とはいえ何が気になるか
銀行は、融資先の動向に注意を払っているわけですが。この点、銀行が警戒をするものとして「新規の〇〇」が挙げられます。つまり、融資先のあらたな動きは気になる、ということです。
とはいえ、具体的に「新規」の何が気になるというのか?おもなところでは次のとおりです↓
- 新規の借入
- 新規の売上
- 新規の事業
これらについて、銀行がどのように考えているのか。対して、社長はどのように考え、行動すればよいのかについて、このあとお話をしていきます。
銀行融資の受けやすさ、ひいては資金繰りの良し悪しに関わるところですから押さえておきましょう。
銀行が警戒する「新規の〇〇」とは
新規の借入
ここでいう「新規の借入」とは、A銀行から見たときの、B銀行やC銀行など他行の新規融資です。というわけで、銀行は「新規の借入」を警戒しています。
いうまでもありませんが、A銀行にとってB銀行やC銀行はライバルであり、ていど加減はともかくとして「負けたくないとの思い(競争意識)」があるものです。よって、他行の新規融資は気になるわけです。
では、社長はどうするか。借入をする前には、取引銀行すべてのようすをうかがってみるのがよいでしょう。A・B・Cの3つの銀行と取引があるのであれば、それぞれに「融資提案をお願いしてみる」ということです。
前述したとおり、3つの銀行はライバル関係にあることから、他行を意識した提案となります。結果として、会社にとってはより良い融資条件になりやすいのがメリットです。
もっとも、銀行から見て自社の魅力が低い場合には(業績が悪いとか)、他行と争ってまで借りてもらう必要もない、あるいは、ムリをしてまで貸すものでもない、という状況もありえます。
また、最近では地方銀行を中心に「再編(提携・統合・合併)」が進んでいることから、たとえば、A銀行とB銀行が提携関係にある場合には、ライバルとはいえず、そこには必ずしも競争意識はない、ということもあるでしょう。
なので、状況にはよりますが、そうはいっても「新規の借入」を警戒はしています。仮に、自社の返済能力から見て、借入限度額が5,000万円だという場合、A・B・Cの各銀行がそれぞれ5,000万円の融資ができるわけではないからです。
融資ができるのは、A・B・Cの3つの銀行あわせて5,000万円であり、だからこそ社長は、どの銀行から借りるのが自社にとってよいのかを、真剣に考える必要があります。つまるところ、どの銀行をメインバンクにするのか、ということです。
新規の売上
ここでいう「新規の売上」とは、自社にとってのあらたな取引先に対する売上です。と聞いて、「売上が増えるのだからいいことじゃないか。なぜ警戒される必要がある?」と、おもわれたかもしれませんが。
銀行がとくに警戒をするのは、あらたな取引先に対する売上の額が大きい場合です。もし、その取引先が売上代金を支払期日に払えなかったら…会社は困ったことになりますよね。
にもかかわらず、自社の与信管理が甘いと現実に起こりうることですし、与信管理が甘い会社を銀行は心配してもいるものです。では、社長はどうするか。
すでにお察しのとおり、きちんと与信管理をすることです。「いやいや、やってますよ」とおもわれるかもしれませんが、それを銀行にアピールしているかと言われれば、そうでもない会社がほとんどでしょう。
では、どのようにアピールするか。自社の売上先リストを、銀行へ定期的に提示するのがおすすめです。このとき、売上先リストには「売上シェア(全売上に占める、その売上先の割合)」と、「与信の結果」を記載します。
売上シェアを記載するのは、自社の売上に与える影響の大きさをあきらかにするためです。与信の結果には、文字どおり、各売上先に対する与信に関する情報を記載します。
与信といわれても…と、おもわれるかもですが。中小企業であっても、最低限できることとして、信用調査会社が提供している調査情報を利用することが挙げられます。
具体的には、帝国データバンクや東京商工リサーチが提供する企業情報です。G-Searchというネットサービスを経由して、1件あたり2,000円弱で最低限の情報は取得できます。情報のなかには「評点」も示されているので、それを「与信の結果」として記載しておくとよいでしょう。
売上先の数が多い場合には、売上シェアが多いところだけでも、企業情報を取得することをおすすめします。銀行が安心するだけではなく、自社にとってもリスク回避に役立つはずです。
新規の事業
ここでいう「新規の事業」とは、これまで自社が手掛けてきた事業とは別に、あらたな事業をはじめるケースをいいます。わかりやすい例でいえば、建設業の会社が、飲食店をはじめるとか。
というように、あらたな事業をはじめるときには「おカネ」もかかります。飲食店をはじめるのであれば、店舗の内装や厨房機器といった設備代金、賃貸するにあたって保証金などの支払いが必要にもなるでしょう。
そこで、銀行から借入をしようというのは、よくあることです。が、銀行は「はじめての事業なのに、うまくいくのかなぁ…」と心配になります。それも、借入額が多いほど心配です。
したがって、新規の事業について借入をするのは、カンタンなことではありません。事業計画書をつくって、銀行に提示・説明をするのはあたりまえ。それでも、銀行が必ずしも融資をするわけではありません。
では、社長はどうするか。いつでも新規の事業だってはじめられるように、日ごろから、手元におカネを積み上げておくことです。
利益を出して積み上げるのがベストではありますが、それもカンタンではありませんから(出せる利益も限られる)、借入をすることで積み上げる、ということになります。
自社の業績が良いときや、銀行のほうから融資を勧められたときなどを見計らって、「いますぐには使わないけれど、いざというときのためにも手元資金を厚くする」という名目で、あらかじめ借入をしておくのです。
すると、いざ新規の事業をはじめようというときにも、手元のおカネで対応することができるようになります。もちろん、それでも銀行の警戒・心配は変わらないわけですが、おカネがないばかりにチャンスを逃すことがなくなるのは、ふだんからおカネを持つメリットです。
ものごとにはタイミングがあり、そのタイミングを逃したらおしまいということもあります。飲食店をはじめるのに良い物件を見つけた、でも、おカネの算段をしているうちに他社に押さえられてしまった…などは典型例です。
まとめ
銀行は、融資先の動向に注意を払っています。この点、銀行が警戒するのが「新規の〇〇」です。それは具体的にどういうことなのか。対して、社長はどう行動すればよいのかをお話ししました。
銀行融資の受けやすさ、ひいては資金繰りの良し悪しに関わるところですから押さえておきましょう。
- 新規の借入
- 新規の売上
- 新規の事業