それでも他行肩代わりを実行すべきとき

それでも他行肩代わりを実行すべきとき

会社の銀行融資について、他行肩代わりという選択肢があります。が、基本的にはおすすめできません。ただ、それでもなお他行肩代わりを実行すべきときとは?についてのお話です。

目次

基本的にはおすすめできません

会社の銀行融資について、「他行肩代わり」はご存知でしょうか。文字どおり、他行に借入を肩代わりしてもらうことをいいます。

たとえば、A銀行から1,000万円の借入をしているとして。ここで、B銀行から1,000万円を借りて、A銀行の借入を返済するとどうでしょう。自社の借入先は、A銀行からB銀行に変わります。これが、他行肩代わりです。

この点、B銀行が「A銀行よりも金利を低くしますので借りませんか?」などと提案してくることがあります。銀行どうしの競い合いもありますから、肩代わりを狙う銀行もあるわけです。

で、これを聞いた社長が「それはいい!」と二つ返事で受け入れてしまう。つまり、他行肩代わりを実行してしまう。すると、A銀行としては「おもしろくない」ことはわかるでしょう。

B銀行に融資を奪われたのですから当然です。そして、B銀行に心変わりした社長(会社)に対しては「裏切られた」との思いも生じることから、肩代わり後はA銀行との関係性が悪化します。

そう考えると、他行肩代わりを積極的に実行することは、「基本的」におすすめできません。ただ、それでもなお、他行肩代わりを実行すべきときもあるのでは?というのが、次のとおりです↓

それでも他行肩代わりを実行すべきとき
  • 取引銀行を替えたい
  • 融資条件を改善したい
  • どうしても借り換えしたい

このあと、順番に解説をしていきます。

それでも他行肩代わりを実行すべきとき

取引銀行を替えたい

取引銀行(融資を受けている銀行)とは、中長期的に続く関係づくりをしたいものです。とはいえ、ときには「もう、この銀行とはおつきあいできない!」ということもあるでしょう。

少々のことはガマンをするにしても、腹に据えかえる対応をされてガマンがならない。というのは、ありうる状況だからです。とはいえ、その銀行には借入がある…どうしたものか。

ここで、他行肩代わりです。冒頭でも例を挙げたように、A銀行からの借入をB銀行で肩代わりしてくれれば、A銀行からの借入はなくなります。A銀行からの借入をなくしたければ、B銀行を探せばよいのです。

こういうとき、日ごろから複数の銀行と取引している会社は、よりスムーズに肩代わり先の銀行が見つかるでしょう。いっぽうで、1つの銀行とだけ取引をしていた会社は苦労するかもしれません。

いままで取引もない会社から、「肩代わりをお願いしたい」などといわれたら、相手の銀行が警戒するのも当然でしょう。

また、自社の業績が悪いと、肩代わりは断られやすくなります。いうまでもなく、銀行としては不安だからです。肩代わりした挙げ句、返済してもらえないのでは、たまったものではありません。

ゆえに、取引銀行を替えるために肩代わりを依頼するのであれば、業績がよいときを狙うべきであり、そのためには日ごろから、よい業績を維持することが大切になります。

だとすれば、本当はもっと利益を出せるのに、目先の税金を嫌って利益を減らすのは愚策だとわかるはずです。実際には、愚策を講じる会社が散見されますから気をつけましょう。

融資条件を改善したい

融資条件として、金利が挙げられます。会社にしてみれば、低いほどよいのが借入金利です。冒頭では、その金利を下げることで肩代わりを狙う銀行の話をしました。

とはいえ、肩代わりをされる銀行からすると「おもしろくない」ので、金利を目的に肩代わりを実行することはおすすめできません。いまはまだ低金利ですし、「額」にすれば知れています。

たとえば、1,000万円の借入について、金利が0.3%下がったら。年間で3万円、ひと月あたり2,500円です。あえていいますが、「そのていど」の利息を惜しんで、取引銀行を1つ失っているようではもったいないばかりです。

肩代わりされた銀行は、裏切られたとの思いから「もう二度と貸さない」と考えることもあります。肩代わりを実行することで、取引銀行を失うことだってあるのです。

それでもなお、肩代わりを検討すべき融資条件を挙げるとすれば…プロパー融資です。プロパー融資とは、信用保証協会の保証がない融資であり、銀行にとってはリスキーな融資にあたります。

ゆえに、会社からすると借りにくいのがプロパー融資です。が、プロパー融資には、保証付き融資にはないメリットがいろいろあります。信用保証料の負担がない、制度上の限度額がないなど。

なにより、プロパー融資は銀行にとってリスキーな融資であることから、プロパー融資をする銀行との関係性は強くなります。自社の業績が悪化したときでも、銀行はカンタンに見放すこともできなくなるので、そこも自社にとってはメリットです。

なので、既存の保証付き融資から、プロパー融資に肩代わりができるのであれば、検討に値します。いつまでたっても、信用保証協会の保証付きでしか融資をしてくれない銀行は見限って、プロパー融資をしてくれる銀行に乗り換えるのも、選択肢の1つだということです。

どうしても借り換えしたい

自社の業績が悪化すると、資金繰りは厳しくなります。そこで、「借り換え」をしたいと考えることもあるでしょう。借り換えをすることで、あらたに据置期間を設定したり、返済期間を延ばして毎月の返済負担を減らすわけです。

たとえば、残高600万円、毎月返済20万円の借入があるとして。600万円を借り換えることで、返済期間を5年にすることができたらどうでしょう。毎月の返済額は10万円に軽減できます。

というわけで、借入をしている銀行に借り換えを依頼したところ、断られてしまった…ということもありえます。その銀行にとっては、メリットがないからです。

さきほどの例でいえば、借り換えをしたところで「貸している額」は600万円で変わりません。銀行は、貸すのが商売ですから、貸す額も増えないのに借り換えの「手間」をかけるのはイヤなのです。

また、返済期間が延びるということは、それだけ回収不能リスクも高まります。業績も悪いとなれば、むしろ早く回収したいと考えるのは当然です。ゆえに、借り換えを断られてしまいます。

ですが、会社としては資金繰り改善が最優先であり、なんとしても借り換えがしたい。そこで、借り換えをしてくれる他行があるのなら、他行肩代わりを実行することが選択肢の1つになります。

肩代わりされる銀行とは関係が悪化するかもしれませんが、背に腹は代えられないという状況です。

肩代わりをする銀行からすれば、あらたに融資額が増えるのですからメリットはあります。業績の悪化は心配ですが、保証付き融資であったり、金利を上げることでリスク軽減できれば「貸してもいい」と考える銀行もあるものです。

まとめ

会社の銀行融資について、他行肩代わりという選択肢があります。が、基本的にはおすすめできません。ただ、それでもなお他行肩代わりを実行すべきときとは?についてのお話をしました。

他行肩代わりを検討する際の「判断材料」として、本記事の内容を押さえておきましょう。

それでも他行肩代わりを実行すべきとき
  • 取引銀行を替えたい
  • 融資条件を改善したい
  • どうしても借り換えしたい
それでも他行肩代わりを実行すべきとき

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