資金繰りの目的は1円でもおカネを増やすこと

資金繰りの目的は1円でもおカネを増やすこと

資金繰りの定義とは?資金繰りの目的とは?と、聞かれたら。なんと回答するでしょうか。資金繰りはできているようで、意外とできていないこともあるよね。そんなお話をしていきます。

目次

資金繰りの定義、資金繰りの目的

社長のみなさまに質問です。「資金繰りとは?」と聞かれたら、なんと回答するでしょうか。つまり、「資金繰りの定義」をたずねています。

端的にいうのであれば、「資金繰りとは、おカネの出入りを管理すること」です。多少の表現は違えど、おおむね同じようなことをイメージされたものとおもいます。

では、次の質問です。「資金繰りの目的とは?」と聞かれたら、こんどはなんと回答するでしょうか。わたしだったら、「1円でもおカネを増やすこと」だと答えます。

結局のところ、おカネの出入りを「ただ管理する(=把握する)」だけでは不十分であり、管理したうえで、少しでも資金繰りがよくなるように「1円でもおカネを増やす」ことが大切です。

資金繰りの管理ツールとして「資金繰り表」がありますが、その資金繰り表をただつくるだけでは不十分だ、ということでもあります。

ただつくるだけ、とは。先々の預金残高(次月繰越)が減少していくような資金繰り表を、そのまま放置しているようなケースです。いうまでもなく、いずれ資金ショートすることを示しています。

資金繰り表をつくるのであれば、先々の預金残高は増加していくような資金繰り表でなければ、資金繰り表としては不十分であり、資金繰りができているとはいえません。つまり、資金繰りの目的を果たせていないことになります。

ではなぜ、先々の預金残高が減少してしまうのか?よくあるケースを挙げつつ、対応もふまえて考えてみましょう。

利益が増えても、おカネは減る

利益は増えているのに、資金繰り表をつくるとおカネが減っていく…というケースはあるものです。たとえば、経常運転資金に大きな変動が生じた場合が挙げられます。

経常運転資金とは、「売掛金+棚卸資産ー買掛金」で計算される金額です。この分のおカネがないと、会社は資金繰りが厳しくなります。

その経常運転資金は、常に変動しているわけですが、場合によっては大きく変動することもあるでしょう。売上が急増したとか、入金サイトを延ばしたとか、在庫を増やしたとか。

すると、経常運転資金が増えて、入金待ちの金額が増えることから、資金繰りは厳しくなります。なので、経常運転資金が増えたときには、その分、銀行からの借入を増やすのがセオリーです。

ところが、これを放置している会社があります。それでは資金繰りができているとはいえない、資金繰りの目的を果たせていませんよね、ということです。

また、同じ額の経常運転資金であっても、借りかたによっておカネが減ってしまうこともあります。経常運転資金を「毎月分割返済」で借りているケースです。

毎月の返済には、おカネの支出をともないますから、当然、預金残高は減っていきます。この点、短期継続融資という借りかたができると、毎月の返済をなくせるのがメリットです。

短期継続融資とは、具体的には「短期の手形貸付」あるいは「当座貸越」による借入をいいます。

手形貸付については、期日に銀行の審査をへて、期日を更新することができれば、実質的に「借りっぱなし」にすることが可能です。当座貸越については、銀行が定めた限度額の範囲内であれば、自由に借りたり返したりができるため、やはり、借りっぱなしにすることができます。

すると、同じ経常運転資金でも、資金繰りが改善することがわかるでしょう。

借入を増やせるのに増やさない

おカネを増やす方法は、利益を増やすだけではありません。銀行からの借入によって増やすこともできます。であれば、借りれるときに借りておくことが大切です。

銀行は、必要なだけのおカネを貸すところであり、「借りる理由(資金使途)」がなければ借りることはできません。この点、せっかく借りる理由があるのに、借りていないケースがあります。

たとえば、法人税の納税や賞与の支払いです。いずれも、銀行から借入をすることが可能です。基本的には、返済期間6か月で毎月分割返済となります。

そんな短期で借りる意味ある?しかも、借入してまで納税したり、賞与を払うのは気が引ける…と、おもわれるかもしれませんが。もちろん、意味はあります。

納税や賞与支払いのおカネを借りることは、税金や賞与を「分割払い」するのといっしょです。一括払いであれば、手元のおカネは一気に減りますが、分割払いであれば、おカネの減りかたはゆるやかになります。

つまり、分割払いによって、預金残高を高い水準にたもてるのです。これにより、資金繰りの目的である「1円でもおカネを増やすこと」につながります。

繰り返しですが、銀行からは「借りる理由(資金使途)」がなければ借りることはできません。自己資金で、納税や賞与支払いをしておきながら、あとになって「やっぱり貸して」は通用しないのです。

1円でもおカネを増やすことが大事なのは、あす、なにが起きるかはわからないからです。おカネが尽きれば、会社はおしまいなのですから、借りる理由があるときに借りることを、忘れないようにしましょう。

利益に対して返済が多すぎる

利益が増えれば、基本的にはおカネも増えます。が、利益が増えた以上に返済が多いと、手元のおカネは減っていくのは、意外と知られていないようです。

知ってはいたとしても放置されていることが多い、ともいえます。では、どうするか?

いうまでもありませんが、返済を減らすことです。前述した「短期継続融資」の利用はその1つになります。ほかにも、「一本化」も1つの方法です。

一本化とは、複数の既存借入を、あらたな借入によって1つにまとめて借り直すことをいいます。このとき、返済期間を長くとることで、毎月の返済額を減らすことが可能です。

利益と返済額の関係性は、「利益>返済額」が望ましい状況であり、それがかなわず、「利益<返済額」となってしまうのであれば、まずは「利益の改善」です。

とはいえ、利益の改善にも限りがありますから、利益の改善だけでは「利益<返済額」のままだというなら、返済額を減らすことを考えましょう。

それをせずに、ただただ預金残高を減らしている会社は少なくありません。返済額を減らすこともまた、「1円でもおカネを増やすこと」につながります。

まとめ

資金繰りの定義とは?資金繰りの目的とは?と、聞かれたら。なんと回答するでしょうか。資金繰りはできているようで、意外とできていないこともあるよね。そんなお話をしてみました。

資金繰り表をつくるのであれば、先々の預金残高が増加するところまでつくりこむのが資金繰りです。資金繰り表をただつくればいい、というのではないことを理解しておきましょう。

資金繰りの目的は1円でもおカネを増やすこと

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