借入の減らしかたがイケてない事例

社長であれば、「できるだけ借入を減らしたい」とも考えるでしょう。ですが、財務状態を悪化させているのでは本末転倒です。この点、借入の減らしかたがイケてない事例をご紹介します。

せっかく借入が減っても

会社にとって、借入はなければないほうがいいモノに違いありません。なので、社長は「できるだけ借入を減らしたい」と考えもするでしょう。たしかに、それも１つの考えかたです。

とはいえ、その「減らしかた」には気をつけましょう。せっかく借入が減っても、財務状態を悪化させているケースがあります。まさに、本末転倒です。

そこで、借入の減らしかたがイケてない事例として、お話をしていきます。おもなところでは、次のとおりです↓

このあと、順番に解説をしていきます。

借入の減らしかたがイケてない事例

繰り上げ返済

多くの会社にとって、繰り上げ返済はしないほうがいいものだといってよいでしょう。なぜなら、多くの会社は、「また借入する可能性が高いから」です。

将来にわたって借入が必要ないと言い切れるほど、資金が潤沢な会社はほとんどありません。だとしたら、なぜいま、わざわざ返済する必要があるのか？というハナシです。

次に借りたいときには、銀行の審査も必要なのであり、借りられるかはわかりません。それに、いまは世の中の金利が上昇傾向です。次に借りるときには、借入金利が上がっている可能性も高いでしょう。

利息がもったいないから繰り上げ返済を、とも聞きますが。将来、金利が上がるほうがもったいない、ということだってあるはずです。目先の利息支払いに、とらわれないようにしましょう。

また、銀行（日本政策金融公庫は別として）は繰り上げ返済を好みません。銀行にとって、融資は商品であり、繰り上げ返済は返品にあたります。返品されてうれしいはずがないのです。

繰り上げ返済ばかりする会社には、正直融資をしたくない。という銀行員の話を聞いたことがあります。融資をするにも手間暇かかるのですから、契約期間いっぱいまで借りてもらい、きちんと利息を受け取れるほうがうれしいわけです。

ゆえに、繰り上げ返済をするのであれば、将来にわたって借入が必要ないと言い切れるようになってからにしましょう。現実には難しいのですから、だったら、繰り上げ返済はしないことです。

新規借入なし

銀行から借入をしたあと、契約どおりに返済を続けるのは大事なことです。そういう意味での借入の減らしかたであれば、好ましいことだといえます。

ただし、返済一辺倒になるのは好ましくありません。つまり、借入をしたあと返済するばかりで、借入残高がどんどんと減っていく…これはよくない、ということです。

なぜなら、銀行は「貸した実績」を重視します。たとえば、1,000万円まで貸したことがあるという実績があれば、その後も（返済により残高が減っても）、1,000万円までなら貸してもいいと考えるものです。

だとすれば、貸した実績（会社からすれば借りた実績）の金額を伸ばしておくことが、将来のリスク回避につながります。貸した実績が1,000万円の会社と、貸した実績が2,000万円の会社と、将来、おカネが必要になったときに、より借りることができるのは後者だからです。

したがって、会社は毎月の返済を滞りなく続けつつ、折を見て、新規借入によって借入額（銀行からすれば貸した実績）を伸ばしておくことが大切になります。

折りを見てというのは、具体的にいうと、自社の業績がよいときです。銀行も貸し出しを増やすのはリスクですから、業績が悪い会社への融資は躊躇します。なので、業績が悪いときに、借入額を伸ばすことは困難です。タイミングを逃さないようにしましょう。

特定銀行のみ

新規借入をしましょう、と前述しました。このとき気をつけたいのは、取引銀行すべてに対して、バランスよく新規借入を進めることです。

逆に、取引銀行のうち特定の銀行のみ、新規借入をしなければ、その銀行の借入残高だけが減っていくことになります。すると、それを見た他行がどう考えるか。

「もしかして、アノ銀行は融資を引き上げようとしているのでは？だとすれば、ウチも融資はやめたほうがいいのかも…」みたいなことです。

アノ銀行が、メインバンクであればなおさらでしょう。メインバンクが手を引くような状況であれば、よほど危険な状態かもしれないことをあらわしているからです。

ただし、特定の銀行のみ借入残高が減っている（返済一辺倒）としても、そこに「意図」があるならかまいません。たとえば、不動産に根抵当が付いているので、いちど完済してそれを外したいとか。

イケてないのは、そのような意図もなく、特定の銀行のみ借入残高が減っていく状況です。社長が気づかぬうちに、そのような状況になっていないか確認しておきましょう。

まとめ

社長であれば、「できるだけ借入を減らしたい」とも考えるでしょう。ですが、財務状態を悪化させているのでは本末転倒です。この点、借入の減らしかたがイケてない事例をご紹介しました。

同じようなことを検討していないか、考えてはいないか、確認をしておきましょう。やってしまってからでは手遅れ…ということもありますから。