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会社の銀行融資、繰り上げ返済は抜かずの宝刀

会社の銀行融資、繰り上げ返済は抜かずの宝刀

繰り上げ返済をすべきかどうか。というのは、社長の迷いどころのひとつですが。繰り上げ返済は伝家の宝刀。その宝刀は、抜かないからこそ意味がある。そんなお話をしていきます。

目次

実際には、九分九厘

会社の銀行融資について。社長の迷いどころのひとつに、「繰り上げ返済をすべきかどうか」というものがあります。実際に、そのようなご相談もいただくところです。

会社のなかに、少しおカネも貯まってきたし。だったら、利息の支払いを減らすためにも、繰り上げ返済をしたほうがよいのではないか。でも、だいじょうぶかなぁ…?みたいな。

結論、繰り上げ返済はしないほうがいい。というのが、私見です。もちろん、厳密には「ケースバイケース」ではあるものの。実際には、九分九厘の会社で、繰り上げ返済はしないほうがいい。

でもなぜ、そんなことがいえるのか?このあと、お話をしていきましょう。利息の支払いを減らすことばかり、目先のことばかりにとらわれていると、中長期的に損を被りかねません。

銀行がイヤがる繰り上げ返済

そもそも、繰り上げ返済は、銀行から見ればイヤなものです。たとえば、返済期間5年、年利1.5%で融資をしたとします。ところが、2年で繰り上げ返済されたとしたらどうでしょう?

銀行は、年利1.5%の利息を5年間もらえると考えたから貸したのに、2年で返されてしまったら、残り3年分の利息を受け取れなくなってしまいます。だったら、その条件では貸さなかったのに!ともなるでしょう。

また、銀行には、ていどの差こそあれ営業目標(あるいは、それに近いもの)があります。その対象のひとつが「融資残高」です。銀行は、融資残高を増やすことを目標にしています。

たとえば、残高2,000万円の融資を繰り上げ返済されたらどうでしょう?目標達成のアテにしていた銀行ほど困ったことになります。残高が2,000万円減ってしまうため、別に、2,000万円の新規融資先を検討しなければいけないからです。

なので、繰り上げ返済を銀行はイヤがりますし、繰り上げ返済ばかりするような会社は、銀行から嫌われるようにもなります。銀行にしてみれば、「また繰り上げ返済されるかもしれないから、だったら貸さないぞ」となるわけです。

そうなると、会社としても困ってしまうでしょう。いまは、おカネがあるから繰り上げ返済をするにしても、将来にわたっておカネがあるかどうかはわかりません。

事業は山あり谷あり、いつなにが起きるかはわからないのです。いざというときに、過去の繰り上げ返済が原因で、銀行から借入ができない・借入しづらいというのでは、本末転倒だといえます。

伝家の宝刀は抜いてはならない

繰り上げ返済は、銀行から見ればイヤなものだといいました。銀行は、「繰り上げ返済はしないでほしい」と考えているということです。これを、逆手にとりましょう。

つまり、実際に繰り上げ返済するかどうかは別として、会社は銀行に対して「繰り上げ返済しちゃうかもよ」というプレッシャーをかけるのです。具体例で説明します。

A銀行に預金が2,000万円、B銀行に預金が1,500万円あるとして。B銀行からは2,000万円を借りているとします。このとき、A銀行の預金のうち1,000万円をB銀行に移したらどうでしょう?

B銀行の預金2,500万円、借入残高2,000万円です。これは、「繰り上げ返済が可能」な状態であり、この状態であれば、B銀行にプレッシャーをかけられることがわかるでしょう。

繰り返しになりますが、銀行は繰り上げ返済されるのはイヤなのです。だったら、繰り上げ返済ができる状況をつくることで、銀行に対する自社の立場を高めることもできるわけです。

追加のプロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)を相談したり、金利の引き下げや経営者保証の解除といった融資条件の改善を交渉したり。銀行が、繰り上げ返済をイヤがるほど、そういった相談や交渉はとおりやすくなるものです。

結果として、金利が下がるようであれば、「利息の支払いがもったいないから繰り上げ返済する」といった理由もなくなるでしょう。

したがって、繰り上げ返済を伝家の宝刀とするならば、その宝刀は抜かないからこそチカラを発揮します。にもかかわらず、抜いてしまえばどうなるかは、前述したとおりです。

日本政策金融公庫の融資も活用する

関連して、もう少し。日本政策金融公庫の融資を、有効活用しましょう。日本政策金融公庫は公的な金融機関であり、その融資は、中小企業にとって大事な資金調達手段のひとつです。

日本政策金融公庫には、預金機能がありません。よって、日本政策金融公庫から融資を受けたおカネは、民間金融機関のどこかにあずけることになります。

ここまでいえば、もうおわかりのことでしょう。日本政策金融公庫から融資を受けたおカネによって、「預金残高>借入残高」の状態をつくるということです。おカネに色はありませんから、そのおカネの出どころがなんであろうと、「預金残高>借入残高」の状態がモノをいいます。

ちなみに、金利上昇の過程にあるいま、繰り上げ返済は「以前にも増して」避けるべきものです。金利が上がれば、融資審査は厳しくなります。のちに、「あのとき繰り上げ返済しなければよかった…」というのでは後の祭りです。

また、のちに借りることができたとしても、世の中の金利上昇によって、いまよりも融資金利が上がっていることでしょう。だとしたら、いまの金利のまま、繰り上げ返済せずに借りておくほうがお得だともいえます。

繰り上げ返済するかどうかは、自由です。が、長い目で判断するようにしましょう。目先の損得勘定で判断をする社長は少なくありませんし、後悔をする社長も少なくありません。

まとめ

繰り上げ返済をすべきかどうか。というのは、社長の迷いどころのひとつですが、繰り上げ返済は伝家の宝刀。その宝刀は、抜かないからこそ意味がある。そんなお話をしました。

金利上昇の過程にあるいま、以前にも増して、繰り上げ返済のデメリットが大きくなっていることも理解しておきましょう。

会社の銀行融資、繰り上げ返済は抜かずの宝刀

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