会社の銀行融資・銀行対応の支援、という仕事をするなかでいただくのが「借金経営に対する反論コメント」だったりします。そこで、反論への回答をまとめてみることにしました。
そのコメントはじぶんのか
会社の銀行融資・銀行対応の支援、という仕事をするなかで、「借金経営に対する反論コメント」をいただくことがあります。とくに、YouTube動画とか。
なお、ここでいう借金経営とは、無借金経営に対するものであり、「借りれるうちに、借りられるだけ、借りておくのがいいよね」という、資金繰りにおける考え方をいいます。
いっぽうで、世の中的には「借入はないほうがいい・少ないほうがいい」との考え方も多く、そのように考える方々からは、借金経営に対する反論もあるわけです。
もちろん、考え方は人それぞれであり、さいごに決めるのは社長自身であり、その点で借金経営を無理強いするつもりはありません。あくまで、おすすめの考え方として推奨しているだけです。
だって、無借金経営を万能だと誤解していて、後悔する社長がいるのであれば(実際にいます)、少しでもそういった社長を減らしたい!というのが、わたしの思いでもあります。
では、実際にどのような反論コメントがあるのか?おもなものを取り上げつつ、回答してみることにします。なお、以下のコメントは、特定の1人によるコメントを取り上げたものではありません。そのコメントはじぶんのか!?と思われないよう、ご注意願います。
借金経営に対する反論コメント
おカネがなくなる前提なのはおかしい
借金経営を推奨するときには、こんなお話をしています。それは「事業は山あり谷あり。いざというときにおカネがなければ、会社はつぶれやすくなってしまう」と、そんなお話です。
事業を続けていれば、調子が悪いときもあるでしょう。そのときに、預金が1,000万円あるほうが、100万円しかないよりもピンチをしのげる確率が上がるとはおもいませんか?
だったら、借りれるうちに借りられるだけ借りておくのが得策だ、というわけです。ピンチになった会社に喜んでおカネを貸すような銀行もありませんから。ピンチになってからでは遅すぎます。
というと、「おカネがなくなる前提(ピンチになる前提)なのはおかしい」との反論はあるもので。ただ、わたしからすれば「おカネがなくならない前提のほうがおかしい」です。
あなたがもし、うなるほどのおカネを持っているのならいいでしょう。いくらでも無尽蔵におカネはあって、それを事業に注ぎ込めるのならいいでしょう。でも、そんなケースは皆無です。
おカネには限度があります。限られた資源のはずです。だとすれば、可能性の問題として「なくなる」ことはあります。実際になくなって、つぶれている会社は枚挙にいとまがありません。
なのになぜ、「ウチの会社だけはだいじょうぶ」といえるのでしょうか。新型コロナや大震災、風水害など、過去の出来事や、どこかで誰かが被っている現状を教訓にしましょう。
あすは我が身であり、社長は「おカネがなくなる前提」でいるほうが賢明だと考えます。
おカネがあれば借りなくてもいいのでは
借金経営を推奨すると、つまり、「借りれるうちに借りられるだけ借りておきましょう」というと、「おカネがあれば借りなくてもいいのでは」と反論されることがあります。
おカネがじゅうぶんにあるのだから、借りなくてもだいじょうぶだ、と。たしかに、本当にじゅうぶんなおカネがあればそうですね。でも、「じゅうぶん」とは具体的にどれほどなのか?
わたしはときおり、イジワルにも尋ねます。あなたが考える「じゅうぶん」とは、具体的にいくらをいうのですか?と。このときに返ってくる答えは、ほぼほぼ「不十分」です(あるいは、答えに窮してしまうか)。
では、なにをもって不十分なのか。わたしは「年間売上高の半分の預金残高」を、じゅうぶんなおカネとして考えているので、それよりも少ない預金残高であれば不十分だと考えます。
この点、「年間売上高の半分の預金残高」をクリアしている会社は、割合でいえば少数派です。よって、多くの会社では「おカネが不十分」なのであり、「おカネがあれば借りなくてもいいのでは」などといえる状況にはない、というのがわたしの回答になります。
いやいや、年間売上高の半分の預金など多すぎる!との反論もあるでしょう(実際にあります)。ですが、新型コロナや大震災、風水害などでは、売上が半年ていど(場合によってはそれよりも長く)のあいだ、ゼロになってしまう例もありました。
これをどう捉えるかは、個々人の判断にゆだねられますが。わたしは、「最低でも」年間売上高の半分の預金残高になるまでは、借りられるだけ借りておくことを推奨しています。
利息を払ってまで借りるメリットある?
借金経営に対する反論として、とても多いのがコレです。利息がもったいない。気持ちはわかります。ですが、前述したとおりで、おカネが不十分なのであれば、借りてでも(利息を払ってでも)おカネを持つことをおすすめするばかりです。
また、銀行からの借入が必要であるうちは(つまり、年間売上高の半分の預金残高を自力で維持できないうちは)、銀行との関係性を維持するためにも、借入を推奨します。
にもかかわらず、利息の支払いを嫌って借入を控えるとどうなるか?借入がゼロになれば、銀行との接点がなくなり、次に借りようとするときには苦労することになるでしょう。
銀行は、ふだんから接点(借入があって、返済が継続している)があるから、次の借入時にもスムーズに対応できるものです。接点がなければ、銀行からは自社の存在も薄れてしまいます。
借入がゼロにはならずとも、借入を減らそうとして利息の支払いも減れば、銀行から見たら「良いお客さま」ではなくなるのも問題です。銀行にとって、たくさん借入をして、たくさん利息を払ってくれる会社が「良いお客さま」であるのは、いうまでもありません。
良いお客さまであれば、次の借入もスムーズですし、いざというときにも支援をしてもらいやすくなります。そう考えると、利息は「保険料」のようなものであり、必要なコストです。
これは、金利が上がっても変わりません。今後しばらくは、金利の上昇が予想されます。すると、銀行の融資審査は厳しくなりますから、なおのこと「良いお客さま」であるほうがよいでしょう。
利息を払わないデメリットにも、目を向けることが大切です。
まとめ
会社の銀行融資・銀行対応の支援、という仕事をするなかでいただくのが「借金経営に対する反論コメント」だったりします。そこで、反論への回答としてお話をしていみました。
借金経営を無理強いするつもりはありませんが、無借金経営を万能だと誤解して、後悔する社長が少しでも減るようにということで、本記事がお役に立つようならば幸いです。