銀行融資において、経営計画書の重要性が高まっています。が、銀行に経営計画書を提示しても興味を持ってもらえない…それは、自社の行動が悪いから。という、お話をしていきます。
経営計画書の重要性が高まっている
銀行から融資を受けている会社の社長が、いま知るべきことの1つに「経営計画書」があります。なぜなら、経営計画書の重要性が以前よりも高まっているからです。
理由は、大きく2つあります。
まず1つめは、金融庁が銀行に対して「事業性評価による融資」を要請していることです。事業性評価による融資とは、「決算書や担保・保証に頼らず、事業の将来性まで評価して融資をしましょう」という考え方をいいます。
このうち「事業の将来性」を評価するのに、経営計画書は欠かすことができません。にもかかわらず、経営計画書がなければ、会社は依然として決算書や担保・保証頼みの融資しか受けられないことになるわけです(あるいは、融資自体が受けられなくなるか…)。
続いて2つめは、世の中の金利が上がっていることです。日銀がマイナス金利を解除し、利上げを実施しました。これから先は、さらに利上げが進むでしょう。すると、融資金利も上がりますし、実際に上がりはじめてもいます。
融資金利が上がると、会社の返済負担は増えることから、返済に窮する会社が増えるはずです。銀行が貸し倒れ(回収不能)を防ぐためには、融資審査を厳しくせざるをえません。そんな厳しい審査を会社が乗り越えるにあたって、経営計画書の提示はプラスの効果があります。
だとしたら、経営計画書はあったほうがいい、ということになるでしょう。
ところが、です。経営計画書はあればいい、というものではありません。経営計画書はつくったのに、経営計画書を銀行に見せたのに、ちっとも興味を持たれていないようだ(見てくれない)…というケースもあります。
それはなぜなのか、端的にいえば、自社の行動が悪いからです。では、行動が悪いとは、具体的にどういうことなのか。自社があてはまるところはないか、このあと確認をしていきましょう。
自社の行動が悪いとは?
現状分析していない
経営計画書のなかには、数値計画が含まれます。その数値計画のなかには、売上の計画も含まれます。では、その売上の計画値に「根拠」がなかったとしたらどうでしょう?
経営計画書を見た銀行が、興味を持たないのは当然です。売上をはじめとした計画値には、根拠がなければいけません。では、その根拠を用意するために必要なものは何なのか?
現状分析です。まずは、いま自社や事業がどのような状態にあるのか。計画づくりは、現状を把握することからはじまります。その結果が、計画書には織り込まれていなければなりません。
たとえば、いわゆるSWTO分析や3C分析などが考えられます。そのうえで、現状の問題点はどこにあるのかを特定し、その解決策を検討し、行動計画と数値計画に反映させていく流れです。
にもかかわらず、ただただ数値計画だけを銀行に提示する会社が、けして少なくないと聞きます(銀行員の方々から)。つまり、現状分析ができていない会社が散見されるのです。
したがって、銀行に自社の経営計画書への興味を持ってほしいなら、まずは現状分析からはじめましょう。
もっとも、銀行のことを考える以前に、現状分析は自社にとっても有意義なスタート地点であるのも間違いありません。現状分析なくして計画なし、これを忘れないようにしましょう。
実績がそっちのけ
銀行に経営計画書を見せるのであれば、あたらしい期がはじまる前がよいでしょう。あわてていまつくったのではなく、期のはじめから計画があったという証明になります。
このとき、今期の決算予想よりも先に、計画書を見せようとするのはいけません。期がはじまる前のタイミングなのですから、決算予想もできていてしかるべきだといえます。
であれば、銀行は「先に、実績を見せてくれ」と考えるものです。実績とはつまり、今期のこれまでの数字であり、それをふまえての決算予想ということになります。
たとえば、3月決算の会社で、いまが3月中旬だとしたら。2月末までの実績(試算表)は、把握できているはずです。あとは、そこに3月の1か月分の予測を付け足せば、決算予想はできます。
ところが、そんな決算予想の話もなく、いきなり計画書を広げて話し出すものだから、銀行は興味を持てなくなるのです。ではなぜ、銀行は「先に、実績を見せてくれ」と考えるのか。
実績と計画とが、スムーズにつながるものであるかを確認したいからです。わかりやすい例を挙げるなら、実績の売上高が年間5,000万円だとします。これに対して、計画の売上高が年間1億円だったらどうでしょう。
おいおい、本当にそんなに売れるのかよ?と、なりますよね。そんなバカな計画があるものか、とおもわれるかもですが。ていどの差こそあれ、意外と「あるある」です。
社長は「夢」を描くものであり、計画が実績と乖離することがあります。夢を描くのはよいにしても、銀行は保守的で堅実なところですから、実現可能性を示すことが大切です。
検証がされていない
経営計画書をつくったきり、机の引き出しの肥やしになっている…という会社があります。つまり、計画の進捗について、検証がなされていない状況です。
これを知った銀行は、以降、その会社の経営計画書に対する興味をなくしてしまうでしょう。いうまでもなく、計画書が形骸化しているからです。
計画書はつくってからが、本当のはじまりです。行動計画をもとに、実際に行動を進める。行動の結果としてあらわれる実績値を、計画値と比較し、計画の進捗度をはかる。
進捗に遅れがある、計画に問題が生じているようであれば、計画の見直しをする。といったことを、継続的におこなっていくことが大切です。
ところが、計画書が引き出しに入れっぱなしとなれば、それもかないません。
というわけで、計画書をつくったのであれば、毎月検証しましょう。毎月の試算表ができあがったタイミングで検証をおこない、その結果を文書にまとめます。
そのうえで、四半期にいちどを目安に、銀行にも報告をするのがおすすめです。すると、銀行には、自社が計画書の検証を怠っていないことが伝わりますし、計画の進捗状況を共有することもできます。
そこまでできている中小企業は、かなりの少数派ですから、銀行からは一目置かれることにもなるでしょう。計画書はつくってからが本当のはじまり、これを忘れてはいけません。
まとめ
銀行融資において、経営計画書の重要性が高まっています。が、銀行に経営計画書を提示しても興味を持ってもらえない…それは、自社の行動が悪いから。という、お話をしました。
行動が悪いとは、具体的にどういうことなのか。自社があてはまるところはないか、本記事で確認をしておきましょう。銀行融資の受けやすさに、影響するところです。
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