創業時は、社長も銀行融資の経験がなく、どうしてよいかよくわからない…というわけで、創業時の銀行融資の手段と手順について、お話をしてみます。
志半ばにしてあきらめざるをえなかった
会社の銀行融資について、創業時の手段と手順を考えてみます。創業時ということは、社長も銀行融資の経験がなく、融資の手段も手順もよくわからない…ということが多いでしょう。
その結果、創業時にうまく資金調達ができないと、直後に訪れる「死の谷(売上が軌道にのるまでの赤字期間の通称)」を乗り切れず、資金ショートによって倒産もありえます。
あともう少し粘れば、軌道にのせることができたのに。資金調達が不十分だったばかりに、志半ばにしてあきらめざるをえなかった社長の姿を、わたしは実際に見てもきました。
ゆえに、創業時の銀行融資で失敗をしてほしくはない。そのように考えています。では、話を戻して、創業時の銀行融資の手段と手順とは?このあと順番に解説をしていきます。
まずは日本公庫の新規開業資金から
結論として、まずは、日本政策金融公庫(以下、日本公庫)の「新規開業資金」からです。くわしい制度概要などは、こちらのページを確認してみましょう↓
通常、創業融資はリスクが高い融資であることから(創業後まもなくでつぶれてしまう会社が少なくない)、民間金融機関は躊躇するところです。つまり、創業融資は本来、借りにくい。
この点、日本公庫は公的金融機関であり、民間金融機関を補完する役割を担っています。なので、創業融資にも積極的であり、柔軟な対応が期待できます。
そのうえで、「新規開業資金」のポイントは、創業から2期めまでのあいだであれば、
- 無担保・無保証人でOK(社長の連帯保証なし)
- 利率は0.65%の引き下げ(返済負担が減少する)
- より長期での返済も可能(最大で、設備資金20年・運転資金10年)
また、2024年3月からは、以前よりも融資限度額が拡充されて、7,200万円(うち運転資金は4,800万円)となりました。これにより、金額面での不足はほとんどなくなったといってよいでしょう。
さらには、以前はあった自己資金要件もなくなりました。つまり、制度上は自己資金がゼロでも、創業融資が受けられるようになったわけです。
もちろん、自己資金がないよりはあったほうが融資が受けやすいことは変わりません。とはいえ、自己資金要件がなくなったことで、より柔軟な対応が期待できるものとおもわれます。
というように、現時点における創業融資の筆頭は、日本公庫の「新規開業資金」です。まずはここから、創業融資のチャレンジをはじめましょう。
日本公庫で借りたおカネは信用金庫へ
日本公庫は、融資専門の金融機関です。よって、預金をあずけることはできません。日本公庫から借りたおカネは、どこか別の銀行にあずけることになります。さて、どこへあずけるか?
ここで都市銀行にあずけるのは、おすすめできません。なぜなら、都市銀行は「大企業向け」の銀行であり、中小企業が融資を受けるには不向きな銀行だからです。
銀行にとって、自行への預金は「担保」のようなものでもあります。なので、通常は、預金をあずけると、その銀行からは融資が受けやすくなるという効果があるものです。
が、都市銀行の場合には、その効果がはたらきにくいということになります。都市銀行は、中小企業に少額を貸し付けるよりも、大企業に多額を貸し付けるほうがラクだし儲かるからですね。
そこで、日本公庫から借りたおカネはまず、最寄りの信用金庫へあずけましょう。信用金庫は地域密着で、小規模企業向けの金融機関です。
預金をあずける(口座を開く)ことでおつきあいがはじまり、口座内で日本公庫への返済をきちんと続けることが、信用金庫に対する信用としてもはたらきます。
信用金庫にしてみれば、「日本公庫から借りられる会社であり、借りたおカネをきちんと返済するチカラがある会社だ」と考えられるからです。
その信用が積み上がったところで、次の融資を検討することになります。
スタートアップ創出促進保証制度で借りる
では、具体的にどのような融資を検討するのか。それが、「スタートアップ創出促進保証」の制度です。2023年3月に開始された、比較的あたらしい制度ではあります。
くわしい制度概要などはこちらのページから↓
この制度のポイントは、創業後5年までは利用ができることです。なので、日本公庫から融資を受けたあと、返済実績ができたところで、信用金庫の信用をえてから利用することができます。
この制度で融資を受けることができれば、信用金庫とのあいだに「直接の実績」ができるので、信用金庫との関係性が強くなるのもメリットです。
なお、本制度は「信用保証制度」であり、信用保証協会の保証が付いた融資となります。会社が返済できなくなったときには、信用保証協会が返済を肩代わりするため、銀行にとっては安心です。
ゆえに、創業時の融資ではあっても、比較的借りやすい融資だといえます。預金をあずけることで信用を築いた信用金庫に、スタートアップ創出促進保証制度の利用をお願いしてみましょう。
さらに、社長の連帯保証は必要ありません。前述の日本公庫の新規開業資金と同様、社長個人が保証を負わずにすむことは、社長にとって大きな安心材料になるでしょう。
融資限度額は、スタートアップ創出促進保証が3,500万円、日本公庫の新規開業資金が7,200万円ですから、あわせて約1億円です。創業後しばらくは、中小企業にとって不足がない金額だといえます。
これら2つの融資を足がかりにして、ゆくゆくは、信用金庫などの民間金融機関から「プロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)」を引き出していく、というのがその後の流れです。
まとめ
創業時は、社長も銀行融資の経験がなく、どうしてよいかよくわからない…というわけで、創業時の銀行融資の手段と手順について、お話をしてみました。
まずは日本公庫の新規開業資金、そこで借りたおカネを信用金庫にあずける。その後、スタートアップ創出促進保証を利用して信用金庫から融資を受ける。この手段と手順を押さえておきましょう。