原則、返済財源(≒利益)がなければ、銀行借入はできないものですが。それでも、実際には借り入れできることもありますよね。というわけで、その理由についてのお話です。
利益が不十分であれば、銀行は
会社の銀行借入について。原則、返済財源がなければ、借入はできません。ここでいう「返済財源」とは、端的にいえば「利益」です。
借入を返済するには利益が必要だとすれば、利益が不十分であれば、銀行は「これ以上は貸せないぞ」ということになります。ですが、それでも借入できるケースがあるのはなぜなのか。
ひとつは、経常運転資金分の借入が挙げられます。経常運転資金とは「売掛金+棚卸資産ー買掛金」で求められる金額であり、会社が事業を続ける限り、立て替える必要があるおカネです。
これを銀行から借入するのは、財務のセオリーとなっています。この点、「売掛金+棚卸資産」が担保のような役割を果たすため、経常運転資金分の借入には必ずしも利益はいらないわけです。
では、それ以外のケースでも、利益(返済財源)なしに借入ができるのはなぜなのか?ケースを挙げつつ紹介をしていきます。このあとの話を理解することで、借りられないと勘違いしてしまうことを避けられるはずです。
返済財源がなくても借入できる理由
一本化の余地がある
返済財源がないと借りられないのは、「返済額>利益」となっているからです。だったら、返済額を減らせばよい、という考え方があります。その手段のひとつが、一本化です。
複数ある借入を1つにまとめて、返済期間を延ばすことができれば、毎月の返済額を少なくすることができます。結果として、同じ利益であったとしても「返済額<利益」となることはあるわけです。
したがって、そのような一本化の余地がある場合には、いま「返済額>利益」であったとしても、銀行が融資をすることはあります。
ただし、すべての借入を一本化できるものでもなく(借りかたによっては、一本化できないものもある)、一本化の前提(返済額>利益)がネガティブであることから、一本化を嫌う銀行はあるものです。
なので、一本化をするにしても、利益はあったほうがいいし、利益は大きければ大きいほどよい、ということは覚えておきましょう。銀行借入をするのに、いちばんの材料は利益だといっても過言ではありません。
他に借入余力がある
おかしなハナシに聞こえるかもしれませんが、他に借入余力があると、返済財源がなくても銀行は融資をすることがあります。ここでいう借入余力とは、たとえば「信用保証協会の保証付き融資」です。
保証付き融資は、民間金融機関のプロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)に比べると、融資をしやすいことから、いざというとき(業績が悪いとか)の手段としても利用されます。
その保証付き融資には、制度上の限度額があるため、限度額いっぱいまで借りていると、それ以上は借りることができません。いっぽう、限度額まで余裕があれば、その分は「いざというときでも借りられる」という見方ができます。
銀行もまたそのように見ているため、保証付き融資に余力があると、プロパー融資をしやすくなるのです。いざとなったら、会社は保証付き融資を借りることができるし、そうすれば、プロパー融資の返済も滞らずにすむはずだ。と、そんな見方になります。
同様に、日本政策金融公庫の融資も借入余力のひとつです。日本政策金融公庫は「民間金融機関の補完」が役割であることから、いざというときでも柔軟に対応する傾向があります。
つまり、いざというときでも、民間金融機関に比べて借入しやすいということです。だとすれば、日本政策金融公庫からまだ借りられそうだということが、銀行の安心材料になるとわかるでしょう。
また、不動産(まだ担保提供していない)を所有している場合にも、借入余力として見られます。不動産を担保にとれば、銀行は安全に融資をすることもできるからです。
したがって、信用保証協会の保証付き融資や、日本政策金融公庫の融資、不動産といった借入余力があると、返済財源がなくても借入できるケースがあります。
社長の個人資産がある
中小企業にあっては、「社長=大株主」であることがほとんどです。ゆえに、会社と社長は一心同体、というのが銀行の見方になります。
一心同体であればこそ、会社のピンチには社長個人の資産でさえも、会社に投入されるものです。だとすれば、社長個人の資産も、会社の資産のようなものだといえます。
そこで銀行は、会社の資産と個人の資産を合算して、融資の可否を判断することもあるのです。その結果、「返済財源は不十分だけれど、社長個人の資産で補えるので融資をする」という判断もありえます。
とはいえ、銀行も社長個人の資産をすべて把握できるものでもありません。もし、個人の資産も合算して銀行に見てほしいのであれば、社長のほうから銀行へ情報提供することが必要です。
預金や有価証券、不動産などについて、一覧にまとめた資料を作成・提示するとよいでしょう。
なお、合算されるのは資産だけではなく、負債もです。資産だけを合算するという「いいとこ取り」の考え方はありません。個人の負債(住宅ローンや教育ローンなど)があれば、その情報もあわせて銀行に伝えましょう。
まとめ
原則、返済財源(≒利益)がなければ、銀行借入はできないものですが。それでも、実際には借り入れできることもありますよね。というわけで、その理由についてお話をしました。
本記事を理解することで、借りられないと勘違いしてしまうことを避けられるはずです。