だ・か・ら~、そうじゃなくて!
と、税理士が思わずイライラしてしまうフレーズがあります。あなたの前にいる税理士の我慢強さ、試してみます?
イライラにはワケがある
これを聞くと「なんだかな~」となるフレーズ。気持ちの出どころは、税理士として相手の不利益を思えばこそ、なんですけれど。
だから相手がしつこい場合、ちょっとイライラが表情や言葉に出てしまう。というのは、わたしだけかもしれませんが。
イライラするにはワケがある。これでは、「相手が損をするなぁ、損をさせてしまうなぁ」と感じる3つのフレーズについてお話しします。
- ほかの人はみんなやっている
- 税金で払うくらいなら
- 数字なんて、数字なんか
『ほかの人もみんなやっている』
赤信号、みんなで渡れば・・・的なことなのでしょうか。経費か否かをめぐって話をする際に、よく聞くフレーズ。
これくらいのこと、ほかの人もみんなやっている。
な、な、なんだとー!とは言いませんが。税法という法律を扱う者としては、「ほかの人もみんなやっている」ことは理由にならないわけで。
もちろん、「これくらいのこと」の程度はあります。税理士によって「これくらい」の範囲に幅もあるでしょう。それでも「みんなやっている」では理由にならんのです、ということ。ホントそれだけ。
税法に裏付けされた理由がなければお客さまは守れない、というところをご理解いただきたく候。杓子定規一直線な返しですが、それが現実です。
ということも踏まえて。赤信号の心理・心情は理解します。でもね。「ほんとうに」みんなやってるの? ということについては疑義がある。意外とやってないかもよ、というハナシです。
- 「みんな」なんてやっていない → 聞いたその人だけがやっているケース
- やっているつもりで実はやっていない → 顧問税理士が実は適正に処理しているケース
- やっているけどOKなわけではない → 税務調査がない、調査でたまたま見過ごされている
とか。みんなやっているようで、やってない。そんなオチには気を付けましょう。
『税金で払うくらいなら』
想定以上の納税額を前にした際、よく聞くフレーズ。
税金で払うくらいなら、〇〇に使おう。
それ自体は悪くありませんし、気持ちは理解できるところなのですが。○○の内容や、金額によっては・・・イライラする! みたいな。
お話しせずにはいられないのが、「使った金額以上に、税金を減らすことはできない」ということ。
税率30%だとして。100,000円の経費を使えば、税金は30,000円減りますが。経費を使わなかった場合にくらべれば、70,000円のお金がなくなることになります。利益も減るし、お金もなくなる。
極端には、利益ゼロを目指して経費をつかう。こういう会社になにが起きるか?いざお金に困っても銀行からお金を借りられません。利益がなければ返済する原資もない、と見られるからです。
はっきり言いますが。決算間際で場当たり的にお金をつかう会社に限って、違う場面では「お金がない」という事態に陥りがちです。
顧問税理士としては、そのときに泣きつかれても困るわけです。なにもイジワルで「ムダづかいはやめましょう」なんて言いません。
「利益を出して税金を払うことで会社は成長する」という金言をどうかお忘れなく。
そしてもうひとつ。「どうせ税金なんて、何に使われているかわからないんだから」というフレーズ。そうですね、そうかもしれません。
でも、ムダ使いであるならば。あなたも社員からそう言われてしまうかもしれない。「がんばって稼いだ利益が何に使われているかわからないんだから」って。
日々たいへんな思いで経営をされている社長・個人事業者が、そんなことを言われるのではかないません。だから、わたしはイライラしてしまうのです。
『数字なんて、数字なんか』
税理士という仕事をしていると、ときおり耳にするフレーズ。
数字なんて意味がない。数字なんか役に立たない。
これは正直。そうですかそうですか、しかたない。とあきらめることがあります。「本気で数字に興味がない」という場合には、やりあってもお互いに不幸なので。
それはそれとして。このフレーズに対しては、2つの反論があります。
まずは、数字が唯一無二の「モノサシ」であるということ。たとえば、「儲かった」というハナシ。どれだけ儲かったのかとたずねて「けっこう儲かった」と言われても。
「○○円儲かった」と言えなければ、自分でも理解できず、他人にも伝えることはできません。商売をしていて、数字というモノサシを使わないことはないでしょう。
にもかかわらず。試算表や決算書を前にしたときだけ、「数字なんて、数字なんか」と言われると・・・お話しする側の税理士の「力量」ということもありますが。いずれにせよ、数字は常にたいせつです。
2つめの反論は、「数字なんて、数字なんか」と数字の価値を落としているのは自分自身だということ。
たとえば、自社の毎月の試算表はいつできあがりますか?もしも翌月末だったりすれば、それは「数字なんて、数字なんか」と言いたくもなるでしょう。いつのハナシしてんだよ、ということです。
そういった、数字の「古い・新しい」ということもありますが。そもそも、数字は過去だけを扱うものではありません。未来を数字で描くことで、期待を高め、不安を鎮めることもできます。
「数字なんて、数字なんか」と口にするとき。数字の使い方はどうだったかな、と振り返ってみる必要があります。
まとめ
税理士をイライラさせる3つのフレーズをお話ししてきました。
フレーズを発する心理・心情はわかります。ですが、やっぱり「不利益」はさけて欲しいということで。
フレーズを口にしたとき、税理士がイライラしてるなと感じたら。そういえば、ときょうのお話を思い出してみましょう。
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きょうの執筆後記
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フレーズを発する側の問題に触れつつも、それは同時にフレーズを聞く側の税理士の問題でもあります。そう言わせてしまっているのは税理士かもしれませんから。
そうか考えるとイライラしてばかりもいられません。ひとは鏡です。