銀行は、決算書を重視している。ならば、銀行に対して「今期は良い決算書だ」といえるのはどんなときなのか。社長は、そこを理解しておきましょう、というお話です。
推移で見ることがスタート
銀行から融資を受けるには、「良い決算書」が有効であることはご存知でしょう。なんだかんだいっても、銀行は融資審査で決算書の内容を重視しているものであり、決算書の良し悪しが、融資の受けやすさに大きな影響を与えます。
なので、社長は銀行対して、「今期は良い決算書になりました」といいたいわけですが。このときの「良い決算書」とは、どのようなものなのか。社長が考える「良い」と、銀行が考える「良い」のあいだにギャップがあると、話も噛み合わなくなってしまいます。
というわけで、銀行に対して「今期は良い決算書だ」といえるのはどんなとき?を考えてみることにしましょう。
まずは、2〜3期分の決算書を並べて、その推移で見ることがスタートです。そのうえで、どんな推移になっているのか。今期は良い決算書だといえるのは、次のときです↓
- 売上が増えているとき
- 利益が増えているとき
- 預金が増えているとき
一見すると、あたりまえのようにおもえるかもですが。これらの「いずれも」満たしているときがベストです。このあと、順番に解説をしていきます。
「今期は良い決算書だ」といえるのはどんなとき?
売上が増えているとき
2〜3期分の決算書を並べて、その推移で見ることがスタートだ、といいました。ポイントは「推移」です。逆に、ひとつの期だけを見ていてもしかたがありません。
今期1億円の売上であっても、前々年・前年も1億円の会社と、前々年は5,000万円・前年は7,500万円の会社とでは、今期の1億円の意味合いが変わることはわかるでしょう。
後者のほうが、徐々に売上が増えているという点で、「今期は良い決算書だ」といえますよね。
したがって、売上をアピールするときには、2〜3期の推移を示しながら…というのが、よい方法です。そもそも、銀行もそういう見方(推移で見る)をしています。だから、社長も銀行の見方ができるようになりましょう、ということです。
ここで、おもわれるかもしれません。売上が増えているからといって、必ずしも良いとはいえないだろう。売上よりも利益のほうが大事だろう、みたいな。
そのとおりです、後述しますが、利益も大事。でも、銀行は売上も大事だと考えています。だって、売上がなければ利益もないから。売上が利益の源泉だからです。
なので、売上のアピールも大事であることは覚えておきましょう。本質的には利益が大事なのですが、意外と銀行は、「利益よりも売上を重視する」といったところもあります。
利益はさておき、売上が増えていると安心する、売上が減っていると不安になる。なので、売上が減っている場合には、その要因分析と対策についてを、銀行に伝えることをおすすめします。
利益が増えているとき
前述したとおり、売上だけではなく、利益も大事です。なので、推移で見たときに利益が増えているときは、「今期は良い決算書」としてアピールできることになります。
銀行は、売上を重視するフシがあるといいましたが、売上至上主義ではいけません。実際、売上を増やすことに注力するあまり、利益率がガタ落ちしている会社もあります。
そうなれば、さすがに銀行も問題視するものです。ではなぜ、売上を増やすことに注力すると、利益率が落ちるのか。一番は「安売り」をしがちだからです。
価格を下げて安くすることで、よりたくさんの商品を、よりたくさんのお客さまに買ってもらう。ところが、価格を下げた分だけ利益率は下がってしまう。ひどい場合には、売上は増えたけど利益は減ってしまった…という増収減益となります。これは、銀行の印象も悪いです。
また、売上を増やすためならなんでもする、結果としてコストが増える…という会社もあります。やっぱり、利益が減ってしまうのが問題です。なので、売上至上主義には気をつけましょう。
売上を増やすのであれば、値上げがおすすめの手段です。これにより、利益率も上がります。値上げで多少の客離れがあっても、値上げで増えた利益によって、売上全体ではプラスを実現することも可能です。
以上をふまえて、売上と利益の両睨みでいきましょう。売上ばかり、利益ばかりにならないように。
預金が増えているとき
売上と利益が増えていれば、オールOKかといえば、それも違います。あともうひとつ、預金が増えているかどうかも重要です。預金残高を推移で確認してみましょう。
結局のところ、どれだけ利益が出ていても、預金がなくなったらおしまいです。では、利益が出ているのに預金がないことなんてあるのか?といえば、もちろんあります。
たとえば、借入の返済。そのときの財源は利益です。借入の返済は、税金を支払ったあとの利益が財源になります。なので、「税引後利益<借入返済」だと、預金は減っていくわけです。
すると、遅かれ早かれ資金繰りが破たんします。また、高額の固定資産を購入する場合、利益は出ていてもお金はない…というのはあるあるです(固定資産の購入代金はいちどで経費にならないから=減価償却)。
ほかにも、利益は出ているけれど、回収できていない売掛金が増えていたり、売却できない在庫が増えていたりすると、資金繰りは悪くなっていきます。つまり、預金が減っていきます。
結果として、会社がつぶれてしまうのは困るので、銀行は預金が多い会社を好むのです。だから、預金の推移を見て、増えているのか・減っているのか?の確認もしています。
繰り返しですが、預金がなくなれば会社はおしまいです。これは、銀行よりも社長のほうが切実な問題なのですから、銀行融資以前に、社長は預金の推移を確認するようにしましょう。
そのうえで、売上、利益、預金のいずれも、増加で推移しているのであれば、銀行に対しても胸を張って「今期は良い決算書になりました」といえることになります。
まとめ
銀行は、決算書を重視している。ならば、銀行に対して「今期は良い決算書だ」といえるのはどんなときなのか。社長は、そこを理解しておきましょう、というお話でした。
社長が考える「良い」と、銀行が考える「良い」のあいだにギャップがあると、話も噛み合わなくなってしまいます。
- 売上が増えているとき
- 利益が増えているとき
- 預金が増えているとき