いままでは、いわれたことがない書類の提出を求められたり、聞かれたこともないことを聞かれるようになったり。銀行から厳しく追及されるようになったのはなぜなのか?についてのお話です。
なんだか急に感じられることがある
これまで、銀行との取引がある会社、言い換えると、銀行から融資を受けている会社において、「なんだか急に、銀行から厳しく追及されるようになったなぁ」と感じられることがあります。
いままでは、いわれたことがない書類の提出を求められたり、聞かれたこともないことを聞かれるようになったり。というように、銀行から厳しく追及されるようになったのには、いくつかの理由が考えられます。
社長が、このあたりをわからずにいると、融資が受けにくくなり、資金繰りが悪くなることもあるでしょうから、このあとのお話を押さえておきましょう。
銀行から厳しく追及されるようになった、そのおもな理由は次のとおりです。
- 業績悪化
- 粉飾疑い
- 金利上昇
このあと、順番に解説をしていきます。
銀行から厳しく追及されるようになった理由
業績悪化
自社の業績が悪化していると、銀行から厳しく追及されることがあります。業績が悪くなるほど、返済してもらえなくなる可能性が高まるからです。
すると、いわれたことがない書類の提出を求められたり、聞かれたこともないことを聞かれるようになったり。銀行は状況を精査して、このあとの融資姿勢を判断しようとするわけです。
よって、なんだか急に、銀行から厳しく追及されるようになったと感じるときには、銀行から見て「自社の業績悪化が心配なレベルにある」ことのあらわれだと、考えるようにしましょう。
放っておけば、融資が受けにくくなるのは目に見えています。まずは、業績改善に向けて、現状分析、経営戦略の練り直し、それらにもとづく行動計画・数値計画を立案することです。
そのうえで、経営改善に向けた取り組み(=計画)を、銀行に説明できるとよいでしょう。なお、銀行が考える業績悪化とは、単に「赤字」ということだけではなく、「推移」でも見ています。
基本的には、過去3〜5年ていどの推移です。たとえば、過去5年で売上高はどのように推移しているか、利益はどのように推移しているか。預金残高の推移はどうか、など。
もし、いま黒字であったとしても、過去からの推移で見たときに「利益は減少傾向」となれば、銀行としては不安になるものです。結果として、厳しく追及するようになることもあるでしょう。
であれば、銀行と同じ「視点」を持てるように、社長も「推移」で自社の業績を見ることが必要になります。決算書や試算表を「単年」で見るのではなく、「3期比較」や「5期比較」で見ることです。
粉飾疑い
業績は悪くない。でも、銀行から厳しく追及されるようになった。このとき、銀行から粉飾決算を疑われているケースがあります。粉飾決算とは、利益や資産の水増しです。
放っておけば、本当は粉飾決算などしていないのに、銀行には誤解をされて、融資が受けられなくなることもありえます。では、銀行がどのようなときに粉飾決算を疑うのか?
あるていど、パターンは決まっています。貸付金や仮払金など、いわゆる雑勘定の金額が多い。売掛金や棚卸資産が、過去からの推移や同業他社に比べて多い。減価償却費を法定限度額まで計上していない。買掛金や未払金で簿外債務になっているものがある、などなど。
すると、銀行からは貸付金や仮払金の「元帳」の提示を求められたり、売掛金や棚卸資産の「明細」の提示を求められたり、といった追及がはじまります。
この点、銀行から追及されるよりも前に、会社のほうから説明をしたいところです。追及されてからの説明となると、どこか言い訳がましく、弁明のようにも聞こえてしまいます。
ですから、粉飾決算と疑われそうな点があれば、先回りで銀行に説明をするのがおすすめです。もっとも、「本当に粉飾決算をしている…」というのは論外であって、にもかかわらず、ウソをついてごまかそうとしてはいけません。
いますでに粉飾決算をしているのであれば、その解消に努めることを強くおすすめします。ヘンな言い方になりますが、粉飾決算をして立ち直れるのは1回までです。2回めの粉飾決算となると、決算書に与える影響は、1回目とは比にならず、解消することは困難になります。
銀行からも「粉飾決算をする会社」として見限られるので、倒産確率は高まるばかりです。
金利上昇
業績も悪くないし、粉飾決算だってしていない。でも最近、ミョーに銀行の追及が厳しくなったような…というのであれば。それは、世の中の金利上昇が背景にあるかもしれません。
ご存知のとおり、日銀の利上げによって、世の中の金利が上がりはじめています。融資金利も例外ではありません。すると、どうなるか?返済に苦労する会社が増えます。
最悪は、返済ができなくなることもあるわけです。それでは銀行も困りますから、そうなる前に手を打たねばなりません。その見極めとしての情報収集も必要です。
よって、世の中の金利が上昇すると、銀行からの追及が厳しくなることはありえます。この点、前述したように、業績が悪い会社ほど、さらに追及は厳しくなるでしょう。
なんにせよ、これからしばらくは金利は上昇局面にあります。だとすれば、銀行からの追及は以前よりも増えるものとして、むしろ、会社のほうから積極的に情報提供するのがおすすめです。
銀行員も忙しいので、情報収集にかける時間も手間も避けたいものではあります。このとき、融資先のほうから情報提供をしてもらえたら…銀行員としては助かるし、心象もよくなるというものです。
では、どのような情報提供をしたらよいか。いろいろありますが、まずは業績の定期報告でしょう。具体的には、試算表の提出です。目安は、四半期にいちどくらい。
加えて、計画値との差異や、差異が生じた原因分析、今後の改善策などもあわせて伝えられたらベストです。結局のところ、試算表は「過去」の情報にすぎません。
ですが、銀行が本当に知りたいのは「未来(の利益)」の情報です。ところが、それを情報提供できる中小企業はほとんどありません。中小企業の多くが、そもそも計画をつくっていないからです。
というわけで、計画をつくり、試算表との差異を確認できるようになりましょう。対銀行のみならず、計画は社長自身にとっても指針となるものですから、経営判断にも良い材料となります。
まとめ
いままでは、いわれたことがない書類の提出を求められたり、聞かれたこともないことを聞かれるようになったり。銀行から厳しく追及されるようになったのはなぜなのか?についてお話をしました。
社長が、このあたりをわからずにいると、融資が受けにくくなり、資金繰りが悪くなることもあるでしょうから、本記事の内容をを押さえておきましょう。
- 業績悪化
- 粉飾疑い
- 金利上昇