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無借金経営=借金できない会社

無借金経営=借金できない会社

無借金経営は素晴らしい!という見方もありますが。言葉尻だけにとらわれて、本質を見逃していると、かえって資金繰りが悪くなることはあるものです。というわけで、気をつけましょう。

目次

無借金経営の言葉尻だけ

会社の経営について、「無借金経営」という言葉があります。文字どおり、借金が無い経営をいうわけですが、ここでいいう借金とはおもに銀行借入を指すものです。

つまり、銀行借入が無い経営が無借金経営となります。これを聞くと、銀行借入がない・借金が無いとは、素晴らしい経営じゃないか!無借金経営の会社は素晴らしい!という反応もあるでしょう。

ところが、称賛するにはまだ早い。そんなお話をしていきます。といわれて、このあとのお話が想像できましたでしょうか。できないのであればぜひ、このあとのお話にもお付き合いいただければとおもいます。

無借金経営の言葉尻だけを見て、本質を見逃していると、自社の資金繰りも悪くなるばかりです。

無借金経営=借金できない会社

冒頭、無借金経営とは、借金がない経営だといいました。この点、対極的な2つの会社が想定されます。ひとつは、借入はできるけどしない会社。もうひとつは、借入したくてもできない会社。

どちらの会社も、表面的には無借金経営です。が、本質的にはまるで違うことは、ここまでいえばわかるでしょう。問題は後者、借入したくてもできない会社です。

そもそも銀行は、危険な会社に融資はしません。危険な会社とは、端的にいえば、利益がない会社・おカネがない会社です。そういった会社に融資をすれば、返済してもらえない可能性が高いので、銀行は融資を躊躇します。

結果として、会社は銀行借入ができず、ますます資金繰りは悪くなるのが問題です。この場合、見た目は無借金経営だとしても、「素晴らしい!」ということにはならないでしょう。

むしろ、ヤバい状態だといえます。だとすれば、なんでもっと早いうちに(利益が出ているうち・おカネがあるうちに)銀行借入をしておかなかったのか?というハナシです。

借金はできるけどしない会社もヤバい

さきほど、無借金経営の会社について、借入したくてもできない会社とは別に、借入はできるけどしない会社も挙げました。では、借入はできるけどしない会社ならよいのか?

といえば、実はそうでもありません。なぜなら、借入をすれば、もっと資金繰りはよくなるからです。仮にいま、5,000万円を銀行から借りるチカラがあるのなら、それを借りることで、5,000万円のおカネが増えます。

よって、借入できるのに借りなければ、5,000万円分だけ資金繰りは悪くなっているといえるのです。と聞いて、「いやいや、おカネには困っていないし」といわれるかもしれませんが。

それは「いま」に限ったことですよね?将来にわたって、おカネの心配はまったくないといえますか。Yesで答えられる会社は、ほぼほぼないものと想像します。

なぜなら、将来のことなど誰にもわからないし、そもそもじゅうぶんなだけのおカネももっていないからです。ちなみに、じゅうぶんなだけのおカネとは、売上半年分の預金をいいます。

それくらいの預金があってはじめて、有事にも落ち着いて対応できるというものであり、それくらいの預金がないのであれば、借りてでも預金を持っておくのが財務戦略というものです。

もっとヤバい会社が実はある

借金ができるけどしない会社は、前述したとおり、将来に不安を残す点でヤバいです。いっぽうで、もっとヤバい会社があります。それは、借金ができるつもりでいる会社です。

つまり、「ウチの会社は、その気になればいつだって借入できるんだ」と社長が勘違いをしているような会社であり、実際には借入できないのであれば大問題だといえます。

わかりやすく極端な例を挙げましょう。利益もしっかり出していて、決算書はピカピカの優等生!に見える会社があったとします。社長は「いつでも借りれる」と考えて、無借金経営です。

では、このような会社に対して、銀行は融資をしたいと考えるのか?多くのケースでは、警戒されます。融資を受けたくても受けられない事情があるのではないか?と、銀行は考えるからです。

決算書がピカピカならば、本来、融資は受けやすいはず。なのに無借金なのは、たとえば粉飾決算をしているとか、あるいは、数字にはあらわれないマズい事情があるとか…

ほかの銀行はそれを知っていて融資をしないのでは?だったら、ウチも融資をするのはやめておこう。銀行は、そんなふうに考えるものです(実際に、銀行員の方からもそう聞きます)。

本当の問題は、そのような会社の業績が悪化して、借入が必要になったときです。いままで借入をした実績も、返済の実績もないことから、どの銀行も融資をしたいとは考えないでしょう。

無借金経営の会社は、銀行からの「信用」が無い会社でもあるのです。逆に、借金(借入の実績・返済の実績)は、銀行に対する「信用」でもあります。

まず目指すべきは実質無借金

以上をふまえて、まず目指すべきは実質無借金です。実質無借金とは、「預金残高>銀行借入の残高」の状態をいいます。これであれば、いつでも完済できますから、実質的に無借金です。

これに対して、まったく銀行借入がない会社、これを完全無借金と呼ぶのであれば、完全無借金に危険があることは前述をしたとおりです。

実質無借金には、銀行からの信用がありますが、完全無借金に銀行からの信用はありません。さらに、実質無借金の場合に比べて、完全無借金は借入がない分だけ預金も少なくなります。

会社はおカネがなくなればおしまいなのですから、事業を続ける限りは、預金の多さを優先するのがよいでしょう。だとすれば、無借金経営よりも借金経営であり、完全無借金よりも実質無借金です。

このあたり、誤解(=無借金経営がいちばんよい)がないように気をつけましょう。

無借金経営=借金できない会社

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