金融庁から、銀行との経営者保証解除の実績が公表されています。これを、会社はどう見るか。今後の銀行融資に関わるところであり、その見方を押さえておきましょう。
経営者保証解除の実績を確認せよ
会社の銀行融資について、経営者保証解除の動きが進んでいます。つまり、社長の連帯保証がない融資が増えているということです。
この点、金融庁からは『主要行等及び地域銀行の「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績等について』という資料が公開されていて、銀行ごとの経営者保証解除のようすを知ることができます↓
なお、上記資料に掲載されているのは、都市銀行および地方銀行です。資料のうち、「新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合」という項目に、注目してみましょう。
この割合が高い銀行ほど、積極的に経営者保証を解除しているということです。そのうえで、あらためて「新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合」をながめてみると…
銀行ごとに、だいぶ差があることがわかります。90%台の銀行もあれば、30%台の銀行もあります。ちなみに、それらの平均をとると50%弱となるため、現状、ひとつの目安は50%だといってよいでしょう。
つまり、50%を超える銀行は、経営者保証の解除にどちらかといえば積極的であり、50%を下回る銀行は、どちらかといえば消極的である、という見方です。
社長としては、経営者保証はなければないほうがよいものですから、どうせなら、「新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合」が高い銀行とお付き合いをするのがよいといえます。
でも、同じ銀行でありながら、どうしてこれほどまでの差が生じているのか?
同じ銀行でありながら差が生じる理由
銀行ごとに、経営者保証解除の実績に差が生じる理由はいくつかあります。
まず、全体の傾向として、大きい銀行ほど経営者保証の解除に取り組みやすい。大きい銀行ほど、大きなリスクをとれるチカラがあるからです。経営者保証なしで融資をすることは、銀行にとってリスクの増加にあたることを考えればわかるでしょう。
ちなみに、前述した金融庁の資料には、信用金庫の経営者保証解除については掲載されていませんが、信用金庫は小さい銀行にあたることから、都市銀行や地方銀行に比べると経営者保証の解除には消極的であろうと推測されるところです。
また、リスクに関していえば、業績がよい銀行ほどリスクをとることができます。利益が出ているために、その分、損失を飲み込むことができる、ということです。したがって、業績がよい銀行ほど、経営者保証解除の実績が増える傾向にあります。
銀行の業績については、各銀行が公表している「ディスクロージャー誌」を見れば、だれでもすぐに確認可能です。ネットで「〇〇銀行 ディスクロージャー」などと検索をしてみましょう。
自社の取引銀行どうしで、ディスクロージャー誌の内容を比較することで、銀行ごとの「違い」がわかりやすくなるはずです。そのディスクロージャー誌には、「担保の状況」といった情報も掲載されています。
つまり、預金や有価証券、不動産など、どれくらい担保をとっているのかがわかるのです。すると、「めっちゃ担保とってるじゃん!」という銀行もあって、そのような銀行の経営者保証解除の実績が高いのは当然だといえます。
会社としては、担保をとられることなく、自社の事業(商売)を評価してもらうことで、経営者保証の解除をしてもらいたいものです。ゆえに、経営者保証解除の実績と、担保の状況とはあわせて確認するのがよいでしょう。
これからは銀行選びが大事になる
ここまでの話を聞けば、もうお気づきのこととおもいます。これからは、銀行選びがより大事になる、ということです。
経営者保証解除の実績ひとつとっても、銀行ごとに差が生じていることはお話をしました。「原則、経営者保証はとりません」と表明するほど、経営者保証解除に積極的な銀行もあれば、解除がなかなか進まない、解除ができない銀行もあるのです。
だとすれば、経営者保証解除に積極的な銀行とお付き合いしたい、と考えるのが自然でしょう。ところが、これまでのお付き合いだけで銀行選びをしている会社が少なくありません。
よって、いまお付き合いしている銀行が、自社にとって本当に最適な銀行であるのかは、見直してみることをおすすめします。
これは、経営者保証の解除に限ったことではありません。そもそも、融資に積極的なのかどうか、プロパー融資には積極的なのかどうかなどについても、銀行ごとの差は大きくなりつつあります。
その昔とは、銀行が置かれている環境が変わっているからであり、金融庁も銀行に対して「独自性」を求めていることもあるでしょう。
ですから、各銀行は多かれ少なかれ変化をしています。その変化については、時系列の推移で確認をすることが大切です。たとえば、これまで見てきた経営者保証の解除について。
いま現在の状況だけを見ていたのでは、よくわからないものでもあります。仮に、A銀行の「新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合」が60%だとして、それをどう見るか?
このとき、A銀行の同割合について、時系列の推移で見た場合に「35%→50%→60%」という状況であればどうでしょう?積極性を増している、という見方ができますよね。
なお、「新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合」は、金融庁から定期的に公表されているので、時系列の推移を確認する材料として活用していくとよいでしょう。
まとめ
金融庁から、銀行との経営者保証解除の実績が公表されています。これを、会社はどう見るか。今後の銀行融資に関わるところであり、その見方を押さえておきましょう。